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『鱗羽の天使』(AwSW)制作者だけど質問ある? AMA 2021/5/14 一部翻訳

2021年4月末、コンソール版『Angels with Scaly Wings』(※日本語非対応)が主要コンソールゲーム機向けにリリースされました。これを記念して、海外の巨大掲示板RedditでAsk Me Anything、有名人やクリエイターなどが掲示板に登場してユーザーからの質問に答えるイベントが実施され、AwSW制作者であるM. B. Saunders氏が寄せられた様々な質問に答えました。(中には日本から寄せられた質問も!)

その中から、筆者の独断で興味深いと思った質問と回答をピックアップして日本語に翻訳してみました。なお、本編に関するネタバレ全開ですので、未クリア、未プレイの方は引き返すことをお勧めします。

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<『鱗羽』の話>

Q. 『鱗羽』を作ろうと思い立った理由は?

A. これだ!っていう理由を一つに絞るのは難しいんだけど、創作意欲と形にしたいストーリーのアイディアがたくさんあったんだ。それらをすべて突っ込んだ結果、出来上がっていたのが『鱗羽』だね。

Q. ケモナーによるケモナーのためのゲームなの?

A. ケモナー向けに特化して作ったつもりはないんだ。もちろんケモナーの人たちにも気に入ってもらえるかもとは思っていたけどね。実はイラストを描いているアーティストもケモナーじゃないんだ。

Q. ドラゴンとキスしようなんて天才的なアイディアはどこから来たの?

A. ドラゴンは魅力的だから、これに尽きる。

Q. 『鱗羽』を作るのにあたってインスパイアされた作品はある?

A. 特に強く影響を受けた作品は『ZERO ESCAPE』と『はーとふる彼氏』だと思うよ!

Q. 観ておいた方がいい映画やドラマ、遊んでおいた方がいいゲームはある?

A. 何か一つおすすめするとしたら『恐竜家族』かな。アディーンが好きな番組の元ネタだからね。

Q. 制作者は英語のネイティブスピーカーじゃないって本当?すごい!僕も英語ネイティブじゃないんだけど、言語が壁になってうまく文字に起こせないことがあるんだ。何かアドバイスはある?

A. うん。英語は第一言語じゃないよ。近道があるとしたら、その言語で描かれた様々なメディアにどっぷりと漬かることかな。そうすると言語が持つニュアンスを自然と体得できると思う。

Q. 書いていて特に楽しかったシナリオは?

A. やっぱり登場人物たちが楽しんでいる様子や掛け合いは書いていても楽しかったかな。ブライスはまさにそういうキャラクターだったから、彼の2~3回目のイベントとBBQは間違いなく書いていて楽しかったね。

Q. シナリオを書くうえで一番苦労したキャラクターは?

A. うーん、イズミとエメラが一番大変だったかも。

Q. 過去に戻れたら書き直したい部分はある?

A. あの当時の僕が持てるものは全てぶつけたつもりだから、後悔はないんだ。学んだことは次回作で活かしていくつもりだよ。

Q. 鬱要素が多めな理由はある?このゲームは好きだけど辛すぎて手が伸びない時もある。

A. 正直、開発中も自問自答したよ。こういう悲劇的な要素は多くの作品でオブラートに包まれていることが多いと思うんだけど、最終的にはそういう要素を包み隠さず、当時PTSDで苦しんでいた自分の体験を通じて表現してみようと思ったんだ。

Q. ストーリーの核心に迫る質問なんだけど、イズミは主人公がポータルを通るたびに彼を殺していたの?それともたまに?主人公に過去の記憶が断片的にしかないのは殺されてしまった時系列の話だから?

A. ポータルを通るたびに主人公はその時系列上に二人存在してしまうから、イズミは毎回、一方を殺していたんだよ。・・・でも、果たして"どっち"を殺していたんだろうね?

記憶が失われてしまうのはポータルを通った影響だけど、時系列が複製されればされるほど、パラレルワールドの記憶が時空の"壁"をすり抜けるという二次的な影響もある。ロレムのバッドエンドではポータルを通らないのにその記憶が主人公に残っているのはそういうことだね。

Q. アンナのグッドエンディングが全然グッド感ないんだけど…その理由は?

A. あまりにも型にはまってしまうと予定調和な物語になってしまうので、少し変わったエンディングを用意したかった、というのが一つ。それから、『鱗羽』初期のデモ版ではアンナがダントツで人気のないキャラクターだったんだ。だから彼女のストーリーを掘り下げた上で、それでもプレイヤーの反応は変わらないのかどうか問いかけてみたかった、というのがもう一つの理由だね。

Q. 両性具有のキャラクター、ロレムを描いてくれてありがとう。過去にいじめを受けた経験のあるLGBTQ+の一人として、すごく刺さるストーリーだった。ロレムについてもう少し制作の過程を教えてもらえる?

A. ロレムはGoldkin氏(※)が作ったキャラクターなんだ。当時、氏が公開していた短いコミックの中でロレムとイプサムは既に誕生していたから、僕はそれを元にストーリーやシーンを構成して『鱗羽』に登場させたんだよ。最初、『鱗羽』のメインキャラクターは8人にする構想だったんだけど、各キャラクターに深みを持たせつつこの人数を登場させるのは困難だと気付いたんだ。最終的には4人に絞ることにしたんだけど、他のビジュアルノベルゲームとは違ってメインキャラクターの性別が男女どちらかに統一されていないので、もともとキャラクターに盛り込みたかった全ての要素を4人で再現するのは難しかったんだ。その点、5人目のキャラクターであるロレムは他の4人と大きく異なっていたので、そういう要素を盛り込むことができてすごくよかったと思ってるよ。

※ : Goldkin氏はAwSWがクラウドファンディングで資金を募った際、最高額出資枠である"スポンサー"枠で入札した人物でもあります。スポンサーにはゲームのメインキャラクターをデザインし、登場させる権利が与えられました。

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<今後の話>

Q. 次回作の予定はある?

A. うん。かなり前から新作ビジュアルノベルに取り組んでいるよ。詳細についてはまだ明かせない。『鱗羽』と関連しているかどうかについてもね。新作の完成には当初想定していた以上に時間が掛かりそうだから、同時進行しているAwBHが新作を待つ時間を紛らわせてくれたらと願っているよ。

Q. 日本語を追加してくれてありがとう!コンソール版に日本語を追加する予定はある?

A. パブリッシャー次第(※)かな。日本語翻訳にはかなり時間が掛かったので、同時に進んでいたコンソール版との間に差分が生じてしまったんだ。まずは差分の調査から進める必要があるだろうね。

※コンソール版の移植・販売を担当しているのはRatalaika GamesというAwSWや続編を開発しているチームとは別の会社です。

Q. 追加言語に日本語を選んだ理由は?

A. ビジュアルノベルはすごく日本的なジャンルだから、日本語を追加することで、そのプレイヤー層に『鱗羽』がどう受け入れられるのかを見ることは大きな目標の一つだったんだ。

Q. ロレムとイプサムはAwBHに登場しないの?

A. ロレムとイプサムが登場する2つの章のネームを既に書き下ろしてあるよ。AwBHのPatreonがこの調子で進んで、実現出来たら最高だね。

Q. またぬいぐるみを出す予定はある?グッズは増える?

A. いずれまた出したいと思っているんだけど、直近での予定はないんだ。僕たちのような小さな開発者にとって、ぬいぐるみを作るのはすごく大変なことなんだよね。でも、今年中に他の新しいグッズの展開を予定しているよ。

Q. パッケージ版を出す予定はある?

A. 実現可能かどうか分からないけど、出せたらいいよね。

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オリジナルのサブミ(スレッド的なもの)はこちら

クラウドファンディングのスポンサー枠ということもあってAwBHへの登場が危ぶまれていたロレムとイプサムですが、何と既に二人が登場する2章分のネームは完成していることが判明。あとはPatreonの支援が続けば無事に二人の章が見られる、かもしれません。

コンソール版には残念ながら日本語が含まれていませんでしたが、日本語版の翻訳が長期化していたため、並行で開発が進んでいたコンソール版の内容との間にズレが生じてしまったようです。将来的にアップデートで追加されると嬉しいですが・・・

アディーンが見ていたテレビ番組の元ネタは『恐竜家族』(原題:Dinosaurs)だったんですね。確かに言われてみれば着ぐるみのシットコムと言えば『恐竜家族』は超定番。番組名『Humans』はこれに掛けてたんですね。AwBHの翻訳も『人間家族』にするべきだったかも。

訳:Luptas