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土と土が出会うところ

なんて美しい文章だろう。キラキラ光る水面を掬い上げるような繊細さで、読んでいるうちに自分も澄んでくるような言葉たち。

エッセイのようで、物語のような、ふわり心地良い浮遊感。

あ、私が今ふわふわと柔らかいのは、「住まう場所ということに限らず生活そのものをいちからやり直す、もしくは見直すという根っこをいじっているその途上」だからなんだ。

著書である町田泰彦さんとは、昨年末、美濃市滞在中に、服部福太郎さん、服部みれいさんを通じて知り合った。

文章や映像作品を発表しながら、建築や森林についての活動もするという町田さんと、その時は主に建築や森についての、どこまでも現実的な話題が中心だったけれど、なるほどこの繊細で美しい世界を持っていたとは。パズルがピタリと嵌ったような、町田さんという人の輪郭が、私の中で鮮明になった感じがする。

読んでいて、「心象スケッチ」という宮沢賢治の言葉を思い出した。心象とは、宇宙や無限の時間につながるものであり、人間の心象を描くということは、個人的なものを超えて普遍的なものをスケッチすることだと賢治は考えていた。

その場にいないのに、なぜか知っているように響くのは、町田さんの心象風景が、そこに描かれているからかもしれない。

定住、移住、旅。
人は何を求めて移動したり、暮らしの場を探し、決めるのだろう。

この数年、私が探していた根を下ろす場所は、自分でも思いがけない場所だった。まさに、この本のタイトルどおりに、土と出会ったとしか、言いようがない。


装丁が素敵だから、眺めていたのを、風邪で寝込んだおかげで読むことができた。これも風邪の効用かもしれない。

今このタイミングで、読むことが出来て、本当に良かった。

ありがとう、まっちー


土と土が出会うところ
町田泰彦
@yasuhiko_machida
shushulinapublishing
@shushulinapublishing

短編7篇、町田さんご自身による写真と絵も掲載。

出版は、写真家・東野翠れんさんが立ち上げた出版レーベル「shushulina publishing」より。


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