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設計あれやこれや 5

ヌセルト数を感じる経験

 ABBの付加装置の仕事を始めて1年位経った頃、初めて熱交換器の計算をした後だと思うのですが、簡単な熱交換システムを作って、うまくいかなかった事があります。ですから当然、熱計算はしていません。

 それは、4流路の試料を60℃のボックスの中に1/8”のチューブで受けて、その中で4流路を切り替えます。
 分析計の手前で、1/8”×1m のチューブにトグロを巻かせて、60℃の温調ボックスで熱交換を行い、分析計に入れるという方式です。
 流量は、100mL/min 程度だったと思います。

 確認方法としては、トグロを巻いた1/8“チューブの熱交換部入口と出口そして分析計の入口部の3ヶ所の管の壁にポータブル温度計のセンサを取り付て各温度を測定しました。
 温度計のセンサを付けた管部分は、外部温度の影響を受けないように、しっかりと断熱しておきます。
 液は1/8”チューブ内に流れているため液温を直接計れなかったためです。

 結果としては、熱交換部出口では60℃近くを示していたが、ボックスから200mm離れた分析計入口部では、かなり温度が下がっていたと記憶しています。

 問題が起きた事により、上司のさらに上の方も一緒に報告を聞いてました。
 試料の温度が上がってうまく熱交換が出来ているのにほんの200mm離れた所で温度が大きく下がっている事を聞いて「そんな事はありえない」と、私のその報告以降、この件の対応は無かったようです。
 内径2.18mm程度の細いチューブのため一度、上がった温度が下がるというのは有り得ないと思ったのでしょう。また、テストの仕方にも問題が有ると思われたのかもしれません。

 現場でのテストが終わり、社内に帰ってからしばらくして、熱計算の式を思い浮かべたのは、ヌセルト数の事です。1/8”チューブ内の試料が層流であればと思い、レイノルズ数を計算してみると、まさに層流でした。

 層流の流れにより、管内中心と管内外側の熱の伝わり方が違うという事が考えられます。
 要するに、管内外側が熱くなっても、管内中心は、まだ冷たいという事です。
 だから、外部の熱源が無くなると、管内中心の冷たさが伝わってきて、管壁の温度を下げていると想定されます。
 これって、熱交換器の層流時に計算するヌセルト数の関係だと思いませんか。きっと、ここで対流熱伝達が起こっていたのではないかと思いました。
 逆に、どんなに細いチューブであっても、この様な事は起きるのではないか、と思いました。
 この件は、私にとって理解を深める実体験となったなと思っています。

 逆にもし、乱流状態であれば一度上がった試料の液温は急には下がらないのではないか
 またチューブが短かく伝熱面積が足りないため、乱流時では、温度が上がらなかった可能性もあると思いました。

 この件は、充分な性能を持たせた熱交換器に変える事により解決しています。

 上司のさらに上の方は、他社に移動があったため、この件についての私の考えを伝える事はありませんでした。

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