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脳の多様性を尊重して働く

直属の上司と同じ案件を担当することになり、約2ヶ月が経過しようとしている。
彼女(Kと呼ぶ)のレポートラインに配置されてから半年以上が経つが、それより前から割り振られていた業務が他のディレクター達にレポートする案件であったため、私とKが一つの案件を一緒に進めるのは、ほぼ初めてということになる。

K本人がオープンに話しており、また周囲の人々も認識しているのだが、彼女はニューロダイバージェントの特性を持つ上司だ。

人口の大半を占めると考えられている脳の情報処理方式を持つ人をニューロティピカルと呼びますが、これとは異なる方法で情報を処理する脳を持つ人のことをニューロダイバージェントと言います。

/LEAD by Indeed 2023年07月04日 記事より

これまでも様々な場面、こと職場に関して言えば同僚や取引先担当者と仕事をする中で、ニューロダイバージェントかな、という印象を受ける人々と出会うことがあった。
私自身は多少のはみ出し特性はあれど、ニューロティピカルの方かなと認識している。
仕事の進め方やコミュニケーションの方法で違いが出るとき、思考プロセスや判断の傾向を探り、なるべく相手に合わせてみたり、やり方を変えてみたり試行錯誤する。うまくいくこともあれば、いかないこともあった。

そんな過去の経験や会話を思い出しながら、Kとの直近のチームワークのことを振り返ると、「簡単ではないが、違いがありすぎて面白い」という印象だろうか。
そもそもお互いに教育・文化背景も価値観も成功体験も異なるし、私の方は思考と直結していない第二言語でのアウトプットになり、本来言いたいこととのズレが生じる。
足並みは簡単には揃わないし、目線合わせも容易にはいかない。これはKとの協働に限らず、グローバルな職場では常に起こることだとは思うが。

そして面白いほどに、Kと私は仕事の進め方や判断が、逆の方向に行きがちである。具体例を挙げると、下記のようなものである。

  • ある案件のメイン担当者を決める際
    <私> サブ担当者として同類案件の実績があるメンバー(ステークホルダーのやり方を知っており、ステップアップにもなる)を推薦
    <K> 同規模案件の実績があるメンバー(ステークホルダーや過去のやり方は知らないが、規模を任せられる)をアサイン

  • ある案件で、過去の事例一覧をもとに、プランの検討依頼をする際
    <私> ステークホルダーが2週間の休暇に入ってしまっているのにアクション依頼をしても埋もれるだけなので、休暇明けのメールボックス上部に届くように送信を保留
    <K> たとえ相手から求められていなくても、プロアクティブさをアピールすることが重要。休暇中だろうともメールを見る人は見るので今すぐ送信するべきと説明

  • ある外部施設での会議室を契約する際
    <私> 他の会議室と同じフロアに位置し、設備的にもコスト的にも特段の問題がない部屋を提案
    <K> 別フロアに位置し、誰かの宿泊部屋の一部会議スペースを利用することになるが、コストセーブにつながる部屋を選択

私側にも、K側にも、それぞれの根拠と理由がある。最終的には、立場的に上司であるKの判断が採用されることが多いのだが、私の中で腹落ちさせるまでに時間がかかることがある(納得しがたい場合は、考えることをやめてただ受け入れる)。

違いは、以下のような場面でも見られる。どちらが良い、悪いということはない。

  • コミュニケーションの速さと質:
    <私> 質問や依頼をする前に、ファクトサーチしてから文章化する。重めの内容はメールで、軽めはチャットで、チャネルを使い分け相手の時間に合わせ、往復が最小限になるように箇条書きにしてまとめる。
    <K> 思いついたら忘れる前にチャットで即連絡する。相手がプレゼン中・休暇中にかかわらず、とくにかく投げておく。まとまった会話より、五月雨式に思考プロセスをシェアする速さが大事。

  • 会議の進め方:
    <私> 会議時間内でゴールに到達したい。議論内容はあらかじめカテゴライズしておき、優先度の高いものから焦点が当てられるようにアジェンダを並べ、事前に送信しておくか、会議中に画面や資料を見せながら進める。
    <K> 議題や課題はすべて自分の頭の中にあり、次々に浮かび出てくるので、その順番で吐き出し、時間にとらわれず出席者と柔軟に問答したい。視覚情報が追加されると、その処理に脳のリソースが割かれるので、口頭での議論が望ましい。

エピソードは他にも事欠かない。
これからも「あっ、そうくるか!」と思わせてくれる出来事がたくさんありそう。新たな視点や選択肢をもたらしてくれる機会として、尊重を忘れずに楽しんでみようと思う。


文末になってしまったが、そんなことを考えてみたのも、昨年で更新がストップしていた伊藤穰一氏のポッドキャストJoi Ito's PODCASTがリニューアルスタートしていたことに気付いたから。
ニューロダイバーシティについてのエピソードの中でも、Joiさんの妹さんが出演していた回は特に興味深く聴いたことを思い出した。

今年4月に出版されたばかりの本「普通をずらして生きるーニューロダイバーシティ入門」も良かった。



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