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設計あれやこれや 7

 今回は、ガルバリウム鋼板の紹介です

 ガルバリウム鋼板、使った事有りますか。

 最近は、家の壁や屋根材としてネットで沢山出ていますが、私がガルバリウム鋼板と関わり始めた頃は、余り一般的ではありませんでした。

 ガルバリウム鋼板も今のように薄い材料では無く、忘れてしまいましたが板厚は1.6mmか2.3mmであった気がします。

 通常、電子機器等を収める鉄のキュービクルとかでしたら、2.3mmの鉄板に塗装です。

 ガルバニウム鋼板はアルミと亜鉛のメッキ鋼板なのですが、板面は美しく、ものすごく錆びに強いのです。

 切った断面は切りっぱなしでよく、板の中身は単なる鉄なのに、切った所から目立つ錆が出てこないのは驚きです。

 ガルバリウム鋼板は、大型のトレーラーに乗せて運べる大きさの大きな分析計小屋を作りました。その分析計小屋をアナライザハウスと言います。

 この仕事を機械設計として担当する以前から、分析計小屋は作られていました。

 ある時、分析計の更新の話しで、その担当以前のアナライザハウスを見る機会がありました。たぶん設置後10年以上、経ってはいると思うのですが、あまり見た事が無い旧型の分析計が動いていました。

 その現場は、海岸に近いせいという事もあると思うのですが、ドアのみボロボロで崩れ落ちた状態になっていました。しかし全体は全然痛んでない無傷状態に見えました。後でドアについては、近所の板金屋さんに治してもらったと聞いてます。

 ハウスはガルバリウム鋼板で、出来ているのですが、ドアはユニットとしてハウスを作る時、別に専門の業者に発注して、用意しているという事です。
 ドアはガルバリウム鋼板では無く、鉄に塗装となっていました。

 ガルバリウム鋼板は、製作の注意として溶接が出来ないという点があります。
 組み立て方法としてはリベットを使うという事になります。推奨するリベットは確かアルミ製となっていたと思いますが、より強度があって錆びにくいステンレス製の物を使用し、その上からコーキングしています。
 例として、溶接できないという点ではジュラルミンと同じです。昔の航空機の機体を見るとリベットだらけというのを見たこと有りませんか? そんな感じです。航空機と違ってリベットの間隔は広いですけど。

 私がこのハウスの設計を担当してから、ドアも別に発注せず、自分で図面をひいてガルバリウム鋼板で製作する事にしました。ハウスそのものは、大丈夫なのに扉だけ朽ち果てているなんていやですよねぇ。

 自分で設計するとなると、意外に難しい物でした。
 まず、ドアの構造は団地などで使われている太鼓構造とか言うらしいのですが間に断熱材を挟み込み、編み入りガラスによる窓を設けます。
 ここで扱う試料は可燃性であったり毒性があったりしますから、ハウスのなかで万が一の時に、すぐ逃げられるようにパニックハンドルを設けます。
 板金屋さんと何回も、構造についての打ち合わせをして完成させる事ができました。

 ガルバリウム鋼板は、今みたいに余り世の中に浸透していませんでした。
 そのため、感覚として、まだ信頼度が薄かったことによると思うのですが、私がこの担当する何年も前、大手のエンジニアリング会社から海外向けアナライザハウス付きの分析計システムを受注した時の話しです。

 そのハウスもガルバリウム鋼板製だったのですが、現場に納めてから、現場のエンジニアリング会社の担当者は、鉄にメッキを施した物は、すぐに錆びて駄目になってしまうと判断したそうです。
 そこで、わざわざガルバリウムの表面を削って鉄を出し、塗装し直したそうです。
 その後、ハウスが動き始めて、何年後の事か分かりませんが次の点検に行った時、もうそのハウスはボロボロ状態だったそうです。

 なんでエンジニアリング会社の担当の方に説明して、そのまま使うように説得しなかったのか、わかりません。
 この話しは、最初の上司がいる間は、一度でも話してくれたことはないし、上司がいる間、点検に行った方からの話しも有りませんでした。
 あまり良い話しではないので、話したくなかったのかも知れません。上司も点検に行かれた方も、お互いに、この話しを避けていたのかも知れません。何故か上司が退職されてから、私に文句を言ってきました。それで、この件を知ったのです。

 点検に行かれた方はメッキはダメで材料の選定に問題があるような言い方をされていました。
 私がガルバリウム鋼板を使い始めた頃、ガルバリウム鋼板で屋根付きの自転車置き場のようなシェルターを作った事がありますが、その時、一台間違えて余分に作ってしまった事があります。
 板金屋さんは、それを何年も屋外の資材置場にしているのですが、いつまで経っても錆びないと驚いていました。
 これほど性能が良いのに、ガルバニウム鋼板の使用をやめるわけがありません。
 キュービクルの場合、お客様の要望はたいてい、鉄に塗装となります。但し塗装は設置場所の環境から一般的なメラミン塗装では無く、エポキシ塗装やウレタン塗装等、耐久性のある高級塗装となります。
 結局、キュービクルの板金代と塗装代は、同じ位かかってしまいます。
 であれば塗装の要らないガルバリウム鋼板を選択、も有りではないでしょうか。
 いずれ、モノコック構造で大型のキュービクルを製作する方法なども、発表したいと思っています。

 ステンレスではないのに、錆びない板金材料。
 組み立ては、溶接では無く、リベットで。
 曲げ加工を施せばフレームレス、またはモノコック構造だってできます。
 鉄のフレームが無ければ錆びる事もありません。
 しかも塗装等の表面処理要らず、しかも美しい。
 個人的には屋外で使用するなら、絶対これです。
 この夢の材料、あなただったら、どう使いますか?
 要はアイデア次第。

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