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生きるということは

2020年2月22日。猫の日でもあり、我が父の手術が無事に終わって3日目だった。

父は去年の終わり頃に初期の癌が見つかった。その日は彼の母である、私の祖母が亡くなって1週間後のことだった。母から電話で知らせをもらった私はその時、日本文学論の授業での大きいプレゼンを控えており、夢野久作の作品と絶賛格闘中だった。

その状況が違ったら気分も違ったとは思わないが、よりによって狂気に取り憑かれた少女たちの物語にズブズブに浸り切っている時に祖母は旅立つわ、父は病気だわでそれから1ヶ月ほど、私は発作を起こすように度々やさぐれ、泣き喚いた。

そんなことも思い出せば懐かしいと感じるようになった2月19日。父の手術は無事成功し、3日後の22日に母と私の滞在しているホテルに戻ってきた。無事に成功したとはいうものの、全身麻酔を施してメスを入れた身体はさすがに重たいようで、母の献身的な介護を受けながら静かにベッドに横たわっている。

比較的簡単な手術だ、今悪いものを取り除いてしまえば長生き間違いなし!と医者には言われたが、ポジティブとは言えない性格の私と母は手術が終わるまでずっとソワソワしていた。何はともあれ、無事に終わってよかった。術後の経過も順調だと、実家に戻った母も電話で話していた。

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そんな感じで家族のドタバタがようやくひと段落つきそうな今日この頃、コロナウイルスが世界規模で猛威を揮っている。

ネットには重症者や亡くなった方の人数が並ぶ。その方々のご家族の気持ちを思うと胸が苦しくなる。新型のウイルスで大切な家族が苦しんでいる、それがどんなに身を裂かれるほど辛いことか。

私達は彼らの存在を数字でしか認識できない。ひとりひとりを見ていくと、人生の中でなかなかない程の辛い想いをしている方もきっと大勢いるだろう。夜も充分に眠れていないかもしれない。人がひとり亡くなるって大変なことだ、祖母の葬式で充分思い知った。思い出は毎日溢れるし、何もしたくないのに葬式は待ってくれないし。その他諸々の手続きも山ほどあるし。病気の人のケアだって大変だ。当の本人が一番大変なんだから、してあげられることは精一杯やってあげたい。でも自分の身体も無敵じゃないから体力も精神力もゴリッゴリ削られる。父も母も早く日常を取り戻せますように。

生きるとは何か。死とは何か。

24歳の誕生日を明日に控え、母がこの世界に私を迎え入れてくれた日のことを想いながら23歳最後の夜を過ごす。


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