M27参考文献のような何か



以下の文章は2017年6月に某インターネットマガジンに『ファンクギャング、束の間のキングオブロック』と題して投稿、掲載された文章です。M27.の参考文献的に載せておきます。
個人的には、音楽との出会いを初めて文章に起こしたものになります。
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“忌野清志郎ロックン・ロール・ショーLove&Peace”は自分にとって、特別なイベントだ。

いきなりだが、少し前の話をしたい。
私は2010年の末頃、14歳の時にザ・クロマニヨンズというバンドをYouTubeで見つけたことでロックンロールを知った。
“MONDROCCIA”というアルバムのツアーDVDから不法にアップされたものだったはずだ。
“うめえなあもう”という曲で、歌詞のわけのわからなさと頭から離れなさで夢中になった。
「これはタダで聴いてちゃダメだ!」と思い、アルバムを買い、しばらくYouTube離れが進んだ。
彼らの過去を知っていくほどに、バンドを知ることやCDを聴くことに楽しみを覚えた。


翌年、2011年の5月2日、彼らの過去バンドの音源をざっと一周したくらいの時期に開かれたイベントが“忌野清志郎ロックンロールショー日本武道館Love&Peace”である。
私はこのイベントのことは、後に出版されたロッキング・オン・ジャパン7月号の付録本で知った。
音楽雑誌に興味を持ち始めた私は「ザ・クロマニヨンズ」と書いてある雑誌を見かけたら読むことにしていたので、見つけることができた。
その時に、忌野清志郎を知った。


私がクロマニヨンズの次に聴くようになったのは清志郎で、そこからまた現在に戻ってくるように遡り直して聴いていた。
清志郎を知り、タイマーズを知り、また奥田民生などクロマニヨンズと同世代の音楽にもハマり出していた私は2012年と2013年のロックンロールショーを武道館に1人で観に行った。
高1高2の時だ。
その時が初めて生で観るロックンロールだった。


2012年のロックンロールショーの開演の瞬間は今でも覚えている。
その日、開場してから武道館には清志郎の曲が流れていた。
開演時間に近づいた時、客入れの曲が“JUMP”に変わった。
清志郎が亡くなってしまった後に彼を知った自分でも、この曲が完全復活祭の最初の一曲であることくらいは知っていて、気持ちがハイになるには十分だった。
“JUMP”が流れ終わった後に照明が落ち、“ロックンロールショー”のイントロが流れた時は痺れた。
奥田民生とトータス松本が一番手でこの曲を歌っていたはずだ。
不思議なのは一曲目よりも、客入れラストの“JUMP”の方が記憶に残ってることだ。
私にとって初めてのロックンロール体験は“JUMP”なのだと思う。


時は流れて2013年11月。
クロマニヨンズがライブ盤を出すタイミングでヒロトがナタリーで対談をした。
その相手が志磨遼平である。
対談時のドレスコーズの新譜が“バンド・デシネ”。
私は当時ヒロトが良しとするものは全部好きになりたいと思っていたので、急いでドレスコーズを聴き始めた。
それが、私にとって初めての志磨だった。
始めてリアルタイムで聴いたのは“HippiesE.P.”でそこからはずっと追いかけているし、クロマニヨンズで覚えた時系列を遡るスキルを毛皮のマリーズに適応して古い音楽を聴いたりした。
それからの数年の間に、ストーンズやポールを観に行ったりした。
クロマニヨンズで作られた私のロックンロールの土壌は志磨遼平によって発展されたように思う。
そして、初めてのロックンロール体験だった2012年から5年の月日が経ち、今年、志磨遼平がロックンロールショーに出た。
毛皮ズ時代の有賀幹夫さんのインタビューや、過去作からして、“わかってもらえるさ”あたりをやると思っていた。
それが“JUMP”だなんて。


私は音楽で涙を流すタイプの人ではなくて、自分でも本当のところは音楽に心震わせられたことはないのかもしれない、と悩んだこともあるが、“JUMP”のイントロが流れた時から涙が止まらなかった。
初めてのロックンロールを追体験するには場が整い過ぎていた。
私はここまで書いた通り、志磨遼平よりも忌野清志郎を先に知ってるので、今回は久しぶりに志磨さんを特別視しないで済む、冷静に観ることができると思っていたのに。
中学生のくせしてクロマニヨンズという良い衝撃を食らったのにもかかわらず、ロックンロールに詳しくないことをずっとずっと恥だと思っていた私は、志磨さんによる“JUMP”で救われた気がした。
志磨さんにこの5年間を肯定してもらった気がした。
私だってイントロひとつで涙が流せるくらいにこの曲を愛していたのだ。


気づかせてくれて、本当にどうもありがとう。


こちらこそ愛してます。


志磨さんのことも、清志郎のことも。

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