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樹脂配管 2

 数年に一回程度、テフロン部品のみでシステムを組む、という仕事を受注する事があります。
 基本的にテフロンと言っても、テフロンの仲間のフッ素樹脂、ガラスは、使用出来るという事ではありますが。
 その場合、テフロン仕様の止弁、ニードルバルブ、フィルタ、減圧弁、流量計、圧力計、エアー弁、ポンプ 等を選択する事になると思います。
 今回はそんな、フッ素樹脂によるシステムについて考えてみたいと思います。
フッ素樹脂仕様のバルブ等をメーカ等のカタログを調べてみると、たいてい水を中心に考えられた部品、つまり液体に最適になっている事が多い、という事を感じられます。
 しかも、温度的には60℃までのような低い温度が多いようです。しかし100℃位までは何とか使いたいという要求が多いため、頭の痛い所です。カタログをみると流体温度が高めになっていても、環境温度として低い場合が多いようです。
 試料のガスからドレンを出さないように、温調ボックスで温度を下げないようにするという要求が多いのだから、その場合、環境温度も流体温度も高くなければいけません。

止弁
 サーパス工業のプラグバルブは耐熱温度的には60℃位だったと思います。フロウエルの4600シリーズが100℃までだったと思います。

フィルタ
 基本、自作しか有りませんでした。フィルタケースは小型の場合、フッ素樹脂材料であるPvdfを切削加工して作りました。大型の場合、ガラスのNWフランジを使用した形でガラス加工屋さんにケースを作ってもらい、蓋とフィルタの固定部をPvdfで製作、フィルタ本体はボルストンフィルタとなります。
 ボルストンフィルタはフッ素樹脂のPvdfとガラスでできていて、耐熱温度は148℃と、大変頼もしいかぎりです。但し、ガラスと蓋を固定するフランジ用のテフロンOリングとクランプは100℃なので、全体としての耐熱温度は100℃となります。

ニードルバルブ
 これは、基本フロウエルの4600シリーズのニードルタイプ、しかもCv値の一番小さいタイプ、一択でした。他の物を選んでも水用なのでCv値が大きすぎて、コントロールが効かないためです。ガスの場合これしか有りませんでした。

減圧弁
 一度だけ、サーパス工業の物を使用した事があります。液用なので、うまくいくか心配でした。うまくいった時はホッとしました。
 後に、ヘンミ計算尺さんが自社で開発された減圧弁を紹介していただいた事があるのですが、私が現役でこの仕事をしている間、減圧弁を必要とする仕事を受注しなかった為、とうとう使う機会はありませんでした。

流量計
 東京計装のP-710パージメータ、流体温度70℃まで対応しています。バルブ付きでしたら、ニードルバルブが付くので便利です。

圧力計
 長野計器にテフロン製の圧力計があります。
 サーパス工業にも有りますが、確か0.3MPa(G)からです。
長野計器は0.1MPa(G)からあったと思います。
最初、長野計器の0.1MPa(G)の圧力計をみつけられなかった為、取り敢えず0.3MPa(G)を使用したら、案の定、圧力計の針が殆ど振れなかった事が有ります。
 圧力計は使用温度範囲が狭いのが普通です。これは圧力の変化によって、ブルドン管やベローズの伸び縮みを利用しているわけだから、これに温度の要素が加わると、誤差が出てしまうためです。そのため、温度の高い温調ボックスに収めるシステムの場合、圧力計のみボックスの外に出す事になります。

エアー弁
サーパス工業のエアーオペレートバルブを使用しましたが、温調ボックスに使用の時、使用温度が足りない事が一度有り他社のエアー弁に代えた事が有ります。確か、コガネイだったと思うのですが、忘れてしまいました。

ポンプ
 カタログは無いのですが、PFA製のアスピレータを使った事があります。
 配管の接続部は確か、NPT1/4 だったと思います。計装空気で駆動させました。
 材質はPFAでネジ接続という事から、耐熱温度は100℃位と判断できます。
 HOKE社の製品を扱かわれているテクメイションさんから、購入しました。
 テクメイションさんは相談すると、一生懸命探してくれます。
 最後に使用してから、まだ何個か残っているよ、と教えてもらったのですが、退職するまでの間にアスピレータを必要とする仕事の受注が無かったので使い切れていません。
 わるかったなぁと思っています。

 オールテフロンの仕事で一番厳しかった仕事は、二代目の上司がエンジニアリングをおこなった仕事で、温調ボックスの温度が80℃という物でした。
 ボックス内に入れるのは止弁とフィルタのみでしたが、ドレンを発生させないため、この温度を選んでいるという事です。
 この時の温調は2Kスチームを使用しました。何を思ったか上司は、いい加減設計が終わった頃、10Kの中圧のスチームを要求しました。もし要求が通りそうだったら、テフロン部品が壊れるので無理だと言うつもりでしたが、通らなかったのでホットしました。
 私にとって、この上司は技術的なことで何か相談すると、何倍返しで帰ってきて、開発をしているわけでは無いのに、やらなければいけない事がやたらと増やされるタイプの人でした。前の上司は、仕事量を意識し相談しながらの対応という感じでした。
 私の上司になる前は開発部隊の責任者だったようですので、開発にいた時の感覚から抜け出せないのだと思いました。上司の以前の部署にいた時の部下だった人達は、大変だったろうなと思いました。
 この設計で組立図を完成させて、部品のバラシを他の方にお願いしました。
ここでも、問題が有りました。この時の配管は10mmのPFAチューブでした。この位の太いPFAチューブとなるとチューブの曲げ半径もかなり大きくなります。
 バラシ図面を受け取って驚いたのですが温調ボックスの部品配置が美しくなっていました。当然、PFAチューブの曲り半径を考慮していないためです。どうも上司が指示したようで、バラした部品の発注するまでの時間が無いため、必死に直しました。

設計のポイント
 この話しの中に、テフロンチューブの配管設計のポイントが有ります。
 テフロンチューブの曲げ半径はかなり大きいという事です。
 テフロンチューブは熱を加えて曲げるという事も考えられますが、温調ボックスで、温度が高い場合は特に気を付ける必要があります。
 それは、チューブを接続するコネクタ側にも考慮する必要が有るという事です。
 もしチューブにストレスを与える配管をしてしまうと、そのストレスはチューブを受けるコネクタ側に掛かってしまいます。
 テフロンの軟化温度は100℃以下、たぶん80℃位かも知れません。そうすると、チューブを受けるコネクタを壊す事になります。

 温度的に限界の所で使用する場合、各テフロン部品にストレスが掛からないようにという事が絶対条件です。
 温度が室内などの常温の良い環境であっても、基本的にストレスを与えないのがベストです。

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