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病歴38:治療の見直し、生活の見直し

頭をなでると、ざらりとする。
ぶつぶつとして、頭皮にごまでもまぶしたような手触りだ。
髪の生え始めは、一本一本の羽毛がさやにつつまれて生えてくる文鳥のヒナになった気分だ。
それから、やがて、柔らかく細くなった髪になっていく。

10月上旬、8回目の抗がん剤治療でアナフィラキシーを起こした。
そのため、10月下旬の9回目の抗がん剤治療は、カルボプラチンは無くなり、パクリタキセルだけとなった。
それでも副作用はなかなかつらく、四肢の痛みや疲労感に耐えながら過ごした。

そして、11月中旬。
婦人科の診察日に向かう途中、同じ病を戦っていた伯母が力尽きたという知らせが入る。
母を慰めながら、病院に向かった。

緩和ケア内科、造影剤CT、婦人科、そして歯科と順に回った。
今回の再発がわかってから、3か月ごとに造影剤入りのCTで経過を見てきたが、片方の腫瘍は小さくなったが、もう片方は大きくなり続けている。
そのことと、カルボプラチンでアナフィラキシーを起こして使えなくなったことの二点から、現在の治療は中断することになった。

代わりに、どうするか。
示された選択肢は二つだった。
通常ならば、違う抗がん剤を使うことになる。ただし、その場合は副作用がこれまで以上に出やすいことが懸念される。
現在の私の状態では、その副作用に耐えかねるのではないか。
そこで、もう一つの選択肢として、一旦、オラパリブ(分子標的薬)の服用に戻すことが挙げられた。
ただし、オラパリブを服用している時に再発しているので、これでどこまで効果があるかわからない。
抗がん剤を切り替える前に、少しでも楽な方法で様子見をしつつ時間を稼ぐことが望ましいので、オラパリブに戻そう。
そういう判断をした。

とはいえ、オラパリブも楽じゃないんだけども。
前回の服用では、動悸や息切れがひどく、MAXの600mgで一年間は耐えようと思ったが、一年経ったところで400mgに容量を下げてもらった経緯がある。
今回は300mgスタートではなく、400mgでスタートすることになった。

オラパリブを始めるには、最後の抗がん剤から4週間経過していなければならない。
抗がん剤治療から4週間ぐらい経つと、体がだいぶと楽になる。
その頃から、頭皮にごまでもまぶしたような手触りが数日続く。
気づけば、眉毛や睫毛がうっすらとはえてくる。
毛が生え始めるというのは、骨髄の抑制もなくなって、活動し始めているのだろう。
仕事をするにしても、家事をするにしても、比較的、楽に動ける。
自分が楽になると、がん細胞も元気になっているのが、憎たらしいところだ。
自分とがんとの我慢比べはまだまだ続く。

オラパリブを開始する直前にコロナの5回目のワクチン接種もすませた。
その時に、予診をしてくださった医師が年配の精神科医で、がんであることを明記した問診票を見るやいなや座り直し、長生きしようと強い気持ちを持つようにと励まされた。
そんなところで時間を費やしても、その先生になにかの得になるわけではないのに、時間をかけて声をかけてくださった。
そうせずにはいられないところがその人の職業としてのアイデンティティの部分であり、優しい人なんだろうなぁと思った。
そして、例によって高熱を出して寝込んだ。

ワクチンの副作用で体力を削り、連勤で体力を削ったところで、オラパリブを開始したせいか、前回よりも強い吐き気に苦慮することになった。
吐き気止めを遣うと空腹感がひどくて食べすぎてしまうから、と、吐き気止めを服んだり服まなかったりしたのも敗因だったかもしれない。
伯母の死のダメージを抱えるために、抗うつ薬を増量して、その副作用の吐き気が重なったのも敗因だったかもしれない。
あるいは、嘔吐下痢症をどこかで拾ってしまったのだろうか。
尾籠なことこの上ないが、嘔吐にも、下痢にも襲われて、仕事は休まなければならないし、なかなか散々なスタートになってしまった。

その後、オラパリブを300mgにまで減量して、もうすぐ2週間になる。
今週の受診で、400mgに戻してもらおうとは思っている。
せっかく服用しているのだ。効果がないと、それは甲斐がない。
そんな風に思うのだが、漫然と体力不足や不調が続き、疲労が蓄積して、回復しにくいのがつらいところだ。
思い返せば、抗がん剤治療は確かにつらい治療なのだけれども、点滴から数日間は思い切って仕事も家事も休むことができていた。
ちょっとぐらい睡眠不足になっても、疲労が蓄積しても、抗がん剤治療にあわせた数日間の休みでリカバリーすればいいやと思うぐらいだった。
ところが、分子標的薬の治療に切り替わると、そういうまとまった休みを取るタイミングがない。

週に4-5日は出勤して、内職もして、家事もして、猫介護もして。
これが少し、苦痛に感じ始めている。
仕事を休みの日は、半日か、場合によっては、1日横になっていても、回復した気がしない。
吐き気はまだ続いていて、慣れるという感じがしない。
背骨がぎしぎしときしむような痛み。体を起こしていることが、正直なところ、つらい日がある。
寝ても、目が覚めた時から、心臓がどきどきと早打ちして、息苦しい。
そういう日が増えてきた。
自分の生活や就労の仕方を見直ししたほうがよさそうだ。

なお、髪は順調にのびてきて、5mmぐらいになっただろうか。
眉毛や睫毛も、少しずつ戻ってきている。
もうじき、Zoomの外見の補正で眉毛が使えるかもしれない。(Zoomの外見補正の眉毛は、眉毛がまったくないと、どこに表示すればよいのか、困るらしくて、おかしなことになるのです)
とりあえず、我慢比べはまだまだ続く。

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