ポストクッキー時代におけるLINE広告のターゲティングの在り方
皆さんこんにちは。株式会社オプトの野嶋友博と申します。
目まぐるしく変わるインターネット広告業界において、昨今賑わせるトピックスと言えば、「自動入札の発達と運用のAI化」、「個人情報保護の潮流に伴うCookieの終焉」の2つが大きいと思います。
前者はLINEを問わず、各プラットフォームが機能アップデートを繰り返し、広告運用者として使いやすいものが非常に増えてきている印象です。
後者おいては、各メディア、広告主、代理店といったあらゆる業界のプレイヤーが、これに対するスタンスや、対応の在り方について答えを探しているフェーズかと捉えております。
このプライバシー保護やCookieレスについては、以前LINE Frontlinerの倉橋さんや遠藤さんも記事にされていましたね。
そこで今回はポストCookie時代において、LINE広告のターゲティング機能をどのように活用すべきか、という点についておまとめいたします。
1. 広告運用者の役割はAIに商品の特性を指導する教師である
Cookieレス環境下でのテーマ設定としつつ、いきなり自動入札の話をしてしまうようで恐縮なのですが、改めてこれからの時代における広告運用者の役割について整理しておきたいと思います。
急速に進む運用型広告の自動化機能の進化よって、これまでの広告運用者(代理店や広告主の広告運用担当)の役割も変わりつつあります。2021年2月現在、広告運用の全てを自動化に任せることは自動化機能の精度的にまだ難しいものの、今後さらに機能が進化していくことで、実現されていく未来はそう遠くないと思っています。
その未来が訪れた時、我々広告運用者の役割はどのように変わっていくでしょうか?
多種多様な考え方があると思いますが、私は「AIに商品の特性を教える教師」になっていくべきだと考えています。
そもそも各プラットフォームの自動入札の機能は、その精度を担保するために学習期間と教師データを必要とします。一定期間におけるCV数から、今後広告を配信していくターゲットを自動的に見極めていくという考え方ですね。
これについては以前私が寄稿した下記記事においても同様の内容に触れています。
つまりAIはゼロから精度の高い配信をすることはできず、誰に何を配信すべきか?を教えることはどこまでいっても人間の役割だ、ということですね。
この前提に立った時、本稿のテーマでもある「Cookieの終焉」を考えると、上記の教師としての役割はより重要視されていくことになると私は考えています。
なぜならAIが自動で取得できるデータが不足するため、「誰に何を配信すべきか?」をAIが自動で判別できるようにするべく、精度の高いデータを随時補完していく役目が必要になるからです。
小学生が急に教科書を半分取り上げられた、といったような状態でしょうか。
(わかりづらいですかね…すみません笑)
まとめるとCookieレス時代においては自動入札機能を精度高く担保するために、必要なデータを定義し、それをメディアと連携していくことが広告運用者に求められる役割、というお話です。
2. Cookieレス環境だからこそ活用すべき3つのターゲティング手法
さて、長くなりましたがここからが本題となります。
上記環境下において、LINE広告ではどのようにデータを補完し、自動入札のターゲティング精度を高めていけるか?という点について、下記3つの手法を紹介していきます。
① ハッシュ化電話番号・ハッシュ化メールアドレスを活用したターゲティング
広告主側で保持している顧客データのうち、電話番号やメールアドレスをLINE広告の管理画面に取り込むことで、商品への購買意欲が強いと想定されるユーザーへの配信やそれに似たユーザーへの類似拡張配信が可能となります。
これはこれまでのCookieを用いたタグベースでのデータとは異なり、実際に商品を購買したなど、商品への好意度でセグメントしてリストアップができるため、タグベースでの配信と比較してリターゲティング配信や類似拡張配信の広告効果が高いという傾向があります。
またリストアップ時においては、電話番号やメールアドレスをハッシュ化(※)した状態でのアップロード対応となるため、メディア側に顧客データが残らないという点も、プライバシー保護の観点で重要です。
※ハッシュ化とは、元のデータから一定の計算手順に従ってハッシュ値と呼ばれる規則性のない固定長の値を求め、その値によって元のデータを置き換えること。パスワードの保管などでよく用いられる手法である。
② 手動詳細マッチングを活用したターゲティング
2つ目はLINE Tag を通してハッシュ化された1st party data (電話番号/メールアドレス)を LINEのサーバーに送ってもらうことで、コンバージョン計測と、オーディエンス蓄積を増加させる手動詳細マッチングです。
出典:LINE Tag Advanced Matching(手動詳細マッチング)
for LINE公式アカウント 説明資料
① においても整理している精度の高い顧客データを、同様にハッシュ化された状態でLINE TagからLINEのサーバーに送ることで、通常のタグ配信と比較して計測可能件数(≒計測精度)とオーディエンス蓄積の増加が期待できます。
①のハッシュ化電話番号・ハッシュ化メールアドレスとは異なり、LINE Tagの書き換え(追加記述)さえ行ってしまえば、媒体管理画面に都度データをアップロードする必要がなく、またターゲティングだけではなくCVの計測精度向上にも役立つ点が利点です。
下記のように様々な業種において広告効果の改善事例が出始めております。
出典:LINE Tag Advanced Matching(手動詳細マッチング)
for LINE公式アカウント 説明資料
③ LINE他サービスのデータを活用したクロスターゲティング
これまで①、②で整理してきたものはあくまで1st party data(広告主が保持する顧客データ)を活用したものです。ハッシュ化を中心として個人情報保護に対する配慮はなされていますが、それでも尚顧客情報の利活用に慎重にならざるを得ない広告主さんがいらっしゃることも事実です。
そういったケースにおいても取り入れやすいのが3つ目のLINE他サービスのデータを活用したクロスターゲティングです。
クロスターゲティングはLINE公式アカウントの友だちの行動やLINEポイントAD経由でのアプリインストールユーザーなどのLINE広告以外のサービスの利用ユーザーデータを広告配信へ活用できる機能です。
※お使いのバージョンによって画面のデザインが異なる場合がございます。
(出典:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2019/3016)
このデータはユーザーが同意した上で登録した情報としてLINEが保持しているものであるため、Cookieに依存せず、ユーザー属性や興味関心を識別することができます。
また①や②のように広告主が保持する顧客データの受け渡しが発生しないため、取り入れやすいという利点もありますね。
導入しパフォーマンスを高めるためにはLINE公式アカウントに十分な友だち数が存在しているか、またメッセージ配信を中心としたコミュニケーションをLINE公式アカウント内できちんと図れているか、がポイントとなります。
LINE広告のみの出稿でLINE公式アカウントは活用できていないという広告主さんは、Cookieレス時代に向けた導入を検討していくことが今後より強く求められていくと思います。
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いかがでしたでしょうか?
各プラットフォームがCookieレス時代に対応した新たな広告配信の在り方を考えている中ですが、LINEが特に強いのはやはりLINE公式アカウントを活用し、友だち登録を促すことでユーザーとの接点を持ち続けることができる点だと思います。
LINE社としても力をより一層いれていくLINEの各サービス横断でのクロスプラットフォーム構想をきちんと理解し、時代の変化に対応していくための適切な活用をしていきたいですね。
今回は以上です。ありがとうございました。