M29.売旬feat.志磨遼平

女王蜂『売旬feat.志磨遼平』

女王蜂のアルバム『綺麗』に『売春』という曲が収録されています。
女王蜂のフロントマンはアヴちゃんと言います。
アヴちゃんはとても不思議な人で、よくわからない人です。
1番最初は、女性なのか男性なのかよくわからないという印象を持ち、次第にそんなことはどうでも良くなりました。(誰に対してもそうですが)
アヴちゃんはアヴちゃんです。(これも普通のことですが)
彼女の特筆すべきことの一つに声があります。
簡単に言えば、女声と男声が両方出せます。
それを1番フルに利用した曲が『売春』になります。

『売春』はアヴちゃんによる1人デュエット曲です。
曲自体、男性と女性の会話のようなの歌詞になっています。それを男声のアヴちゃんと女声のアヴちゃんで1人デュエットする、というのがこの曲の構造です。
普段のアヴちゃんがそういったことを意識させないところにいる分、「男」「女」という枠組みを少しはっきりさせるだけで、ものすごく際立った印象になります。

そんな1人デュエット曲『売春』を実際に2人のデュエットにしたのが『売旬』となります。
女声のアヴちゃんとデュエットしたのがドレスコーズ 志磨遼平、男声のアヴちゃんとデュエットしたのがグラビアアイドルや歌手として活躍する篠崎愛です。
ちなみに、「春」の字が「旬」になっているのは、「私1人の曲なら、「私の春を売る」ということで春と言えるけど。私の春が誰かの春とは限らないと思って。それで、2人には旬を売ってもらおう、と旬と変えました。」というようなことをアヴちゃんが言っていた記憶があります。(私は、よその事務所・レーベルの人間とデュエットするにあたり、「売春」という言葉にNGがかかったのでは、の邪推しています。)

アヴちゃんは志磨さんに「ジェンダーをはっきりさせて!」とオーダーしたそうです。この男女デュエットの枠組みを更に際立てようとしたわけです。普段の志磨さんも女らしいとか男らしいとかそういった枠の外にいる人です(彼もまたそれを逆手にとった演出を時々します。例えば一つのステージで女方と男方を使い分けて歌ってみたり。)。今回は「敢えて」ジェンダーロールを演じるようなディレクションをしたと言えるでしょう。
『売春』(および『売旬』)は、(タイトルからして既にそうですが)所謂一般的な倫理には当てはまらない関係性の女性と男性の歌になっています。アヴちゃんは恋仲やそれに近しい関係を描くときパワーバランスをタイにして書きたいと言っていました。
この2人は歪なタイです。
そんな2人を演じて歌うアヴちゃんと志磨さん。とても様になります。

この曲は『売春』としてMVが公開されています。
ヴィジュアル面でもアヴちゃんの男女二役が見られます。こちらもおすすめです。

それでは、また。あなたを愛しています。

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