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フィルタについて 3

フィルタケースを設計する

 ボルストンフィルタを使用する時、フィルタケースの市販品としては、Parker から又はSwagelokからは、ガス・フィルタ として購入する事ができます。今回の話は「フィルタについて1」のつづきとなります。

 Swagelokの営業マンから聞いた所によると、Swagelokのガス•フィルタ FCシリーズは、そこに使われているフィルタエレメントはボルストンフィルタだという事です。(図F)
 だから、エレメントはボルストンフィルタを購入して使用する事もできます。
 たしか050-11-XX のタイプだと思います。

 カタログでは、FCシリーズは液体除去用、パーティクル除去用として位置付けています。

 「フィルタについて 1」の話しのなかでバイパスを設けて、試料の一部を濾過するという説明に相当する、又は全量濾過するの中で説明しているのが、FCシリーズのパーティクル除去用に相当します。
 また、液体除去用としてはガスから水、油分を分離する(コアレッサ)の話しの中で説明している内容です。
 FCシリーズもそうなのですが市販のフィルタケースは、バイパス側だとかドレン側となる下部の取合い口が小さかったりします。
 そのためガスから水、油分を分離する(コアレッサ)として使うには、ドレン側に流れが無い場合、心配な点が有ります。

 もしドレン側に流れが無くて、ガス中の液体除去を目的として出口の先に液を溜めるポットを作った場合、出口の径が小さいと口が液封され易く、うまく流れないのではないかという点です。(図G)
 「設計あれやこれや 8」の中の話しのように小さいチューブの場合、下に空気層があっても水は下に落ちていかない事を経験しているわけです。
 ただしドレン側に流れがあれば、問題は無いと思います。

 その様なドレン側に流れが無い場合などの、システム上で心配な場合、または材質的に耐薬品性能等、合わない場合、フィルタケースの自作を検討します。
 自作フィルタケースであれば、動作上の心配な点、及び耐薬品性能面で、クリアされると考えました。
 なれると、フィルタケースの設計は割と簡単な物で、フィルタエレメントも自由に選べるし構造のパターンが出来てしまうと設計も1日で出来てしまいました。

 その様な事から今回はボルストンフィルタを使用して、ケースを設計する時のポイントの話しでもしてみようかと思います。


図A 市販の盲フランジを使用する方法

 自作で設計した一番最初のフィルタケースは図Aの構造のフィルタケースでした。これは、塩ビ(PVC2)製で市販の盲フランジを改良して製作しました。この構造は上司の提案による最初のフィルタケースでした。実際に組み立ててみると、市販のフランジによる構造のため、フタと本体のボルト固定というのは結構面倒な感じでした。
 本体側のフランジにも市販の盲フランジを使用して、テフロンのフランジパッキンを使用しています。
 市販のフランジ、及びパイプを使いますので、そこで耐圧が決まります。
 塩ビパイプ等、溶接で製作しました。

 このように市販のフランジの加工となると、塩ビ(PVC2) の溶接の必要になってきます。
 溶接の出来る樹脂として、経験のある物としては、PVC2、Pvdf、が有ります。
 樹脂を使ったシステムでPVC2では耐薬品性能、耐熱性の部分で対応できない場合、テフロンの仲間のPvdfを使用しました。
 樹脂の加工屋さんが言う事にはテフロンの仲間で、さらに耐食性が良いPFAでも溶接できるそうですが、PFAの場合、材料費が眼の玉が飛び出るほど高いという話です。


図B フタと本体をネジ固定による方法 1

次に設計する機会の時は、最初の扱い辛さからフタと本体をネジ締めで固定する構造を考えてみました。
 この方法であれば、本体を回すだけでフィルタエレメントの交換がしやすい為、メンテナンス作業が格段に楽になります。
 耐圧的には図Aと同等と考えれば良いと思います。
 このケースもフランジ構造となります。ただし市販のフランジを使うわけでは無いのですが、フランジ部分の大きさの丸棒から削り出すわけでは無い為、溶接構造となりました。


図C フタと本体をネジ固定による方法 2

 この方法が高い耐圧を求める場合に適した構造だと思います。
 この構造で、SUS316、ハステロイ等、色々な材料が可能です。
 私自身は大型のフィルタケースを設計した事は無いのですが、大型の場合、前の担当者が肉厚のSch80 のパイプを利用して、溶接を利用した構造で設計したのが有りました。
 逆に小型ですので、溶接を使わずに、製作する事が出来ました。
 大型の場合パイプに Sch80を使用していて、耐圧 8MPa に見合う構造としているようでした。

 このフィルタ構造の設計の時、Oリングの配置には注意が必要です。Oリングがシール部分に掛かって回転が重くなってから、一捻りの回転でシールを完了させる構造にするのが良いという事です。余り回転させてしまうと、ヒッツれるため、Oリングにキズ等問題が有るかも知れません。私はさらに、Oリングにテフロングリスを塗布して、スムースにセットされるようにしました。
 この点のポイントは、Oリングのカタログにも載っていないため、注意する様だと思います。


図D フタと本体をネジ固定による方法 3

 この方法は、フィルタケースを出来るだけ、コンパクトにした時の構造です。材料はPvdfで、フィルタエレメントを固定する軸に試料口を作り、材料費が高いので出来るだけ小さい丸棒から削り出して作れる様にして、コストダウンを考慮した作りになっています。
 取合口①②は、Rc1/8 とし、本体側の取合口③は、ドレン用として、大きくする事も出来ます。
 小型ですので、溶接は使用しないで、製作できます。


図E パイレックスガラスのフィルタケース

パイレックスガラスを利用したフィルタケースの例です。「異種材料のチューブ間の接続」の中で説明している方法です。フィルタケースの下部にもフタと同じ構造を作ると、ドレン口を下部に設ける事もできます。
フタの部分は、SUS等、金属も可能ですが、重量配分も考慮するようだと思います。本体がガラスのため、頭のフタは軽くした方がバランスが良いと思います。
この方式の耐圧は0.2MPaですが、ガラス部は、飛散防止のためのカバーを設けるようだと思います。
この方式は専用のOリングセットが有りますので、それを利用する事になります。
テフロン包みのOリングがあるので、これで大抵の場合に対処出来ると思います。
 フタの材料は、テフロンの仲間のPvdf を選択しました。
 フィルタエレメントの材質もPvdfとガラスなので、相性としては、最も合うわけです。


 パーカーの営業マンの話によると、ボルストンフィルタは、特別な宣伝もしていないのに、良く売れると、不思議がっていました。
 きっと、隠れファンが多いのでしょう。
 最後に、ボルストンフィルタのカタログに載っていた(図H 分析サンプルフィルタに関する技術試料)と(図I 液体用フィルタの流量表)を添付します。
 液体用フィルタの流量表に手書きで書いた内容は、パーカーの営業マンから教わった表の見方です。


『今回の設計のポイント』
 図C、図D のフィルタ構造の場合、Oリングがシール部分に掛かって回転が重くなってから、一捻りの回転でシールを完了させる構造にする。
 Oリング部分の寸法はOリングのカタログの載っているので、その寸法、公差を参考にするのが便利。
 上司から教わった内容で、Oリングを設置する部分の寸法や公差については、カタログに載っているのですが、一捻りという配置については、載っていませんでした。
 一つフィルタケースを設計するとフタ、本体ネジ部、Oリングの配置、フィルタエレメントの固定方法等、構造のパターンが出来てしまうと次回の設計時間の短縮となります。

 フィルタケースを設計する際の検討事項
 1. 容器、そのものが圧力、温度に耐えられるか。
 2. 容器にネジを使用している場合、ネジ部が圧力に耐えられるか。
 3. 樹脂物でしたら圧力、温度に関しては、市販の塩ビパイプ、フランジを参考にして、それに準じた設計をすれば良いと思います。

図A 市販の盲フランジを使用する方法

図B フタと本体をネジ固定による方法 1

図C フタと本体をネジ固定による方法 2

図D フタと本体をネジ固定による方法 3


図E パイレックスガラスのフィルタケース


図F FCシリーズ


図G FCシリーズの液体除去とパーティクル除去


図H 分析サンプルフィルタに関する技術試料


図I 液体用フィルタの流量表

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