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美しさの洗脳は醜い

ハムスターは自分の顔をそこそこブスと認識している。ほうれい線がすごいし、鼻の形も、くちばしみたいな口も、せまくて丸くないおでこも、二重アゴもやだなっておもう。それに平均より太ってる。おなかがボーンって出てるし、おしりもだるーんってしてるし、うでもお歳暮のでかいハムみたいだし、太ももはくっついて股ずれでズボンがやぶける。それにめちゃくちゃ毛深い。たぬきかよ。うでの内側とか、指の付け根のほうだけじゃなく、第一関節に近いほうにもボボって生えてる。ずっと醜い醜いとおもって生きてきた。でもまだ何もわからないこどもだった頃は、たぶん自分のことブスだな〜うわ〜きっつ〜なんておもってなかったとおもう。

おいしい食べ物とか、素敵な服とか、かわいい動物とかはたくさんたくさん種類があって、私はこれ好きだけど、これは好きじゃない、あなたはこれが好きなんだね〜っていうのが許される。多様性。でも、身体や顔の美しさは、どうして多様性がないの?テレビも雑誌も、同じような体型、同じようなパーツの女優さんやモデルさんばかり。たしかに美しいんだけどさ、でもさ、視聴者も読者も、女優もモデルも、監督も編集者も、みんないつからこういう外見こそが美しいっておもうようになったんだろう?
それに、美しさの価値観が異なる人を攻撃するような人たちも一部いる。健康的に体型を維持しているプラスサイズモデルの人に誹謗中傷したり。なんで?本人や周りの人たちがいいねって思ってることに対して、わざわざ割って入ってきてけなすのってひどいことだし、学校とかで本人がコンプレックスに感じてることをわざわざ言うのははもっとひどい。「おいブス」とか「やいデブ」とか「ハゲてるな」とか言うのは「おい入院患者」とか「やい家が貧乏」とか「これだから犯罪者の身内は」とか言うのと同じくらい非人道的だって、全員が認識したらいいのに。

ハムスターは昔、母によく「整形したかったらしていいんだからね、止めないから」とか「鼻高くしたら?」とか「あんたなんで肉布団着てるの?」とか「あんたなんでそんなに太ってるの?」とかいろんなことを言われた。ハムスターはそのたびに悲しくなっちゃった。なんでこんなブスでデブなのかなんてわかんないよ、しらないよ…って心を痛めてた。
母はテレビに対しても、ずっと悪口を言ってた。「この人の顔好きじゃない」とか「これは絶対整形してる」とか。「この人大学出てないんだ」とか、学歴のこともよく言ってた。え?めちゃめちゃ差別主義者やん。やば〜。今考えれば、全部母自身のコンプレックスを人にすり替えて悪く言ってたのがわかるけど、子供はそんなの知らないから、全部素直に受け止める。もちろん母以外にも、学校とかで言われたり、笑われたりしたこともある。デブとかブスとか毛深いとか。つら。でも今冷静に考えると、そうやって言ってきた人たちみんな、モデルや俳優、アイドルのような出で立ちだったかって思い返すと全然そんなことはない。でも自分より格下って決めつけて誰かをバカにしたり攻撃して、束の間の安心を手に入れたかったんだろうね。

ハムスターは眉毛がずっとボーボーだったんだけど、ある日、おしゃれな人に、眉毛整えた方がいいよって言われて、基本的に自分のことダサくてブスって思ってるから、そうなの…?っておもってしばらく眉毛を抜いたりしてたんだけど、なんか突然、うるせえわっておもっちゃったんだよね。なんで言われた通りにしないとならんの?は?は?は?お金くれるんですか〜?私の眉毛の権利、買ったことありましたっけ〜???ってムカついちゃった。だからもう一切やめてナチュラルボーン眉毛にしたろおもて、生やしに生やしたところ、なんと、眉毛の形いいね!って複数人から言われるようになったの!は〜〜〜〜〜!?!!??!??今までなんだったんだ!??!!???!!?なんにもしなくても、ほめられるのかよ!!!!!!???!!??!??ていうかいい眉毛だったのかよ!!!!??!!????!??!ばかみてえだな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ハムスターは小さい頃、保育園にいったとき、保育園の先生に「ヒゲ」って言われたのを強烈に覚えてる。あと、幼稚園の時、ともだちのお姉ちゃんの同級生に出くわすたびに「ヒゲ」って言われてそれがすごい嫌だった。小学生の高学年になると、すね毛がボーボーに生えて、バスケやってたから短パン着ると他の子たちとの違いにウワ〜〜〜〜〜ってつらくなって、カミソリというものを覚えた。お風呂場でジョリジョリジョリジョリしてた。背中の処理ができないから、猿みたいって言われてすごい悲しかったこともある。いつか絶対全身脱毛するんだって夢を中学生のハムスターは抱いた。
そしてその夢を叶えるべくお給金はたいて脱毛サロンに通い始めたハムスター。たしかにちょっとは効果があるけど、通ってるうちにだんだんばかくせえとおもうようになってきた。店員さんは親切な人が多かったし、施術もていねいにしてくれた。(私はこんなにきれいになりましたよ〜ってパンストとパンツ下げておまたを見せてくれたおねえさんがいたよ。ハムスターはそれ見てオオーって言って拍手した。たのしいね。)お店を悪く言うつもりはない。それに、脱毛してきれいになってうれしい!ってなる人たちもいいとおもう。でもハムスターは、なんか、べつにもうよくね?とおもってしまった。ワキ毛がボーボーでも楽しそうにしてるともだちたくさん知ってるし、ハムスターの体毛の有無で対応が変わるような人とは関わらなければいいだけのことじゃん。自分がそれでハッピーになるならやればいいけど、正直そういうことじゃないんだよなと気付いてしまった。自分がブスで醜いって思い込んでる洗脳の部分が問題なわけです。

デブは甘えってよく言うけど、正直それあなたに関係ありますか?ていうかあなた誰?とおもう。もし関係があって実害があるとするならば、肥満だからではなく、個人の人格の問題では?電車の座席が狭いとか確かにあるかもしれないけど、足広げたり荷物置いたりしてる人の方が悪意ある気がする。自己管理ができないから管理職に向かないとか、だらしないとか、色々言われてるけど、体型に関わらず、自分に甘い人間はいるし、管理職に向かない人間はいる。太っている原因はすべて、美味しいものをついつい食べちゃう食いしん坊だからだとおもってる人がいるとしたらそれはあまりにも無知です。もちろん中にはシンプルな食いしん坊もいるかもしれないけど、それは一部です。薬の副作用だったり、人のケアはできるのに自分の身体や心を大事にする習慣がなかったり、適切で健康的な食生活を送れない心の病だったり、さらにその原因は家族関係の歪みだったり、性暴力や性的虐待の被害者がストレスやトラウマから、また自分が性の対象として見られないようにするために肥満になるケースもとても多いのです。そういうことを知って、理解することはとても大事。なんならハムスターは安易にデブは甘えって言う人の心理、人を否定して優位に立ちたい心のメカニズムも知りたい。
たしかに、日本に流通してる多くの服は、スリムな人に似合うのが多いから、がっかりしちゃうこともあるけど、メディアの情報や世の中が普通とみなしてる価値観に振り回されることって結局ぜんぜん幸せじゃない。周りの人がひどいことを言ってくるならなおさら傷つくし、そういう人とは関わらない方がいい。でも身体は大事だから、体重や体脂肪率に関わらず、ふとっててもやせてても健康体でいる方がいい。太陽光を浴びたり、お野菜を食べたり、お散歩したり、おしゃべりしたり。

結局、ハムスターにとって、美しいってどういうことなのかまだ全然わからないんだけど、いろんな美しさがあっていいとおもうし、自分のテンション上げるために楽しんでキレイになりたいっておもってる人も素敵だなっておもう。でもハムスターは雑誌とかテレビとかでよく見る美しさを自分もやろうとおもわないし、価値観を合わせようと頑張れば頑張るほど自分らしくないなっておもう。歯をちゃんとみがいたり、汚くない靴下をはいたり、無礼な振る舞いをしないことも美しさかなって感じるし、人の素敵なところを見つけてほめるのも美しさかなって感じる。自分のコンプレックスを気にしない努力も、心が幸せになれるように洗脳を解いていくことも美しさかなって感じる。再洗脳してく。

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