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手帳類図書室

ずっと気になっていた手帳類図書室に行ってきた。
4年前に一度訪れたが、要予約制らしく入れずそのままコロナ期に入ってしまったから、今回行くことができて良かった。
一人一人の人生の一部が"手帳"という形で所蔵されており、手帳の持ち主の人生を実際手にとって読むことによって、その人の人生を追体験したような気分になった。

もくじ
(1)寄贈者について
(2)所感


(1)寄贈者について

●男性大学生。記念すべき1人目の寄贈者。
●女性詩人
●サラリーマンの仕事記録
●舞台女優。日記から特定できるくらい割と有名な方らしい。
●彫刻家
●プログラマ
●1995年の日記、ある息子の父母の遺品(筆で「すぐ寝る」とだけ書かれてある。)
●難病と闘う20代女性
●容姿は日本人だがドイツで生まれ育った帰国子女、日本語とドイツ語と英語と韓国語が使える
●初めは授業ノートだったが途中から哲学的思考を書くノートに。10代女性。
●小学校の連絡ノート
●筆圧が弱すぎて解読不可な日記帳
●JKオタク女子の交換日記(おそらく00年代?)
●展示チラシでびっしり60代デザイナー男性。60代のインプット量じゃない。
●江戸川乱歩や夢野久作やドグラマグラを読む小学生1993年〜1998年の日記(今日、占いに「日記を附けると◎」とあったのでいい機会だと思って附けることにした。)(占いで始めて5年も続くのか)
●イタリア人20代女性留学生の漢字練習帳(「誘う:デトとか...😳」みたいなことが書かれてあった。あとは呼吸、君主、許す、発掘、など)
●スケジュール帳にダイエット記録
●製造業ミニマリストの日記。半額シールや肉の賞味期限が書かれた丸いシールが貼られてた。「ハヤシライスシャバイ」が一番印象的だった。
●女子学生の先生への片想い恋愛日記
●ギャル字なのにおっとりした性格の女性
●デリヘル嬢の日記。勤務状況、客の特徴、プレイ内容、所感などが綴られてある。(42歳さまぁず三村と小倉さん合わせた感じ,結婚してる/おじいちゃんさくらんぼくれた/25歳くらい,甘えん坊,キスマつけられた/坊主,30歳くらい,下着褒められた,B型,攻めすぎ,ク○ニ長い,ちょいデブ/¥118,000)
●発達障害35歳女性の私的記録
●50代男性 仕事/天気/ゴルフ/体調/競馬/野球
●1965-68までの日記、当時4-7才、幼稚園から小学生までの文集など。(昭和40年代の日記は珍しいらしい)
●50代ギャンブラー男性の10年日記。「パチンコで2万負けた、またパチンコで負けてしまった」など、これでもかというほどの懺悔が綴られていた。「父のような生き方をした人がいたことを知って欲しい」と息子さんが持ってきたものらしい。このギャンブラーは既に亡くなっており遺品とのこと。
●20-30代女性看護師の性の営みの頻度記録。「よるえっち、えっちなし」など性的記述を淡々と認識し食事や仕事と同じライフログとして捉えていた。
●30代男性「俺の日記をどうぞよろしく」と持ってきた。特徴的な字体と文体、ストリーミング的に延々と記録された日常。しばしば小銭を拾っておられる。書き終えるごとに一冊ずつ送ってくれる、またもや小銭を拾っている。
●演劇に興味のあるサッカー部女子
●「1日のBestな生き方、私の心の満たし方、家計簿、リフォームのこと、のーみそせいり、子供への讃歌、自分会議、自分しらべ、ブース出店計画、かわいい魔女の性質、依存に関する宣言、パートナーシップについて...」と書かれてある「脳ト」感情や思考の激しく生々しい出力。ページから受け取れるエネルギー量が多い。(✅164-A)
●めっちゃ誕生日祝う女性
●届いたメールの時間と内容だけが書かれた手帳。書き手側の返信は含まれていない。(書きたくなる気持ちはわかる)
●引きこもり無職である書き手の葛藤、弱さ、内面の視覚表現(脳味噌🧠のシワがびっしり描かれてあった)(166-A✅)
●小学生の絵日記を装った男子大学生の絵日記(ウサッサvsピカチュー星人軍団[6ぴき])(171-A✅)
●1992-1995、10代男子、「な、なんと俺に彼女ができたのだ!」
●50代男性、企業上層部のエリート日記
●エステサロン→マッサージ店→ボーカルダンスレッスンオーディションなど経験、金銭感覚の変化を辿れる日記。その後は風俗嬢になったらしい。
●アーティスト画家。メディア美学、研究者、実践家、コンクリートポエトリー、メディアアート
●ある夫婦の手帳。すり合わせながら読む実験的なもの。
●20代女性、12冊のノート。J-POP歌詞ノート、専門学生の授業ノート、おしゃれノート、プリクラ帳(めっちゃ読みたい)
●んー、んと、えっと、フィラー(つなぎ語)多用、短い文を並べる、言葉で説明出来ないキャラクター性が現れている。
●10代男性、B'z、WANDSの心酔ぶり
●20代介護職男性、54冊のノート、買ったゲームやCDの帯が綴られた時期もあれば身体を鍛えていることのみ記された時期もあり、最後には夜のお店のメッセージカードのみに...。基本的に怒りがベースで投げやり、だけど決してネガティブじゃない。書き続けてきたからこその到達、正直さを持続させる姿勢方法として参考にすると良い。一人の人間が文体や貼るモノまで変化させながら書き続けた記録は、自分を取り巻くものと折り合いをつけ続けた自己格闘の記録でもある。(女性からは不評の日記らしいが読んでみたい)
●10代男性、小中学生の自作マンガ18冊、1990年、20巻も描き続けた推進力を栄養分として受け取っていくと言う読み方も。(そういう読み方もできるのかと脱帽)

性別年齢職業不明の人の手帳の中身。↓

●性別不明、年齢不明、職業不明の人の手帳。一番不明なのは知人越しの寄贈である点。内容や書かれ方がどちらとも取れる感じ。字体も。「入学説明会」という記述は自身のものとも子供のものとも解釈できる。(✅222-A)
●10-20代女性、約6年間、生と死の狭間でもがいている記録。「つかれた、だるい、死にたい、入院、OD」等。カッターで切り刻んだ形跡、死後を想定した遺書、数ページに血の跡が残されてある。
・(✅135-A)


(2)

私的な記録越しに、人間についての認識がまたひとつ更新された。
手帳には持ち主の人生が詰まっており、各人の人生そのものを示すプライベートな領域に触れられた。
他人の手帳というプライベートで繊細な楽しみを味わえた。
魂の形が垣間見える、個人の手帳の「ナマモノ」感は、少し後ろめたいものを感じた。
顔も名前もわからない人の日記を読みその人の人生を触れる(追体験する)ことでその人になりきったような不思議な感覚になった。
書き手の心情、考え、感性、思考を愛しいと思った。

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