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失敗人生復活させる星読み師〜生まれる場所を間違えた二人〜

 どんな願いも叶える『スタープレート』〜国造りの野望を遂げてゆく、少年ソールの星瞬く冒険旅行

【あらすじ】

『スタープレート』
 ある出来事が起きた日時で作成される、特殊な星読み図。
 その図に現れた太陽〜土星に該当する人間を全員味方にすると、そのプレートに関する願いが叶う。

 その一家の秘伝に基づき、宮廷占星術師の息子13歳のソールは、王宮に乗り込み『太陽』を表す国王を味方につけた。
 近衛隊長の息子(本当は女子)のリュンと、星運命図完成の旅をすることに。

 ソールの望みは、人生を失敗しても誰もが生きていける国になることだった。

 各天体を表す人物をソールが仲間にしていった結果、役立つ能力を持った人材が自然と集まっていた。

 彼らと共に、ソールは国の変革に取り組んでいく。


第一話

「この王である私の懐に飛び込んでくるとは、面白い」
 ソールは、広間で王の前に跪いていた。

「で、そなたの願いを叶える星読図の、太陽にあたるポジションが私だと?」
 国王は、ソールをじろりと見下ろした。側で近衛隊長の槍の先が、銀色に光っている。

「はい。太陽が百獣の王である獅子座に、更にこの世界の天頂を表す位置にあり、国王様の事としか」
「そなたは13歳の子供、協力しても私に何の得もないが」
「それは……!」
「宮廷占星術師の息子だから会ってやったが、星読の腕はボンクラで、剣ばかりふるってると聞いたが?」
「その……」
「ゲール隊長」
「は」
王から何かを耳打ちされた近衛隊長は、青ざめた。


「大変なことになったな」
 半刻後、ソールは鎧と剣を身に着けて、王宮隣のコロッセオ東口にいた。
「私を味方にしたかったら、私を楽しませてみろ!」
 二階の特等席から王が高笑いをする。

 近衛隊長は英雄戦士、その息子と闘う事になるなんて…
 ソールの手の平に汗がにじむ。

 その時、コロッセオ西口から一人の少年が歩いてきた。
「ん?」
 随分細身だった。
 まあ、こんな見た目でも油断出来ない。近衛隊長の息子なのだ。
 ソールはぐっと剣を握りしめる。

 審判の合図。ソールは先手を取って剣を振り下ろした。しかし眼の前の少年は受け身一方で、全く反撃が出来ない。

 なんだ、こいつ!

 弱えぇ!!!!!!
 
 少年の剣をソールの剣が弾き飛ばした。審判が勝ちを宣言する。

「私は、弓などの遠隔攻撃が得意なんだ」
 目の前の少年は右腕を押さえながら、ソールをにらんだ。
「なんだよその言い訳!あの近衛隊長の息子で恥ずかしくないのかよ!」
「キミこそ、宮廷星読一家の落ちこぼれだよな」
「おまえ、自分だって落ちこぼれだろ!」

 二階から、国王の笑い声が響いた。
「一家の落ちこぼれどうしの喧嘩、実に面白い。闘いはつまらなかったが、いいものが見れた」
 ソールは苦笑した。

「数振りだが太刀筋が良かったぞ、ソール。気に入った」
「!」
「そなたの【太陽】になってやろう。旅先で困ったことがあれば、伝令を寄こせ」
「ありがとうございます!!」
ソールはコロッセオに跪いた。
これで星読図の太陽、埋まった…

「あと、路銀と護衛をという事だったな」
 近衛隊長がソールに袋を手渡した。ずっしり金銀が入っている。

「護衛はと」
 王は座席に座ったまま、にやっと笑った。
「そこの近衛隊長の長男、でいいな?」
「ええっ!?」
ソールと隣にいる少年は、同時に声をあげた。



第二話

「王のご命令だ。従わないわけにいかないからな」
 宮廷占星術師の落ちこぼれ息子ソールは、近衛隊長の非力な息子リュンと、旅に出る羽目になった。
「フン。お互い様だよ」
 同い年の少年13歳のリュンは、ソールより大人びた横顔でそっぽを向いた。
「こんな無鉄砲バカのお守りとか、損な役回りだ」
「マッチ棒が何言ってんだ。護衛が欲しかったのに、これじゃオレがお前のお守りみたいなもんだろ!」
 出会ったその日、王宮の外でケンカしながらそのまま二人は別れた。

 それでも出発当日、ゲール家に迎えに行ったソールの前に、リュンは真剣な顔で門を出てきた。その背中には弓を背負っている。
 もちろんソールも、腰に剣を下げていたが。

「星の示す人間を味方にすると、星運命図が加速するなどという話、私は聞いた事もないが」
 夏の石畳を歩きながら、リュンが言った。
「スタープレートって言って、我が家に伝わる秘伝なんだ」
 ソールは色々と説明した。

「へえ、さすがエストレーラ家。そんな秘伝が。で、他人の私に話して良かったのか?」
「ご先祖達もほぼ挫折してる。出会う運、も持ってないといけないからな」
 なるほど、とリュンはうなずいた。
「で、キミのスタープレートの願いって何?」
「まあ、そうだなぁ、人が人生の選び方を失敗してもやりなおせる、そんな国になったらなって!」
 リュンは目を見開く。
「うわー、もっとバカっぽい願いかと思ったよ」
「お前、ほんと口悪いな!」
「なんでまた、そんな壮大な願いを?」
「……!」
 ソールの顔を見たリュンは、目をそらした。
「まあ、言いたくないなら、別に」
「……」

 途中木陰で休憩しながら、ソールが解釈を書き込みしたスタープレートの巻物を見、リュンは驚きの読解をしはじめた。
「キミの解釈文ひどいな。5室で魚座の月が、漁師の子供、とかいう星読みに、なぜなるんだ?」
 ソールは草の上にあぐらをかきながら、金髪を掻いた。
「なぜと言われてもなぁ」
 実際、ソールは出たとこ勝負で捜すつもりでいた。運だけは自信があったからだ。
「魚座で華やかな5室は芸術芸能タイプかもしれない。太陽の国王のいるのが10室ならば、10室のおおむね反対にある5室はこの国から北方向で、かつ海辺に該当の相手がいる、と私は読む」
 立て板に水で星読をするリュン。
「ただ、金星の暗示のほうが、月の暗示より前に辿り着くと思うよ」
 リュンはそう言った。母親みたいな人、という書き込みをちらと見ながらリュンはプレートを眺める。
「蟹座は母性もあるけど、星がある9室は外国そのものだ、もっと異国情緒ある華やかな印象の人かも」
「……」
「我が国王のいる10室から近い9室にいるのだから、元々遠方の女性が隣国あたりに来てるのかな【金星】さんは」
「リュンお前、なんでそんな星読できるんだ?」
「私は魔術や占星術が好きで、独学だ」
「自分で!」

 なんで同い年で、こんな優れた読み手が?
 自分がこのくらい星が読めたなら、あの時……

 ソールは思わず腕を組んで、押し黙った。


 隣国まで数時間、ソールとリュンは船に乗ることにした。快晴の空、紺碧の海。

 二人は甲板に座った。
 リュンの黒髪が、海風に吹かれている。涼し気な顔立ち。鍛えられた身と明るい顔のソールとは、正反対だった。

「しかしお前そんな華奢で、長旅大丈夫なのか?」
「……!」
 ソールがからかうと、リュンの目が吊り上がった。
そして背中の荷物から、弓矢を引き出した。座ったまま素速く矢を放つ。空飛ぶカモメが一羽、海に落ちた。
「おおっ!」
 ソールと甲板にいた乗客たちがどよめいた。
「弓が得意なのはホントだったのか!」
「……ムダな殺生をしてしまったな」
 ソールの興奮とは裏腹に、苦い顔でリュンは弓をしまった。

 こいつ、ほんと戦士に向いてないな。

 ソールは甲板から立ち上がった。

 船が海を切り裂く波の向こうに見えはじめている、隣の国。

 生まれる家を間違えた二人、か。オレらは。

 ふと気づくと、リュンも立ち上がってソールの隣りで海を見ていた。

 こいつの星読み能力は、オレに授けられた大幸運だ。
 きっとスタープレートの旅に、祝福されている。

 港に船が到着した。

 さあて【金星】を味方に出来るかな。この見知らぬ大地で。





第三話

 隣国に着いた日の夜、ソールとリュンは、目指す宿屋に向かう道に迷っていた。

 石畳を歩く二人の目の前に、突然女性が走ってきた。
 金髪がたてがみのように吹かれ、派手なドレスにはラメが光っている。その顔は蒼白していた。
 女性はソールの腰に付けた剣をちらっと見て、叫んだ。
「ちょっと! 助けてあんたたち!」
「えっ?」
「な、何急に!」

 そのとき遠くから男が一人、走ってきた。粘着質な目つきをしているのが、遠くからでもわかる。

「あいつか!?」
 ソールは女性を見た。彼女はうなずく。
「あいつよ!」
「なんなんですか!? ストーカー?」
 リュンの言葉に、彼女は何度もうなずいた。
「そうよ!」

 ソールは剣を抜き、リュンは弓をかまえた。月明かりが二人を照らし、剣と弓が光り輝いた。

 ソールたちの姿をものともせず、その女性目がけて男が走ってくる。リュンの放った矢は空を切り、男の足元に着地した。

「わっ!」
 男は矢を避けようと転んだ。

「それ以上このひとに近づくな! 近づいたら」
 ソールは剣を一振りし、地に這いつくばった男の目の前に刃の切っ先を向けた。 
 丸腰の弱そうなその男の顔は、固まった。

「逃げて!」
 ソールは女性に叫んだ。
「後ろからついてきて二人とも!」
「わかりました! 先に走って!」
 女性を逃がしながら、背後を守りつつ二人も走った。

「いやー助かったわー」
 その女性は、絹のハンカチで汗をふいた。
「あいつこの国に巡業にくると必ず出没してきてさ」
 その女性は、母性的な頬に美しい目鼻をしている。
二十代後半といった雰囲気だった。

 ソールとリュンはそのひとと共に、べらぼうに高そうな宿のロビーにいた。
「護衛のヤツが私とはぐれちゃってね。あんな阿呆はクビだわ」
「あのう……あなたは一体?」
「ああ、わたし舞台女優のエミリー・ハートフォード。いろんな国を演劇でまわってるよ」
「あなたが!」
ソールとリュンは同時に声をあげた。
「そういえば、劇場ポスターの絵と同じだ!」
「うわー、本物」

 エミリーは、はっとした顔になった。
「そうだ!あんたたちは役立つ、わたしがこの国にいる間、護衛になってよ」
「えっ!」
「護衛」
 ソールとリュンは、顔を見合わせた。そして無言で、通じあう。

 このひとだな、【金星】は。


 次の日からソールとリュンは、波乱の金星護衛に奔走することになる。



第三話以降

 ソールとリュンは国をまたぎながら、月から土星までの暗示が表す相手(天体望遠鏡がないため天王星以降未発見)を、発想と情熱で探し出し、時に運命的に出会い、次々と味方にしていく。

 ソールのスタープレートは、【星読みのアドバイスを間違え、親友を事故で寝たきりにしてしまった事件の日時】で作成されていた。

 保険、発明、医学、薬草の栽培、それらを舞台女優や作家が宣伝、法整備への王の許可、等、七天体の仲間達と連携し、片腕のリュンと共に、自分の親友や選択を間違えた人生が救われる国造りをソールは進めていく。





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