GIFT 現地レポと感想

 2023年2月26日、行ってまいりました。
「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 GIFT @Tokyo Dome」
 羽生結弦さんの単独東京ドーム公演、この伝説的なショーに運よく現地参戦することができました。
 普段ならTwitterで頭悪い感想ぶちまけて終わるんですが、この「GIFT」はそれだけで済ませてはならないものだと感じたので(あとこのままどこかに吐き出さないとGIFT廃人として永遠にこの公演に心を囚われたままになってしまう気がして)、現地で感じたことやDisney+で鬼リピして考えたことなどをつらつら書いてみようと思います。

~開演まで

 私は2012ワールドのロミジュリで沼落ちしたいわゆる「ニース落ち」なんですが、いや~こんなに長く彼のことを追い続けていたのに彼の偉大さをまだわかっていなかった。

 ……チケット、まじで取れなかった。

 正直東京ドームでの公演が発表されたとき、いくらなんでもチケットは確保できるだろうと思っていました。それどころか収容人数どう考えても多いんだしと強気でSS席に申し込んだりしてました。「いや東京ドームはさすがにいけるっしょ!」と余裕ぶっこいていたわけです。
 ですがそこからは毎週落選、落選。一回のショーでこんなに落ちることあんのかというくらいひたすらに落選。東京ドームですら落選しまくる推しSUGEEEEE!!なんて誇らしい気持ちもありつつ、心はべっきべきに折れていました。
 結局チケットがご用意されたのは争奪戦の終盤も終盤、一般発売においてでした。ちなみに席は注釈付きA席。
 余裕ぶっこいていたもう一つの証左として、普段フィギュアは一人で見に行くのですが、今回はよくサッカーを一緒に観戦する友人も誘っていました。「おっしゃ羽生結弦の東京ドーム公演いくか!」とさも行けるかのように颯爽と誘っていましたからね、落選報告ばかりする私のこと、どう思ってたんでしょう。チケットがご用意されて一番ほっとしていたのは友人かもしれない。

 そんなこんなで当日を無事迎え、落選ショックで買いそびれたグッズも購入し、いざ入場。ゲート番号で三塁側らへんだな~というのはわかっていたんですが、当日まで座席がわからないのはそわそわしましたね。
 シンクロライトを使う公演は初めてだったのですが、座席発券と合わせて機械でシンクロライトに情報読み込ませて渡してくれるんですね。それを見ているだけで新鮮な気持ち。あとてっきりサイリウムみたいなものをぶん回すと思っていたのですが、そうじゃなく手首巻き付け式だったのも意外でした。これなら両手空くから拍手とかし放題だもんね、とてもよい。
 
 万里の長城みたいになっているトイレ待機列をかき分けながらいよいよ会場内に入り、真っ先に思ったのは

 なんかデケエ手がある!!!!

 いやスクリーンもめちゃくちゃでかい。だけども一番目を引くのはやっぱりあのスクリーン両端に設置された巨大な手ですよね。
 あれは羽生くんの手なのか、はたまた別の何かなのか。期待しかない。
 そのあと全体を軽く見渡して、向かって左に明らかにオーケストラピットである空間を発見した私。このときの自分を褒めてあげたい。
 これ東フィルさんじゃね?
 
って直感的に思ったんですよ。
 東京フィルハーモニー交響楽団さんって、伝統もあるしもちろん実力も日本屈指なわけなんですが、結構こういった企画もののフットワークが軽いイメージがありまして。モンハンの狩猟音楽祭とかも演奏されているんです。なので期待もありつつ、しかし「まあさすがにないやろ」とも思いつつ、隣の友人にヒソっと「これ東フィルさんかもしれん……だとしたらとんでもないぞ……」と話しかけたりしていました。実際東フィルさんでよかったです、でなきゃまた友人に対して大口ばっかり叩くやばいやつになっていたところでした。
 さらに向かって右にはオケ編成とは別のピット。いや二つもピットあんのエグ……てかどうやって使い分けるんだ何をする気だ羽生結弦……あとアイスリンクの周りの装置すごくね……とソワソワしている間に、開演時間。

第一部

火の鳥

「そこに、幸せはありますか?」
 羽生くんの優しい声で開演したGIFT。もうこのあたりですでに涙腺がやばいのですがぐっとこらえていると、聞こえてきたのはなんと火の鳥。
 いやいやいや。いきなり火の鳥を演奏させる奴があるか!!とまず度肝抜かれました。生演奏火の鳥、最高……。合わせて世界地図と一緒に羽生くんの経歴が映し出されていくんですが、火の鳥と一緒に世界を飛び回っているような、羽生くんと一緒に各地を転戦しているような、そんな感覚でした。
 自分は何だろうと問いながら、あったかい世界をみつけ、その世界へ飛び出していく羽生ゆづr

幸子~~~~!!!!!
ジュディオング結弦~~~!!!!

 いや派手!!!すげえ!!!スクリーンの火の鳥の中心にいるのは、リフトに乗って羽はためかせてる火の鳥結弦!!!リンク周りでは炎も吹き上がる!!!まるで紅白歌合戦!!
 
 とまあ現地ではあまりのド派手さに情緒がぶっ飛んでしまったわけですが、後から見返して色々と思うことはあるんですよね。
 この演出を見て、そして演出がMIKIKO先生というのも考慮して、どうしても五輪と無縁だとは思えない自分がいます。まず羽生結弦は五輪アスリートです。そしてMIKIKO先生は当初東京五輪の演出をする予定だった。さらに言えば、火の鳥はソチ五輪の開会式で使われた曲です。ソチ五輪は羽生くんが初めて金メダルを獲得した大会。スクリーンに映し出された火の鳥と、その中心にいる羽生結弦は、まるで聖火のようだと感じました。もしかしたら、我々は幻のMIKIKO演出東京五輪開会式の演出の一端を見ていたのかもしれません。
 また、火の鳥は羽生くんが見つけたあったかい世界を表現するものでもあった。あったかい世界は彼の心の希望、夢。燃え盛る炎。ジュニア時代の小鳥のような火の鳥が、いつしか成長し大きな翼をはためかせる。GIFTという物語は、羽生結弦という存在がどのように生まれ、成長していくのかを見届けるものでもありました。特に第一部は、彼のこれまでの軌跡を共に辿っていくような構成になっている気がします。

Hope&Legacy

 火の鳥が終わった後、羽生くんの一人語りが繰り広げられます。
 そのとき私は、隣にいる羽生結弦初浴びの友人を心配していました。
(ついて来られるか……この世界観に……っ!!!!)
 ちなみに私は現地では置いて行かれてました。羽生くんのインタも何百回と聞いて、彼の声や語り口にはある程度慣れている私ですらこれだったので、友人はきっとびっくりしたことでしょう。だって「草は言った。」とか「おーい、月!」とか言い出すと思わないじゃないですか。
 というのはさておき。
 スクリーンには9歳の頃の羽生くんが映し出され、幼き頃の彼が感じていたことが童話のように語られていく。一番あったかいところを見つけ、それを夢見るようになる。心の中の不思議な声が、「きっと叶うよ。だって君は、叶えたいんでしょ?」と問いかけ、彼が「叶えたい!」と答えると、「だったら絶対に叶うよ。君はできないことが嫌いだから」と言い残し、不思議な声は消えていく。この声は、羽生くんの原点なる声なのかもしれません。
 あったかいところに向かっていく中で、もしかすると初めて彼は挫折を経験したのかもしれません。いつの間にか成長する草木に嫉妬し、草木に花を咲かせる太陽に憧れ、太陽を隠す月に怒る。しかし彼は太陽の光を受けて輝く月の表面に無数の傷があることに気づき、かっこいいと感じるようになります。できない、でも頑張る、でもできない。それは長いトンネルのようだけれど、大切なものを握りしめ、彼は進み続けます。気づけば大切なものしかなくなっていたけれど、でもそれが楽しくて。「それが僕なんだ」と彼は気づきます。
 羽生くんの語りと合わせて、スクリーンには様々な自然の映像が流れます。それは彼の世界の広がりであり、私たち観客も羽生くんの心の世界を一緒に旅しているかのようです。
 そんな、自分の身の回りにある自然、生命たちを慈しむように「Hope&Legacy」の演技が始まりました。
 もはや羽生結弦が自然そのもの。というか創造主……?ひたすらに美しく、儚く、尊い。ホプレガはフィギュア史に残る名プログラムの1つですが、演出に組み込まれたホプレガは当時よりさらに高貴さと慈悲深さを持ち合わせているような気がしました。
 あと東フィルさんの生演奏ですよ……ホプレガをまさか生演奏で堪能できる日が来るとは思いませんでした。なんて豪華で奥行きの深い響きなの……どう考えてもこの辺でチケ代の元とってます。安すぎ。
 ……というかやっぱ羽生くんが創造主なのでは?この世の全て、羽生結弦から生み出されてない?だって太陽も昇らせちゃうし。
 この太陽は羽生くんが夢見たあったかいもの、そして羨望でもあるのかも知れない。希望と夢が具現化されたプログラム、それがこのホプレガなのかもなと思いました。 

あの夏へ

 「それが僕なんだ」と大切なものだけを握りしめ、トンネルを進み続けた彼。しかし、あるとき全てが周りから消えてしまいます。太陽も、月も、周りの命も、全て。
 これは3.11のことなんじゃないか……と思いました。大切に握りしめていたものも、何もかもが無くなる恐怖。真っ暗で何も見えない。空っぽになってしまったもの。寒い夜が来て、彼は「独り」であることを痛感します。
 この「独り」という感情は、「GIFT」において重要な一貫したテーマになっています。この「独り」「孤独」という誰しもの心の中にも存在している感情をいかに捉えるか、そしていかに昇華していくか。第二部ではこのテーマがさらに深く掘り下げられていきます。
 そんな一人ぼっちの彼を、空からの光がそっと照らします。うーん。これは震災の時に希望をくれた「満天の星空」なんじゃないかな……。まあ私はこのシーンを3.11だと捉えているからかも知れませんが。
 てなわけでここでノッテ来るんかな~にしては全てが解決しすぎちゃうよな~と思ってましたが、流れたのはなんと千と千尋のあの夏へ!

ハクじゃん!!!!!

  え、羽生くんみんなが紅白で「湯婆婆とハク」って言ってたの知ってましたか?というかオタクの夢叶えすぎ?みんな一度は思ったことあるでしょ、羽生くんはハクだってね!
 また脳が焼かれてしまいました。なんですかねこの幻想的な雰囲気……イレブンプレイの皆様の演出も相まって、天界かと思うような美しい光景が広がっていました。
 あと羽生くんがもうね、ヒラヒラ靡かせて舞い踊るのが祈りの儀式みたいで言葉を無くすくらい美しい。巫女なのかな……?
 この光が、再び生命を宿らせ彼の大事にしてきたものを再び蘇らせてくれたのね、、、、。いや何度見ても美しいという感想しか出てこない。この世の美の集約。そしてこの光が、全てが無くなり孤独を感じた羽生くんの心を、大切なものをそっと照らしてくれていたんでしょう。

バラード第一番

 満天の星空が照らし、大切なものは空じゃないと気づかせてくれる。光が「君にしかできないことがある」と語りかけ、大切なものとの日々がまた始まっていきます。夜が明け朝になって。ずっと霧の中にいても、彼は前に進み続けます。
 逆風が吹いてきても、それはどこか優しいもので、「進む方はとても大変だ」と教えてくれます。でも歩みは止めません。その向かい風は、今は苦しくても、寒い日には温かく、暑い日には冷やしてくれることをわかっているからです。彼は風が吹く方へと進んでいきます。その風は、そのまままっすぐ進めば夢は叶うと言ってくれます。
 いつの間にか霧は晴れていました。
 そして会場のスポットライトの光が集まり、スクリーン上でも細かな光の粒が集約されていきます。その光の中から現れたのは、バラ1の衣装を纏った羽生くんでした。
 このバラ1は、逆風の中で羽生くんが導いた答えの一つであり、彼が叶えた夢の一つでもあります。自分の大切なものに向き合い続け、それだけを握りしめ、辿り着いた境地。彼が追い求めた理想の全てが詰め込まれた夢、掴んだ夢。その集約がバラ1という傑作なんですよね。そしてこのプログラムと共に、羽生くんは五輪二連覇を達成したのです。ここに、彼の夢は成就しました。

Otonal(inst.)~序奏とロンド・カプリチオーソ

 水の中に沈んでいく羽生くん。「君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃない。ずっと君が今の自分を選んできたんだよ」
 スクリーンには再び9歳の羽生くんが映し出され、滑り始めると同時にアニメーションになります。
 「嬉し涙が出るね。その涙が出たのはなぜ?その涙を辿っておいで。探しておいで。涙が、どこからきたのかを」
 アニメーションは、羽生くんの歴代のプログラムを映し出し、彼の成長を辿っていきます。ロシア→火の鳥→パガニーニ→パリ散→ファントム→バラ1→レックレ→ホプレガ→ノッテ→春よ来い→otonal→origin→レミエン→天地でしょうか(ちょっと自信ない)。そしてバックではOtonalが流れ始めます。
 たくさん戦ってきたよね。嫌なことしてきたよね。我慢してきたよね。悔しくて泣いたよね。全部君が選んできた日々。
 いつついたのかもわからない傷は、かさぶたにはなっているけれど治っていません。幾多の傷と共に、羽生くんは必死に進んできたのです、傷が癒える間もなく。
 もう夢は叶った。傷のおかげで、あなたのおかげで強くなれた。治っていいよ。ありがとうね。そう語る彼の声は、心なしか寂しげです。
 全てこのときのために。この瞬間のために。この僕のために選んできた。――でも、もう少し飛べる。もう少し、頑張りたい。願いが叶うなら、もう少しみんなと一緒にいたい。
 そして映し出される「2022.02.10」の文字。これは北京五輪で男子シングルの結果が確定した日。「報われない努力もある」と彼が涙ながらに語った、あの日です。そこから時間が進み、再び時計が止まったのは「2023.2.26
 時計はもう戻ることはありません。プロローグのように時間が巻き戻るわけではなく、時計の針は11時11分から進み始めています。
 でもこの表記を見て会場のファンは全員気づいたでしょう。「彼は絶対にロンカプのリベンジをする」と。
 その予感通り、東京ドームの照明は全点灯し、6分間練習のアナウンスが流れました。彼は競技会をこの東京ドームにも持ち込んだのです。
 ……信じられないですよ。ここまでの演出を考えればこれがどれだけエグい構成なのかわかります。彼は北京五輪のショートで、このロンカプの冒頭の4Sにミスが出ました。そのリベンジをここで果たそうとするところまではわかるんです。でもそれならプロローグのように冒頭でまだ体力も余裕のあるときにやってもよかった。でも彼はその道は選ばなかった。絶対にミスはできない、ミスをしてしまったらこのショーのコンセプトすら崩壊しかねないタイミングで、ロンカプを持ってきた。それだけのプレッシャーでなければ、そのプレッシャーを感じるところに持ってこなければ、彼にとってはこのリベンジも無意味なものだったのかもしれません。今までの傷を全て受け止め、握りしめるために。彼はここでロンカプを、特に冒頭の4Sを成功させ、夢を掴まなければならないのです。氷ももちろん製氷されていない。彼が第一部で描いた軌跡が残っているこのリンクで滑ることに意味があるのです。
 会場が緊張に包まれます。35000人が固唾を飲んで彼の挑戦を見守ります。もちろん私も祈っていました。目を見開きながら。
 演技が始まり、息を止めて見つめる。さあ4回転サルk

見切れ~~~~~~!!!!!

 知ってた!!!知ってました!!!私の席からだと4Sはデケエ柱の向こう側にすっぽり隠れるってね!!知ってましたよ!!見切れじゃない席当てられなかった私のバカーーーー!!!
 もう心の目で見てました。高く舞い上がって4回転回って降りてくる羽生くんを柱の向こうから妄想で見てました。歓声と拍手で成功したことがわかってほっとしましたよ。見えなかったけど。
 いやあ……素晴らしかった。緻密で繊細で淀みもなく、正しい技術で全てのエレメンツを高難度で行う。やっぱり彼は世界一フィギュアスケートが上手いです。すべての次元において、彼以上のスケーターは今は存在していませんね。それを確信する滑りだったとも思います。
 そんな下世話な話はさておき。彼が演技後に握りしめた拳を最後まで開かずにはけていったのも印象的でした。彼は大切なものを、光を、希望を掴んだのです。もう絶対に離さないとばかりに胸元で握りしめる拳のなんと尊いことか。ほっとした笑顔が見られたのも本当によかった。
 平昌で夢を達成したけれど、もう少しだけみんなと共に進んでいくことを願い、決意した羽生くん。このロンカプで、彼のもう一つの願いも少しは報われたのでしょうか。
 
 彼が舞台袖に姿を消し、「製氷のため40分の休憩」とのアナウンス。どよめく会場。そりゃ氷なんて張ったことのないところに競技サイズのリンクあるんじゃそんくらい時間かかりますよ。それでもお手洗いに行くのは無理だな……と思いながら第二部を待ちます。

第二部

Let's Go Crazy(inst.)~Let Me Entertain You

  東京ドームの天井まで覆いつくした競技会さながらの緊張感から一転、シンセの和音で「レックレダアア!!!!!」と沸き立つ場内(自分)。
 いやしかしこれすごくなかったですか?GIFTスペシャルバンドの皆様の生演奏なのに、会場にはプリンスの歌声が響き渡っているんですよ。これ、歌声だけ抽出して生演奏を合わせているんですかね?プリンスが今ここで歌っているかのような臨場感、スゲエ……。ここは完全にプリンスのライブ会場。気分も最高潮。ギターソロも絶好調。
 プロローグでパリ散を見た時、「うわ~ギターソロも生演奏で聞きてえ~」なんて贅沢なことを思っていたんですが、その願いまで叶えてくれる羽生結弦何者……?と素晴らしい演奏を堪能していたレックレ終盤、ついに本日の主役登場――

いやロックスターじゃん!!??

 その出方はロックスターなんよ、羽生結弦。めっちゃドヤ顔して腕広げて出てくるじゃん。それはロックスターなんよ!
 というかその衣装……いやレックレ来た時点でなんとなく想像はしてたけど、してたけど!!

 レミエンキタアアアアア!!!

 もうね私レミエン大好きなんですよ!基本的にイケ散らかしユヅルハニュー大好物なんですが、レミエンのカッコよさは格別に好き。思わず友人に「ウワアアア私これ一番好きなのヒヤアアア」と奇声を浴びせてしまいました。
 さらに今まで沈黙していたシンクロライトが!私の腕でビカビカ光り始めるじゃないですか!!もうあかんて、「ウヒョアアアエエエオオオ!!!??」って変な声しか出ないですよ。声出し解禁されててよかった。レミエンでついに歓声を届けられたのも最高に嬉しい!
 一つ、GIFTでレミエンを演じる大きな意味があったと個人的に思っていることがあります。GIFTは(ほぼ)全世界同時配信もされていたんですよね。特に欧州において、フィギュアにあまり関心の大きくない国でも羽生ファン(Fanyu)を増やしている演技の一つがこのレミエンだと思っています。
 このプログラムは2020/21シーズンに使用されたものですが、21年世界選手権での演技がドイツ公共放送のスポーツ番組のyoutubeチャンネルにて公開されていまして、その再生回数が425万を超えているんです。これがどれほどすごいことかというと、このチャンネルの人気動画でなんと2位なんですね。ちなみに1位と3位はサッカーの動画。ドイツはサッカー大国であり当然サッカーは凄まじい人気なわけですが(ちなみに私はドルトムントサポ)、公共放送チャンネルの再生回数上位にドイツではサッカーよりはるかに関心の低いフィギュアの、しかも異国の人間の演技動画が食い込んでくるなんて普通じゃ考えられない。日本で公開されている動画は国内でしか見られないものも多かったので、ドイツ公共放送のこの動画が羽生ファン拡大に大きな貢献をしているのは確実ではないでしょうか。
 そんなレミエン落ちの人たちもきっと見ていたであろうGIFT。このプログラムを滑ってくれて海外でも喜んでいる人がたくさんいるんじゃないかな~。ちなみに私はこの動画を見すぎて、イントロ流れた後に「Wie sehr wir entertain~」とドイツ語実況が頭の中で再生されました。
 そんなこんなでヘランジにもワーキャー叫びまくり楽しみまくったレミエン。ただ一つだけでかい後悔が残っている。
 コーレス、応えられなくてごめん……。
 
見えてた、羽生くんが耳に手当ててコーレス求めてたの見えてた。でもごめんなんて言ったらいいのかわからなかった。いやわかってた、「Let Me \Let me!/」「enter \enter!/」「tain you \tain you!/」でしょ?わかってたよ。でも出てこなかった!!だって声出し久しぶりなんだもん!ていうかアイスショーでコーレスって、コールアンドレスポンスって何(大混乱)。二回目とりあえず声は出したけど!でももっと叫びたかったよ!多分会場にいた人のうち12070人くらいは「ごめん羽生くん!」って心の中で謝っていたことでしょう。失望させてごめん。次はしっかりやるから。羽生ヲタ声の限り叫ぶから。だからいつかもう一回やってください。
 

阿修羅ちゃん

 めちゃくちゃ盛り上がり会場のボルテージも爆上がり。その中に響き始めるデジタルポップなゲーム調のBGM。
「楽しい!楽しい。楽しいよね。楽しくないわけない。
 ――楽しいでしょ?」
 頭をガツンと叩かれたような衝撃が走った。うん、楽しい。めっちゃくちゃ楽しいし、楽しんだ。バカみたいにはしゃぎまくったよ。でもそうやって私たちが当然のように楽しんでいる裏で、彼はどれだけ追い詰められていた?
『デキマス。デキマス』「本当にそう思ってるの?」
『デキナキャイミガナイ。デキナイノナラ、デキルマデヤルダケ』
 羽生くんの肉声と電子音声が交互に流れていく。肉声は本心、本音、生身の彼で、電子音声は彼を追い詰めるプレッシャーであり、表向きの自分です。
 できると思い込んでる、できることにしたい。できない自分は存在する意味がない。必要……ないんだ。
 私たちはいったいどこまで彼を追い詰めてしまったんだろう。勝手に期待して、勝手に彼を完璧な人間であるよう求めたのは、他ならぬ私たちなのかもしれない。いや、彼はそんなことを伝えるためにこの演出を入れたわけじゃないのかも知れないけど、ポップな音楽に乗せてどこか楽し気に感じさせようとしているのかも知れないけど。それでも私はこのジェットコースターのような落差に心をグラグラさせていました。
 いつしか好きでも楽しくもなくなり、いつも自分を越えていこうと必死に頑張っている彼。体力と時間と精神を削って、心臓と心のエネルギーを消耗して。誰かに失望してほしくないと、僕の「あるべき姿」になれるようにと。
 誰がわかる?……誰もわからない。GAME OVER。

「ねえ、あんたわかっちゃいない!!」

 そうです、その通りです!私、羽生くんのこと、なんもわかっちゃいない。ただ羽生くんの表に出てくる演技をみて、ただ「羽生結弦」を画面越しにみて、演技越しにみて、堪能してキャーキャー叫んで。どんだけ彼のことを長く追い続けていても、その影で彼がどんな気持ちでいるかなんて、私は全然わかっちゃいない。わかっちゃいないんだけど、
 ……踊りキレッキレすぎん?
 何あれ、もはや滑ってない。赤シャツ黒ネクタイ黒パンツで阿修羅ちゃんバリバリに踊ってる。ヒップホップダンサーか何かですか?少なくともフィギュアスケートはしてない。
 リンクのへりにガラス張りの液晶がいくつも立って、その中でもデジタルハニューが踊ってる。イレブンプレイさんもゴリゴリに踊ってる。ナニコレ。私はいったい何を見ているんだ??
 ショックを受けながらもあまりにキレキレな羽生くんにわけのわからん笑いが出そうになりながらこらえてる間に、阿修羅ちゃんは終わってしまった。
 歌詞聞きながらいろいろと思うことはある。でも阿修羅ちゃんで一番印象的だったのは冒頭のセリフとカクカクキレキレなユヅルハニュー。野暮なことは言わない。これが全て。

マスカレイド(inst.)~オペラ座の怪人

 「もう疲れた。疲れてもう、動けない。動きたくなんかない」
 先ほどのポップさから一転して不安定なBGMの中で、羽生くんが苦しそうに疲れを口にします。右を向いている彼の背景は真っ黒で、何もない世界に閉じ込められてしまっているかのよう。
 『できるよ。頑張れるよ』
 今度は左を向いた彼が、優しい光に照らされながら黒ゆづに声をかけます。先ほどの肉声&電子音声から、今度は黒と白、二人の羽生結弦による対話が繰り広げられていきます。どうでもいいんですが、黒ゆづの外ハネ髪型天才ですありがとうございます。
 限界まで自分を追い詰め、動けなくなってしまった黒ゆづ。弱い心とプライドが邪魔をして、できない自分が怖くて、何もできない自分は独りだと吐露します。
 そんな黒ゆづを励まし、独りじゃない、みんな待っているよと語る白ゆづ。彼は黒ゆづの本心を知っています。動けない、休みたいと言いながらも、本当は動きたい、誰かに届けたいと願う黒ゆづの気持ちを、彼は知っています。そしてここでBGMがマスカレイドに変化します。
 『全部知ってるよ。誰だと思ってるの?僕はあったかい世界の君』
 GIFT冒頭で何度も言及されていた「あったかい世界」。白ゆづはその世界にいる「羽生結弦」です。「こんな僕じゃなれない」と言いながら、「足りないものしかない」と嘆きながらも、その足りないものを望んで見つけた、「あったかい世界の羽生結弦」になりたいと願う黒ゆづ。
「僕はみんなに求めてもらいたい。ちゃんと見てもらいたい」
「君に、手を伸ばす。君になりたいんだ。こんな何もできない僕でも、君となら」
 黒ゆづが伸ばした手に呼応し、白ゆづも手を伸ばします。まるで黒ゆづに命を吹き込むかのように。
 そしてここでマスカレイドの音階が下ります。この音階こそまさしく、
 オペラ座の怪人。
 天才かよ。
 
マスカレイドからオペラ座をたった一音階で繋げちゃうのも天才だし、マスカレイドとオペラ座をここで二つとも持ってくるのも天才。全部天才。そして東フィルの生演奏!!天才!!またボーカル音源と生演奏のコラボ!!どうやってんだよわけわかんねえ!天才!!とまあ頭の悪い感想は置いといて。
 オペラ座はシーズンで使用したとき以降、私の記憶では再演されていなかったと思います。あまりにファントムのイメージが強すぎるため、使える場面がほとんどなかったということかなと。そんなプログラムをここで持ってきた意味。むしろこの場面に一番適したプログラムがオペラ座の怪人でした。
 「あったかい世界の羽生結弦」、それは彼が人に見せたいもの、そして彼自身が強く望む彼の姿です。それは所謂「ペルソナ」であり、「羽生結弦」という仮面、「羽生結弦」という概念、「羽生結弦」という媒体です。
 さらに羽生くんは他のプログラムとは異なった演出を行います。オペラ座冒頭で一度姿を現し、いったん舞台裏にはけるのです。他の曲は一度出たら最後まで滑り切るか、もしくは最初は映像で後に本人が出てくるかのいずれかでした。ここでわざわざ姿を現すことの意味。彼は強い意志を宿した凛とした表情で現れます。「羽生結弦」という仮面を被ったことを決意したかのように。
 スクリーンでシャンデリアが揺れ落ち、欠片が飛び散る。かの有名なフレーズが演奏されるのと合わせて、ここで舞台に設置されていた巨大な手の伏線が回収されます。スクリーンに現れた羽生くんの顔が仮面を被り、そこから光と共に腕が伸び両端の手が繋がります。この手は仮面を被った羽生くんの手であり、その手によってアイスリンク=羽生くんの心は覆われているのです。あまりに壮大で雄大な画でした。
 思うに、このファントムはGIFTという物語のクライマックスの一つなのではないかと。誰もが仮面を被り、自分の理想を演じなければならない、そうしなければ生きていけない。そんな誰しもが持つペルソナを、彼はハイライトとして物語に組み込んだのだと思います。また同時に、彼が「羽生結弦」としてこれからも生きていくという決意の表れでもあります。
 演技構成も驚きました。StSqから演技に入ったのですが、そのあと飛んだのはまさかの4T。競技時には3Lz2Tだったので、彼は当時よりも構成をあげてきたという。お手付きさえしなければ、羽生くんは4T2Tを飛ぶつもりだったのでは?とさえ思いました。4T2Tはそのシーズン当初構成として考えられていた記憶があります。彼はそのとき果たせなかった目標も越えようとしていたのでは、と感じてしまいました。
 StSqの後、彼は静かに仮面を取ります。柔らかい曲調の中でも、彼の表情は崩れません。黒ゆづの葛藤、意志、決意。仮面を外してもなおその意志は揺らがない。
 演技構成もやはり凄まじい。3A2T以外は全く構成を落としていない。もうすでに7曲も滑っているんだよ?さすがに足にきていると思うところはあれど、絶え間なく続くシームレスな演技。素晴らしいという他ない。
 オペラ座の見せ場の一つである3A-Eu-3S。それを決めると同時にリンク端で炎が吹き上がります。なんという情熱。なんという感情。イナバウアーで完全に涙腺を持っていかれ、嗚咽が漏れかけていました。
 最後のスピンを終え、彼は再び仮面を被ります。「あったかい世界の羽生結弦」に思いを馳せるかのように。

いつか終わる夢

 まず一言言わせてくれ。
 羽生結弦のコーデがいちいち天才。
 黒タートル、黒ロングコート、黒ブーツ。天才。
 そんな恰好の彼がひたすらに歩く。アップになったり、引きになったり。現代映像美術作品なんでしょうかねこれは。
 どこにも行きたくない。何もしたくないとふさぎ込んで、でもそこにドアがあるのはどうして?
 鍵穴もなく、ドアノブも壊し、釘を打ち込んでボロボロでも、そのドアを取り付け、実は塞がった空間から出たがっているのは他でもない自分自身。
 君は特別じゃない。僕は特別なんかじゃない
 誰も特別ではなく、一人一人の命。息が止まってしまっても世界は止まらずに進んでいくけれど、一人一人に色があり、見えている色も変わっている。その色は自分が経験し、成長してつけてきた色であり、軌跡です。頑張って作り上げてきた自分自身であり、君という「本当」です。
 君が大切にしなかったとしても、「僕が大切にするよ。もう大丈夫」
 彼を励まし、大丈夫だと支えてきた声。しかしその声はもう間もなくいなくなってしまいます。
 「永遠なんてない。僕は君の『夢』だから」
 「夢は、醒めなきゃ」
 (この世にこんなに美しい頭の抱え方があるんでしょうかね。羽生くんは頭抱えてもこんな美しいんですか。もう何切り取っても芸術作品なので、シンプルに羽生くんという素材を生かしたこの映像美は大正解。)
 「いってらっしゃい」
 羽生くんは鎖から解き放たれ、自由になります。でもその先に何があるのか。
 何一つ残っていない。「夢」は終わり、消え去りました。
 もう思い出さないように、振り向かずに歩きだす。消えてしまったものは何だっけ?ただ頬に涙が伝う。そこに残ったのは何もできない僕。ただひたすらに、「独り」だった。
 ここで再び「孤独」「独り」に焦点が当てられます。仮面を被り、「あったかい世界の羽生結弦」になろうと決意した彼ですが、夢から醒めると周りには何もなくなってしまっていた。なぜ夢は醒めてしまうんでしょうか、彼が孤独を感じないように永遠に夢を見せてくれていてもいいのに。しかし夢は醒めるから夢なんでしょうね。夢は彼を引き留める鎖でもあったわけですから、ある意味彼は自由になったと捉えることもできます。
 そこから「いつか終わる夢」の演技が始まります。この曲は個人的には4Aという叶わなかった夢という印象が強いのですが、この文脈で見るともっと抽象的で、幻想的に感じます。そしてこれから彼の先に広がっていく自由な世界も予感させてくれます。この演目で再びシンクロライトが輝きます。儚い夢が終わり、彼のこれからを静かに照らすような星空のように美しかった。

Notte Stellata

 ここからなんとワンカメノーカットの独白。
 独りのはずなのに、真っ暗なはずなのに、終わったはずなのに、なんでこんなにも明るい光に照らされているのだろう。眩しすぎて、直接見ることなんてできない。僕に見る権利なんてない。
 空からは星が、太陽が、月が、彼を照らしてくれています。その光が、彼の行く道を導いてくれます。
 「ちゃんと光を受け取れるよ」 
 その道には花が咲き、まっすぐに生きている姿がありました。
 「私たちがいるよ」
 道を進むと前から風が吹いてきます。かつて強く吹いていた風は、今は優しく温かい。
 「ずっとあなたは向かってきた。そんなあなたを私たちは知ってるよ」
 いつしか感じなくなっていた、かつて羽生くんが憧れていた自然たちがそこにはいました。
 でも、ぼくは独りだ。どうしても独りだ。
 大切なものは消えてしまいました。ずっと当たり前にあって、ずっとそばにあった大切なもの。独りは彼自身が選んできました。ずっと一緒にいて、大切にしてきて。でもいつの間にか大切にしなくなった。苦しいのは自分だけではなかったのに。
 苦しいのは独りになってしまうこと。共に歩めなくなってしまうこと。これからも共にいたかった。僕は、独りだ。

 「独りじゃない」

 ここで手元のシンクロライトが淡く光ります。そう、独りじゃない。羽生くんに、私たちの声が「光」として届いているかのよう。
 独りにはさせない。寂しい気持ちに蓋をしないで。君の中の寂しいをちゃんと見てあげて。君はいつも強い、けど泣きそうになってもいいんだよ。
 羽生くんは独りになって気づきました。独りになんてさせてくれない、みんなそこにいる、こんなにいっぱい。
 星たちの光が輝きを増しながら一つになっていきます。映像の羽生くんも一段と瞳に力をこめて、私たちのことを見つめてくれました。
 僕は知っている。ちゃんと受け取ろう。独りじゃない。
 「ただいま」
 シンクロライトが、羽生くんに返事をするように輝きます。
 ――おかえりなさい、僕の夢。みんなからの、「GIFT」。
 私たちは、彼の夢でした。彼を灯す星の光でした。私の応援も彼を照らす光の一つになれていて、羽生くんはそれに気づいてくれている。これ以上のGIFTが他にあるでしょうか?時に私たちの存在が重くなってしまうかもしれない。逃げ出したくなる時も、動けなくなる時もあるかもしれない。でも、それでも羽生くんは私たちのことを夢だと、GIFTだと言ってくれた。私にとっては、これが最大の、最高のGIFTでした。
 涙が止まらないなか、notte stellataの演技が始まります。燃え盛る火の鳥は、いつしか全てを優しく包み込む白鳥になっていました。満天の星空、その光は彼の夢であり、希望であり、大切なものです。今までの傷や苦しみ、孤独さえも慈しむように抱きしめ、そして羽を広げる。真に自由を手に入れた美しい白鳥は、これからさらに大きな世界へと羽ばたいていくのです。

 この先何があるか、何が待っているのか、わからない。
 でも、続けていこう。走っていこう。GIFTを届けに行く旅を。

 スクリーンに大きな翼が映し出され、リフトに乗った羽生くんが両腕を広げます。会場はシンクロライトの白い星に埋め尽くされました。これからも彼の旅は続きます。辛い気持ちになったり、独りで悲しくなっていても、心が干からびてしまっても。私たちには帰る場所があります。その居場所こそがこのGIFTであり、羽生くんからの贈り物です。

 エンドロールでは「僕のこと」が流れ、羽生くんが自分で編集したであろうおなじみ画角の映像が流れます。これはyoutubeにもupされているのですが、まさかノーカットノーミス演技だとは……だって、6分近くありなおかつとんでもない高難度構成なんだもの。エンドロールですら度肝を抜いてくる羽生結弦、恐ろしい……。

春よ来い

 ボアブルゾンを着た羽生結弦、優勝。
 そしてここで衝撃の事実が明かされます。
 「東京フィルハーモニー交響楽団の皆さん!」
 そりゃ会場どよめくよ!東フィルさん&栗田さん本当に連れてきちゃうんだもの!そのときの私といえば「やっぱり東フィルさんだったあああ」と絶叫しておりました。最高。
 GIFTスペシャルバンドの皆さん、イレブンプレイの皆さん、演出のMIKIKO先生、音楽総合監督の武部さん、スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
 そしてそして~と武部さんに改めて紹介され、「え?え?あ゛~///」と照れる羽生結弦、優勝。
 さらにスペシャルプレゼント、「GIFT」という曲を作ってくださったとのこと。なんて豪華な……。清らかで美しい、素晴らしい曲でした。
 そしてそのままピアノで春よ来いが流れます。GIFTスペシャルバンドの皆様の演奏でこれまたなんと素晴らしい。弦楽器やハープ、エレキギターも使いとても贅沢な演奏でした。
 今度は清塚さんの録音で羽生くんの演技。暗く閉ざされた冬から、満開の桜が咲く春へ。それは孤独という闇に閉ざされた羽生くんが希望の光を見出し心を開いていく様子、このGIFTという物語を優しく辿っていくようでもありました。シンクロライトのピンクの光、本当に美しかった。私たちは桜の花にもなれたんですね。

SEIMEI

 ピョロリ~!!!!
 
笛が鳴った瞬間の会場のどよめき!!!東京ドームが揺れた!!やっぱりシメはSEIMEIです!!
 SEIMEIは羽生結弦の代名詞、というかフィギュアスケーター羽生結弦のアイデンティティです。この大舞台でやらないわけがない。
 おそらく、初めて羽生くんを生で見に来た人もたくさんいたでしょう。私の友人のように誘われた人も、そこまで詳しく知っているわけではないけど東京ドーム公演はすごそうだから行ってみようとした人、さらにはたまたまDisney+に加入していたから見てみようという人もいたでしょう。
 そんな人たちでも、この笛が聞こえれば「おっ!SEIMEIだ!」となる唯一無二、絶対的な存在、それがこのプログラムです。
 しかもこちらも東フィルさんの生演奏。笛は音源、太鼓は音源と生演奏の被せでしょうか?こんなに豪華なSEIMEIを聴いてしまっていいのか……座席に諭吉を1枚置いて帰った方がよかったのでは。
 35000人の手拍子も凄まじい迫力でした。SEIMEIの手拍子は特別です。ゆっくりと拍子木のように響く手拍子は、何か神的なものを召喚する儀式かのよう。照明や舞台装置も相まって、本当に神秘的な空間になっていました。
 モニターではGIFTの舞台裏の映像が流れています。こうしてこのショーは作り上げられていったのだと、GIFTを辿り感慨に耽る時間すら幸せ。
 コレオ前のスピンでついに羽生くんが姿を現します。そしてダンダン!と両手を広げ、
 上げた顔には満面の笑み。
 平昌五輪を彷彿とさせるような笑顔。滑り出した羽生くんに私たちは割れんばかりの歓声を送りました。今日一番の歓声。東京ドームが割れてしまいそうなくらいに、皆の思いが爆発していました。壮大なショーのフィナーレを飾るのに、これ以上のプログラムはありません。
 滑りきった羽生くんの顔は、とっても清々しかった。彼はやりきった。精一杯、目一杯、持てる全てを出し尽くして、彼はこのショーを完遂しました。
 この時が永遠に続けばいいのに。でも、「夢」は醒めてしまうんですよね。

 水平線

 マイクをつけた羽生くんが、「ありがとう!」と観客席に声をかけながら周回。バックには水平線が流れていました。
 誰の目に焼き付くことのない努力も。誰の目に残るでもない日々も。そう、私たちは羽生くんが裏でどれだけ努力をしているか、どれだけ苦しんでいるかを、想像することはできても本当に知ることはできません。だからこそ、彼が目の前に現れてくれたときには全力で応援するのです。私たちが彼の夢になり、彼を灯す光に少しでもなれるように、声を枯らし手を腫らして想いを届け続けるしかないんです。
 
 やっぱ、スケート好きでよかったです!!

 そう言い感情のままに滑り始める羽生くん。羽生くんにとって、フィギュアこそが自分の想いを一番語れるもので、それが「羽生結弦」が媒体たる所以です。このショーの中で、一番彼の想いが溢れていた雄弁な滑りでした。
 幸せそうに滑る羽生くんが見られてよかった。スケートが好きでよかったと言ってくれてよかった。私もあなたのことが大好きでよかった!
 最後に羽生くんは「ちょっと静かにしてくださいね。ふふ。頑張るんで」と言い、口元のマイクを外しました。大きく息を吸い、

ありがとうございました!!

 東京ドームでも肉声で届けてくれた「ありがとうございました」。
 涙でべっしょべしょになりながら、私も「ありがとう!!!」と声を張り上げました。
 会場の至るところから響く「ありがとう」の声。羽生くんの全身に届いていたでしょうか。届いていてほしいな。もちろん会場の声だけでなく、ライビュや配信で見ていた人の声も。

その他雑感

・Disney+で見ていたnot羽生ヲタの友人から、「羽生くんって結構ネガティブな人なんだね」と言われました。確かに羽生くんを五輪やニュースで見るくらいの人から見たら、あの自信に満ち溢れていて強そうな羽生くんがこんな暗い内容のアイスショーを行ったことにびっくりしたかも知れません。友人の言葉を聞いて、私はCwWのことを思い出していました。
 CwWで、目の前で「死のうと思った」と羽生くんに言われたときの衝撃。そのとき初めて彼が抱える闇の大きさに垣間触れたわけですが、今回も阿修羅ちゃんからずっとショックを受けっぱなしだったんですね。
 でも、心の中にこれだけの暗さ、闇を抱えている人だからこそ、そこから発せられる光もより一層輝きを増すのだと思います。彼の繊細さが世界に奥行きを作り、鬱屈とした闇が影を濃く塗りつぶすことで、闇夜で月がより眩く見えるように、羽生結弦という存在が強い輝きを放つのだと。
 
・もし、平昌で夢を叶えて、そこで満足して競技の世界から身を引いていたら、北京五輪まで競技を続けていなければ、このGIFTは全く異なる内容になっていたかも知れません。
 いくら努力しても報われない。孤独。独り。それらの感情はもちろん平昌前にも感じていたと思いますが、平昌後の4年間でさらに強く深くなり、実際に「報われなかった」と口に出すところまで行ってしまった。この4年の経験がなければ、この物語は生まれなかったかも知れないと思うと、少し複雑な気持ちになります。

・今回私は正面よりやや3塁寄りの2階席ほぼ天井席でした。注釈付きでしたので目の前のスピーカー設置の柱がリンクを一部覆う席でしたが、音響は全く問題ありませんでした。音ズレも殆どなかったのでは?羽生くんの演技はBluetoothイヤホンをつけたときの僅かな遅延ですら「遅れてるなあ」と感じるレベルで音ハメレベルが段違いなわけですが、会場で見ていてズレてると感じることは殆どありませんでした。東京ドームでこの音響レベルは、相当スタッフの皆様が尽力してくださったのでは……?スピーカー表面の席だったのもよかったのかもしれませんね。ブラボー!

 はあ、やっと吐き出せました。もう全部出しきりました。我が生涯に一片の悔いなし。終わった後にすぐに見逃し配信をしてくださったDisney+さん、ありがとうございました。いつかまた見られる日が来るのを楽しみにしようと思います。

羽生結弦、GIFT、最高ーっ!

#羽生結弦
#GIFT

 
 

 





 

 
 


 


 



 

 

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