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書籍『おうち性教育はじめます:一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』

フクチマミ 村瀬幸浩 2020 KADOKAWA

性に関わることは、口にし慣れている人と、し慣れていない人のギャップがとても大きいように思う。
性についての悩みもおうかがいすることがあったり、若い方に避妊や性暴力について話すことがあるため、私は仕事としては平気であれこれ口にする。
が、プライベートの文脈で、例えば、親と話し合えと言われたら、余計な羞恥心が刺激されることがないわけではない。
だからこそ、子どもにどのように性にまつわるいろんなことを教えるかという場面に立たされた時に戸惑うのも、それが大多数の反応ではないかと思ったりもする。

日本での「性教育」は高校の保健体育にゆだねられている。
しかし、性暴力や性虐待は小学生段階(場合によっては未就学の段階)から起きることを考えると、幼少時から教えてもらえるほうが子どものためだと思う。
その点、本書の3-10歳からの家庭での性教育を、まじめにきちんと取り上げているところが素晴らしい。
更に、性教育と言われると、すぐに避妊と性行為の話に勘違いされやすいのだが、そんな矮小なものではないことを教えてくれる内容になっている。

幼少時から家族が教えることがベスト。
そのためには、まずは親が性教育ってなにか、どういうことを教えていけばよいか、どうやって伝えればよいかを知らなくてはならない。
プライベートパーツの考え方、男性のからだの仕組み、女性のからだの仕組み、そして、性行動と避妊について。
口にするのも恥ずかしいとためらってきたことを、どんな言葉で伝えればよいか、その文例の一つ一つがあたたかくておだやかで素敵なメッセージになっている。

これらの知識は、男性も女性も等しく知っていてほしいこととして語られるところが、とてもいい。
生々しさの希薄なほのぼのとした絵柄のマンガだからこそ、家庭や職場でも堂々開きやすい本になっている。
小学生が読むには難しいところもあるかもしれないが、保護者が勉強した後、中学生ぐらいになった子どもが自分で読んでみるようになってもいいかもしれない。

この本の最後の章では、大人にこそ知っていてほしい性の知識について触れられている。
SOGIといった最近の概念も紹介しつつ、性をどのように考えればよいのか、大人が変わっていくための指針となる情報が詰め込まれている章だ。
その中で、性行為を、①子どもをつくるため、②共に楽しく生きるため、③支配するため、の3つに分類している。
AVなどの大人がフィクションとして楽しむために描かれるのは③が多いことと、従来の性教育が①にばかり注目しがちだったことを考えると、②の部分にあえてしっかりと触れてあるところに、この本の価値があるように思った。

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