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広州のフルーツといえば”ライチ”

2021年6月は、広州で新型コロナウイルスの感染が広がり、街中が厳戒態勢の中で過ぎていきました。そんな最中、広州を代表するフルーツが最盛期を迎えました。そう「ライチ(茘枝)」です。

今回は、福岡広州ライチ倶楽部の名前の由来にもなっている「ライチ」について紹介します。

1.ライチとは…

ライチは、中国の華南地方を原産地とするフルーツです。夏になると鮮やかな赤い実をつけます。果実は、硬いうろこ状の殻で包まれており、割ると白くて半透明の果肉が現れます。その果肉はとてもジューシー。独特の香りと強い甘味が口いっぱいに広がります。毎年、ライチの季節を首を長くして待ち望んでいる人がいる。ライチは、そんな広州を代表するフルーツです。

ライチは、大体5月〜7月くらいに収穫時期を迎え店頭に並びます。この頃には、街中にライチが溢れます。しかし、ライチには保存期間が短いという欠点があります。「一日で色が変わり、二日で香りが変わり、三日で味が変わる」と言われ、収穫をすると、赤い実はすぐに茶色に変色し、常温だと3〜4日くらいしか持ちません。そこで、冷蔵や冷凍の方法で保存することになります。最近は、日本国内でも栽培が進んできたので生のライチが出回るようになりましたが、それまでは、このような事情もあって日本で生の赤いライチを目にする機会は多くありませんでした。

また、ライチといえば、楊貴妃が愛した果物としても有名です。楊貴妃を喜ばせるため玄宗皇帝はライチの産地から唐の都・長安までライチを運ばせていました。唐の詩人・杜牧は「一騎紅塵妃子笑、無人知是茘枝来(一騎の馬が土埃の中をやってきて楊貴妃が笑う、誰も知らないだろうがライチが届いたのだ)」という詩を残しています。

…と、サラッと書きましたが、上述したようにライチは保存のきかない果物です。現在でも広州から西安までは、高速道路で1,600kmくらいの距離があります。ひたすら車で走り続けても19時間くらいを要する距離です。当時、この距離をライチが悪くなる前にどう運んだのか?という謎は、未だにはっきり解明された訳ではありません。

最近の研究では、広東ではなく四川の産地から運んでいたのではないかと言われています。ただ、それでも、四川から長安まで新鮮なうちにライチを運ぶのは命がけです。楊貴妃のエピソードは、ライチの美味しさ、そしてその希少性が生み出した歴史の一幕なのです。

2.ライチを食べ過ぎると…

そんな希少なライチですが、産地である広州では、毎年この時期になるとそこらじゅうにライチが溢れかえります。今年の最盛期は例年より少し早く、6月中旬に食べ頃を迎えました。事務所ではスタッフが毎日ライチをお裾分けして周り、友人からは発泡スチロールの箱いっぱいに詰められたライチが送られてきました。

ライチは保存が効かない果物。それゆえ、いただいたら新鮮なうちに、早くたくさんのライチを食べたくなります。

ところが、ライチをいただく際には、必ず一言添えられます。

「一個茘枝三把火(一個のライチには三つの火がある)」

ライチは一度にたくさん食べてはダメだよ、ということです。

ライチは「上火(のぼせる)」食べ物と言われています。中医学では、食べ物には身体の熱を上げる物と、熱を下げる物があると言われています。これは「陰と陽」のようにバランスを取りながら身体に摂取する必要があります。このうち、ライチは熱性が強く上火(のぼせる)しやすい食べ物になるため「気をつけてね」ということになるのです。

なお、上火(のぼせる)とどうなるのか?

一般的には、喉が痛くなったり、歯が痛くなったり、できものができたり、口内炎ができたり…という症状が現れると言われます。これを中和するには、身体の熱を下げる物を摂取する必要があります。このうち、ライチを食べる際によく聞くのは「塩水」です。ライチを保存する時も、先に塩水につけてから冷蔵庫に入れるように言われます。面白いですね。

ただ、ライチは、実際に食べ過ぎると体内で過剰にインスリンが分泌され、低血糖症状を引き起こすということも分かっています。子供などが空腹時に大量にライチを食べると、それで気を失って病院に運ばれる「ライチ病」という病気もあるようです。どんなに美味しくても、やはり食べ過ぎには注意のようです。

だから、この時期になると、大量のライチをいただき、美味しい時期にたくさん食べたい、だけど、大量には食べてはいけないので、美味しいうちに周りの人にお裾分けしてまわる…、そんな葛藤を経験することになってしまう訳なのです。

3.ライチ狩りに行く

さて、元々、この福岡広州ライチ倶楽部では、毎年この時期に「ライチ狩りツアー」を企画し、会員の皆様で一緒に福岡から広州を訪れてライチ狩りを行っておりました。しかし、近年はコロナの影響で催行できません。そこで、せめてオンラインでお届けできないかと、毎月実施している「広州まちかどセミナー」において生配信をする予定も組んでいました。しかし、それすらも、広州で発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、実施が叶いませんでした。

そこで、せめて個人的にでもライチ狩りに行こうと、友人に頼みこみ、コロナの感染を避けてライチ狩りに連れて行ってもらいました。訪れた場所は、広州市増城区仙村。その村は「ライチ小鎮」とも呼ばれています。このライチ小鎮では、特産品であるライチを通じて地域おこしを行なっているようで、街中の至る所にライチの看板やライチ関連の施設があります。ここで、友人の知り合いを通じてライチ農園を訪問させてもらい、その場でライチ狩りをさせてもらいました。

ライチの樹は3〜4メートルくらいの高さで、ここではいくつかのライチの品種を栽培しています。実は、同じように見えるライチにもいくつもの種類があり、味や形、そして値段が微妙に異なります。中でも、私たちが案内してもらったのは「仙進奉」と言う種類のライチでした。この「仙進奉」という品種は、他の品種より一回り大きく、その割に中に入っている種が小さいという特徴があります。味も爽やかな甘さがある飽きがきません。ただ、その分値段も高級で、市場価格でも500gで700円前後。ライチ農家さんで直接購入しても500gで520円という高級ライチでした。

いいなー、と思うでしょ?

ライチ園で夢中になってライチを取って食べていると、やはり後ろから農家の方の「食べ過ぎに注意しなよー!」という声が飛びます。結局、いつもライチは程々にしか食べられないものなのです。

食べられる時期は短いくせに、一度にたくさん食べてはいけない…。その制約から来る不完全燃焼な具合が、楊貴妃すら魅了するライチの魅力の秘密ではないかと勘繰らずにはいられません。

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コロナが終息し、自由に観光ができるようにになったら、是非、6月中旬から7月上旬、ライチが一番美味しい時期に広州にお越しください!


《 ライチ局長の勝手にチャイナ!vol.15 》

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