『フキの恩返し』②
「じゃ、じゃあ、フキは、何でわざわざ私を呼び出したわけ?」
興味が抜け、困惑だけの表情と口調で……かつての相棒、錦木千束が言った。
「そりゃ……その……」
フキが言い淀んでいると、千束は赤いファースト・リコリスの制服のスカートを揺らして足を組み、のけぞるようにベンチの背もたれに広く両腕を乗せる。
そしてその動きの中でごく自然に、きょろりと辺りを軽く見渡した。
「っつぅかフキさんよ。おたくが単独で外に出てるの、珍しくない?」
目の良い千束の事だ、今の一瞬で周囲に他のリコリスがいないのを見て取ったのだろう。
「今日のワタシは検査のために休暇中だ。午前中で終わっちまったけど」