『One’s duties』③
フキの予想通り、司令部からは先ほどの狙撃者の抹消が命じられた。
リコリスの仕事を見られ、かつ、銃器を持ち、さらに人に向かって発砲している……どう甘く見積もってもリコリスが排除すべき危険人物と言わざるを得なかった。
しかし、完全に後手を踏んでいる。普通なら上空のドローンでの監視及び追跡だけ行い、現場の人間は一度撤退して体勢を立て直すべきではあった。
だが、ファースト・リコリスのフキがいる以上は、その必要はないと司令部は判断したようだが……実際のところは分からない。
恐らくそれ以上に、狙撃者の存在が不明瞭過ぎるが故だと、フキには分かった。あまりにも情報がなく、万が一、今ここで取り逃がせば追跡できない可能性が高い。
都市部ならありとあらゆる手段でもって追跡できるが、都内であっても片田舎ともなればその監視網はどうしても穴が多くなる。
司令部としてはわずかでも逃がす危険を冒したくないのだ。
『この状況にフキ、お前がいることは幸いだった』
「……どーも」