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無題

雨が降っている。

炎が上がり、水が降る。

弓矢が撃たれ、地獄が現れる。

魔法陣が現れ、燃え盛る十字架が奈落へ落ちる。

夕焼け空が、やがて満天の星空へと変わる。

全て「ステージ」で行われたこと。

ただ出演キャストに好きな人がいるから、って理由で足を運んだ ”朗読劇” で、あんなに魅了されるなんて思わなかった。


演奏したり、踊ったり、歌ったり、そんな場がステージだと思っていた。

朗読劇なんて、人が物語を読む、それだけだと思っていた。

ただ、私が観劇したのは「音楽朗読劇」。

朗読のBGMとして音楽が奏でられるのではなく、朗読×音楽。

そこにド迫力の演出。

鳥肌も、涙も、止まらなかった。


たくさんの舞台を経験して、見てきたつもりだったけれども、こんなにも忘れられない舞台はない。

ホールで魅せられる可能性。

それがぐんと広がった、こんな飛びぬけたことできるんだって気づかされた。


それが二年前。


そんな朗読劇の再演にこの間足を運んできた。

話の筋は全く同じ。

それでも少しずつ変わっていた。

「再演だから前回のものをなぞるのではなく新しく立ち上げていく」

キャストの一人がそういっていたけれども、本当に、そうだった。

セリフを覚えるほどに円盤を見ていた。

初めに見た感動を忘れないように大切に見ていたはずの円盤。その感情はいつしか忘れてしまったのだろう。

何度も見ていると、BGMのようになっていた。


現場での第一声。

思った通りの声、セリフ、演技が耳に入ってきたのに、涙があふれてきた。鳥肌が止まらなかった。

どういう展開かも、次のセリフもわかるのに、最後まで涙も鳥肌も止まらなかった。

それでも、前回の朗読劇とは異なるものになっていたし、私自身も二年という月日を経たからか見るポイントが少し異なっていて別のところで感動することも多々あった。


現場って、やっぱり特別な場所なんだ。


現場だから、その一瞬だけだから、いつかは忘れてしまうかもしれない。

それでも、現場だから伝えられるもの、画面を通してでは伝わらないものはたくさんある。

ステージに関わる全ての人の熱量を感じられるのはその場にいる人だけ。

五感すべてを駆使して、感じることができるたくさんの感情。

それは現地でなければ気づけない。伝えられない。

それを、私は伝えたい。

伝えられた想いは、忘れないはずだから。

その時に揺らいだ感情は忘れてしまうかもしれないけれど、こちらが伝えたもの、その人が思ったことは絶対に心に残る。

それは、現場だから。現場だから忘れられないものになる。

それが、その人のきっかけになる。


そんな場をつくりたい。

その人の、かけがえのない時間やお金を費やして、足を運んでくれる人がいる。

それを忘れないように。

伝えたい想いを忘れないように、最高の舞台をつくる。

私たちがつくる舞台が、忘れられない思い出になるように。






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