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映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』からの選択

映画が好きで、感想を語る会などをひらいたりもしている。最近気に入っているのは、SNSで「この日のこの回に観賞予定。ご都合合う人は声かけてください」という投稿をすると、運が良ければ誰かにロビーで会える。

映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』も、そのようにして、ロビーで会えた友人たちと鑑賞後に感想トークをし、その後SNSでも続きを語り合っていた。そのメンバーにイラストレーターのナカオクミさんがいらしたことから、「ドローイングして語るのも面白いかも?」という声があがった。

ナカオクミさん邸では、以前に映画『キャロル』を鑑賞して語る会がひらかれたことがあり、そのときに書いた文章がある。今読むと、映画の感想も、会の感想もごちゃっと記されている、ぼんやりした文だが、残っていてよかった。2018年の8月だった。5年前。

ナカオクミさんがその声を受けて、実際にひらいてくれた会がまた素敵だった。

リビングの入り口に貼られた案内。
席順はくじ引きで。それぞれ登場人物の名前が記されている
私はマリーチェ席。ウェルカムドリンクのスパークリングワイン、奥にみえるパンは、消しゴム用
私が真っ先に描いたのは、南十字星に向かって拳をかざすシーン
「蜂起」をイメージさせる図だが、物騒ではない。新たな知恵がシェアされて、次々にこぶしがあがる。暴力のためのこぶしではなく、現在地を知り歩き出す女たちの、心強さや希望が増していく大好きなシーンだ。
次に描いたのは、納屋に向かって大きなカマを振り下ろし、男に掴みかかるシーン。画力が追い付いていなくて構造がおかしいが、カマの刃の黒々とした塗り込みに力がこもっている。
最後制限時間ギリギリにとりかかって未完成の、主役・オーナのえくぼ。

オーナ役のルーニー・マーラは、暗く抑えめな色調の本作の中で、ひとり真珠のような清楚で透明な輝きを放っていた。
この女優さん、なんと5年前にクミさんと観た『キャロル』の恋するテレーズ役を演じていたと、後で気づいてびっくり。さらに、全然別の『ドラゴン・タトゥーの女』では、顔色悪く、ガリガリに痩せてピアスだらけの荒んだイメージの天才ハッカー役を演じていた、というのも昨日知って、驚愕している。まったく違う命を生き生きと作品ごとに演じている・・・

制作風景(クミさん撮影)

それぞれが、この映画の印象深いシーンを描いて、並べたのがこちら。壮観。順番に、何故このシーンを描いたのか、語りを聴く。他者の視点で映画をとらえ直す時間。

感受性の多様性もあるし、これだけ切り出される名シーンをたくさん散りばめられた映画であった

時間があれば、少年たちを正面からとらえた顔、顔、顔のシーンも描きたかった。笑いも語りもせず、まっすぐにカメラを見つめる少年たちの未来はどうなる。

作品にちなんでボリビアのワインとおしゃれなおつまみを片手に、それぞれの語りを聴く非日常
場所を移して二次会。これから観たい映画の話題も満載

映画では、女たちが「赦すか、残って戦うか、去るか」の3つから選択する。
赦す=許可 ではない。
去る=逃げる ではない。
作品を観終えて、私たちは何を選択するのか。
語りあい、描き、そして現実をどっちへ踏み出すのか。まずは夜空に拳をかざしてみる。(南十字星は見えないけど)
少なくとも、私は語りの場・聴き合いの場をつくり続けよう。選択する力を磨くために。

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