設計あれやこれや 6
そのバルブ、流れを止めないで!
試料が多流路あり分析計が一台の時、流路の切り替えを時分割で行う必要があります。その時、よくヘンミ計算尺さんの三方エアー弁を使用しました。
このバルブは、この仕事を始めた時の最初の上司がヘンミ計算尺さんに頼んで、作って頂いた特注品です。
このエアー弁のダイヤフラムはテフロン製です。テフロンはゴムでは無いので、結構硬めです。ですから、エアーバルブの切り替えの時、漏れによる染み出しがでる場合があります。
そこで「コンタミネーションを防ぐ」の話が重要で、コンタミを防ぐという回路を作る事により、問題無く使用できるという事になります。
このバルブは外部からコントロール出来るタイプの一般的なバルブと大きさを比べると、半分以下の大きさで、標準としていたボックスの中に3流路まで収める事が出来ました。
小さくコンパクトなシステムを作りたい時は、どんなに助かったか知れません。
今思うと、その頃の私の上司は漏れの可能性の件は分かっていて、あえて使っていたのではないかとも思うのですが。
今は違うかも知れませんが、市販の国産エアーバルブや電磁バルブでもシール材として、テフロンを選択する場合、漏れの可能性について、カタログに載っていました。
海外製のサークルシールのチェックバルブをよく使用していました。サークルシールのシール材にテフロンを選ぶとカタログの中に漏れに対する記述がありました。
Swagelok社のチェックバルブではシール材の選択肢にカルレッツとなっていて、カルレッツはゴム材のため漏れにくいという特徴が有ります。
テフロンはゴムでは無いため、シール的に難点があります。そのかわりカルレッツは高価です。
ニードルバルブにも、止められない理由について、「Cv値を利用した流量調整の設計」に説明しています。ニードルバルブは別名、流量調整弁とも言います。
一般的な廉価なニードルバルブは止め弁として使用出来ますが、微小流量を調整するタイプは、閉め切ると先端のニードル部分を壊してしまう為、止め弁として使用出来ないので注意が必要です。
減圧弁の中にも、止められない減圧弁の経験があります。
最高温度500℃以上でも使用出来るGO社の減圧弁で、PR-9という物です。これなどは止めたため、壊してしまったという事があります。
500℃の試料、この流れを止められる弁、世の中に有るのでしょうか?
今だったら、きっと有るかも知れないですね。
こちらで用意出来なければ、お客様の方のバルブで止めて頂くようだと思います。
最後に、ABBの分析計に使われている窒素ガス、水素ガスなどの流量をコントロールする電磁弁と言っていいようなバルブが有ります。動作中はかなりの勢いで開と閉を繰り返しているのですが、このバルブ、どうもPWM制御をしているようでした。
PWM制御では、バルブの開と閉の時間的な比率を変える事により流量をコントロールする、つまり開の比率が大きければ流量が多くなり、閉の比率が大きければ流量が少なくなるという原理です。
分析計を停止している時、窒素ガスや水素ガスが、このバルブから漏れて気が付いた時にはボンベが空になっていたという事がありました。
このクレームが入った時は、大騒ぎになり、急遽、止弁として、ボールバルブを用意した事が有ります。
部品のカタログを見る時、漏れに関する記述などは、カタログの隅の方に小さく載っていたりするので、目を皿の様にして見ないと、あとで書いてあったはずだと怒られそうですね。
バルブなのに、止められないバルブばかり、漏れても有りという感覚で、さてどんなシステムを組もうかな!
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