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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ

きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さない間、きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。
「青色の詩」最果タヒ

冒頭のこのセリフが、幾度も繰り返される。
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
原作は最果タヒさん。

2017年上映。5年が経っている。
TSUTAYAに並んでいたときから見たかった映画。
見るまでに時間がかかってしまった。

昨日みた『花束みたいな恋をした』とは
全く色味の違う恋愛映画。
感情移入できたのは、こちらの映画。

原作が最果タヒさんということもあり、
ひとつひとつのセリフがとにかく響く。
昨日の映画が、カラフルな恋愛だとすると、
こちらはモノトーンな静かな雰囲気。
ダークさや、東京という場所の、生きていく
ことの残酷さが、巧みに描かれている。

恋愛って、なんだと思う?
誰かの元彼だった人と誰かの元カノだった人が性懲りもなく、くっついたり離れたりする事をくり返すことだと思う。恋で溢れ返っちゃっているじゃん。バカみたいに。それなのに失恋して虚しい虚しいってみんな言ってるわけでしょ。ダメだね。かくいう私が一番ダメなんだけどさ。いつか捨てられる事ぐらい何でわかんないんだろ」
ライオンが檻の中をうろうろしているのは
そうしないと正気でいられないから。
人間もそう。
恋愛してないと正気でいられなくなる。
やっぱり人を好きになるって、その人のことをやんわり殺すってことだよね?
しあわせになれるの?
しあわせになる意味もわかっていないのに。

こんなふうに、美香は恋愛に対して否定的で、
あまり笑わない女性である。
何かにつけて、死に結びつけてしまう。
それは、看護師という職業や母親の死が
関係していることもある。

だけど、美香のその疑問が自分にとって、
共感はするものが多かったし、
この映画自体が、うつくしく描くのではなく、
切り込みをいれ、私たちに問いかけているのだと
思う。
ことばにできない、こたえのみつからない
ものを。

生きていくことの大変さを。
恋愛に疑問を持ちながら、それでも
誰かと生きていく姿が、描かれている。

不器用にしか生きられないひとたちの、
ひとつひとつ取りこぼしていくことばに、
響いていくものがあった。

「いやなことは全部、俺が半分にしてやる」
「わたしって信じられないくらいだめな人間だよ」
「そっか。それじゃあ俺と一緒だ」

最後の方の、自転車に乗りながら話している
ふたりのこの場面がすてきでした。


いつも、読んでいただきありがとうございます💐