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金属のチューブ配管について

 チューブとパイプの違い、わかりますか?

 私自身、明確にわかっている訳では無いのですが、
 パイプというとJIS規格に載っている物を言うようです。
 例えば1/2” の管であれば、1/2Bまたは15Aとか言います。私の年齢がその域に達しているかも知れないと思うのですが、その私より、さらに上の年配の方は1/2Bの配管を4分 などと言います。
 もうサイズの対応表でも持っていないと、わからなくなってしまいそうです。

 チューブはBA管のように柔らかいチューブにその外径寸法に合ったチューブで、チューブの呼びがそのまま外径寸法になります。
 例えばSUS316の6mmのBA管と言った場合、外径寸法は6mmとなります。実際はあと内径か肉厚の指定も必要です。

 流す試料によって、色々な配管材料を選択する事になります。

 オーステナイト系のステンレスであるSUS316のBA管をよく使用しました。

 BA管と言われる材料は光輝焼鈍(こうきしょうどん)管とも言います。
 太さはφ6mm、φ1/4” 、φ3mm、φ1/8” の管をよく使いました。
 光輝焼鈍と言うだけあって、表面が美しく、柔らかく加工し易い管です。
 殆どは、この管で接続はチューブ継手(又は、くいこみ継手ともいいます。)を使いました。

 溶接を含む接続の時はVCRなどのメタルガスケット式の面シール継手を使用しました。
 その場合、SUS316ではなく、SUS316Lの管と継手の材料を使用しました。
 例え溶接で作るにしても、各バルブ等はメンテナンスが有る以上、外せる継手はどうしても必要となります。
 SUS316LのLは、ローカーボン(低炭素)のLで炭素量を少なくする事で溶接部分の耐腐食性を改善した製品です。

 サルファー(硫黄)の分析の時に使う配管は、配管にサルファーが吸着し易いという事が、よく問題になります。
 ガソリンや軽油、灯油などのサルファーだけでなく、ガス試料のサルファーの場合もサルファーの配管への吸着が問題になります。
 ガスの場合にはスチームで配管を温めて吸着を防ぐという事もありますが、燃料油の場合そうもいきません。
 その場合、よく使うのがSUS316のEP管です。BA管にさらに電解研磨を施した管でBA管に比べて、更にツルツルでピカピカです。
 表面を滑らかにする事により、サルファーの吸着を防ぐ事が出来るという事です。
 製品名は忘れてしまいましたが、BA管の表面にガラスコーティングした様な管でサルフィナートチューブだったと思うのですが目的は一緒で、このチューブで吸着を防ぐという事もよくやりました。

 超高圧としては、オートクレイブ社のバルブと継手があります。特殊な形をしていて、400MPa位まで対応可能なようです。
 さすがにここまで高圧となると、試料の入口部の止弁と減圧弁までの所しか使った事がありません。
 オートクレイブの配管は、BA管の配管のように、チューブを曲げながらの配管とは別物です。
チューブが細くて肉厚のロングニップルとソケット、エルボ等パイプ継手のような継手で構成していく感じです。
 よく使用する配管方法に比べて、特殊です。

 スチームは、φ6mm×φ4mmの鈍し銅チューブを使用しました。
 鈍してあるため、柔らかく加工し易い材料でした。
 スチームによる温調ボックスを作る時は、ボックス背面内側に断熱材を貼りその上にこの銅チューブを挟んだ塗装鉄板でボックス内を温調しました。

 上司が代わってから、銅チューブと鉄で電食を起こすとか塗装が熱に持たないとか銅チューブが下に傾いていなければ、スチームが流れないと主張しました。
 私がこの仕事を担当する何代も前から、やって来ている事なのに今更と思いましたが、取り敢えず出来ることとして銅チューブに下り勾配を設けて配置する設計に変更しました。
 塗装については、見えない場所であり例え変色とかあったとしても、長年の実績があるので、変更無しで進める事にしました。
 仕事を受注すると、先人の設計で近い物をアレンジするという事が基本であり、そういう製品の根幹にかかわる事は、研究、開発の方でやって頂きたい所です。
 電食については、異種金属の無い部品を選ぶとなると、設計するシステムに使われる部品、全てが当てはまり設計不可となるため、このまま進める事にしました。
 他の部署では、普通に使用している部品であり問題にしていない事なので、さすがに開発畑におられた方で他の部署がどうしてようが我が道をいく、という感じなのかな、と思いました。
 今、思うと前の上司は、相談すると納期の有る事であり仕事の手を止めてはいけないという観点から直ぐに次の方針が出てきましたが、二代目の上司は、この点の配慮をしていただけないという感じでした。
 銅チューブの使い方は「スチームを利用する」の中で説明しているので、そちらを見て下さい。

 スチームの凝縮水の扱いについて以前、大型のアナライザハウスを受注した時の話しなのですが。
 お客様であるエンジニアリング会社の方でスチームトラップを出た凝縮水をアナライザハウスより上に持っていく配管をされていたという事がありました。

 さすがにこのアナライザハウスの時は、前の上司の時だったのですが工場の定修の時、凝縮水が逆流しては困ると思い上司と相談してスチームトラップのあとに、スチーム用の逆止弁を入れました。
 スチームに関しては、大型のプラントを受注されているエンジニアリング会社の方が遥かに経験豊富なので、そちらのやり方を参考にした方が良いと思うのですが。

 BA管を二重配管にして、内管に試料、外管にスチームを流すという事もありました。確か、HOKEやSwagelok社の継手のカタログにも例として載せていて、このやり方のコネクタ等も用意されています。
 この時は、1/8“と8mmのチューブで作りましたが、配管の曲げ加工するのが大変だったと言ってました。

 更に特殊な所でハステロイC276とかハステロイC22を使用した事が二度だけあります。
 ハステロイは、ニッケル中心の耐食性の優れた合金で、SUS316に比べて更に耐食性を求めた材料という事です。
 チューブやチューブ継手、それにチューブ継手を販売するHOKEやSwagelokからは、バルブ等手に入りましたが、それ以外の物は、ハステロイの加工の得意な加工屋さんに加工してもらいました。
 その加工屋さんが言う事には、何でも見本を持って来てくれば、その通りの物をハステロイで作ってみせます、と何とも頼もしい話しでした。
 実際の所、ハステロイ位、特殊になると部品が揃いにくいです。何でも作って用意してもらえるというのは、ありがたいかも知れません。逆にそういう加工屋さんを見付けておかないと、大変かも知れません。
 取り留めなく、金属チューブについて書いてみると、以外に種類の多さに驚きます。
 今回は、何となく書いてみました。


パイプの呼び方

A呼称 B呼称   俗称     外径D[mm]
 6         1/8          1分    10.5
 8   1/4          2分    13.8
10   3/8          3分    17.3
15   1/2          4分    21.7
20   3/4          6分    27.2

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