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『千束の銃』②


 喫茶リコリコご自慢の地下射撃場はブース――間仕切りで区切られた射撃スペースで、弾薬を置いたりするベンチと呼ばれる台もある――が三つあり、三人まで同時に撃てる仕様になっている。

 それ以外にもブースの後方には、メンテなどの作業用のためのテーブルや椅子などがあった。
 そこに千束がパンコントマテの皿を置くと、早速クルミが一つを手に取って、齧り付く。

 たきなもまずは射撃より先にお腹に何か入れたい気分だったので、三つのマグカップにコーヒーを注ぐと、パンコントマテを一つ頬張る。

 下唇に触れるバケットはカリカリで、さもするとヤスリのようですらある。
 だが、その上面、そして内部はこすりつけられたトマトとオリーブオイルでしっとり……をやや上回るぺっちょり感だ。

 これが、この料理の特徴の一つだろう。
 元々は古くなったバケットをおいしく食べるため……つまり、硬くなったそれを焼くとさらに硬くなるが、ある意味それを逆手に取った料理なのだ。

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