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私が移住を決めた理由

移住することになった

なんと移住することになった。「移住」というと、ちょっと近所に引っ越すのとは違うニュアンスがある。まさに「移住」という言葉がしっくりくるくらいの、県境をいくつも越えような移住だ。

理由としては、夫の転勤である。
「会社で偉い人と面談があるんだよね、何を話されるんだろう。自分でも話したいことを取り纏めなきゃ」という話はその2週間程前から聞いていた。

「どんな話だろうね」と適当に聞いていたのだけど、その面談から帰宅した夫に「どんな話だった?」と聞いたら「う~ん、後で話す」とのこと。『お、こりゃなんか重い話だぞ』と思ったところ、転勤の話だった、というオチであった。転勤先は西日本で、都市圏とは呼べないような県。

そこで示された選択肢は3つ。夫が転勤先に行くか、転勤を断るか、退職・転職するか。そこで、夫に「行きたいの?」と聞いたところ、「うん、興味がある」との返事があった。

「じゃあ2人で移住か、単身赴任かだね~」と伝えてみると、夫は「単身赴任はあり得ない」と強く言ったので、一番のプライオリティは「一緒に住み続ける」ということになったのである。

その時の私の返事としては「本当にやりたいことなら、私もリモートで働けるし付いていくのもやぶさかじゃない」という、半分は前向き、半分は濁したような返事しかできなかった。

冷静に、本当に行っていいのか考えた

その後、冷静になって、色々考えた。

ネガティブ系

まずは仕事のこと。コロナ禍で今の勤め先はリモート推奨な状態である。フルリモート前提での採用も進んで来ていたので、おそらく問題はない。
ただ1点、正直この話があったタイミングは、『転職活動しながら働こう』という時期であったのだ。ちょうどキャリアについて悩んでいた。

引越しを目前にしてフルリモートが前提となると、転職活動自体がしづらいし、転職先もかなり限られる。それを考慮に入れると、移住している間は、おそらく現在勤めている会社に勤め続けることになるだろう。

夫の任期は決まっていないけれど、おそらく3年くらいは転職しづらい状況になる。また、今年36歳になる身としてはそろそろベンチャーへの転職がキツくなる年齢だ。

次に自分がフェミニストであること。「転勤についていく妻」なんてものは滅んでも良いくらいの、マッチョな、フェミニズムに反する社会的構造だと思っている。フェミニストとしてロールモデルになりたいと思っているのにも関わらず、転勤妻というレッテルが社会的に貼られてしまうことに抵抗があった。

次に、私も夫も、生まれてからこの方、都内に1、2時間あれば行けるくらいの郊外育ちだということ。正直、電車が1時間に3本、みたいな場所に住んだことがないので、500m四方にスーパーが1つ以上、場所によっては5件くらいあるようなのが当たり前なのが染みついているのだ。簡単に言うと、田舎に慣れる自信が無いのである。

しかも1度行ったら、簡単に帰ってこれるような移住計画ではない。夫の任期に大きく左右されるのだ。よっぽどノイローゼにならない限りは3年はいることになるだろう。

後は細々としたことである。友達に会えない、家族に会えない、舞台を見に行けない、美術館に行けない、ローラースケートのレッスンが受けられないなど、あげれば枚挙にいとまがない。

ポジティブ系

それでも行くことにした。これは単純に「愛」と「チャレンジ」によるものだ。

もともと私と夫は、「一緒に住みたい」という理由で結婚した。もちろん好き合っていたのは前提だが、結婚に踏み切ったのは、住むためだ。結婚せずに同棲をして内縁関係になる人もいるが、私の両親があまり気分を良くしないので、結婚してもらったような形だ。

また、単純に、彼がやりたいことならば、応援したいと思ったのである。既述したとおり、私は転職をも考えていたくらいなので、ちょうど仕事への熱量が下がり気味だったのである。それならば意欲がある人が働く方が、よっぽど社会に貢献できるし、もっとミクロで考えると、夫が喜ぶ。

次にチャレンジ。物心ついた時から首都圏の郊外でしか過ごしていない私としては、『その外に出るのが怖い』という気持ちはあるものの、『でもそれって今を逃すと、首都圏以外に住んだことが無いっていう単一的な価値観しかない人間のままでいるってことじゃないか』ということに気付いたのである。

人生100年時代。残り60年以上あるのに、ここで機会を無駄にするのはもったいないと思うよになった。

ネガティブな思いもたくさんあったが、「行く」という決断をするには、「愛」と「チャレンジ」だけで十分であったのだ。

また、すぐに友人に相談をした。相談というよりも、王様の耳はロバの耳状態で、とにかく聞いてもらった。そうすると返ってきたのが「そこに住むの向いてそう」という言葉。

あまりに経験が無さすぎて混乱していたが、向いてそうと思ってくれる人がいるならば、何とかなるだろうと思った。けっこう自分は、自分で思っていたよりも単純な性格らしい。

友人の声は、私の背中を軽く押してくれた。それでグッと前に進めたのだ。もしかすると心にローラースケートを履いていたのかもしれない。

結論。

結論として、夫に「行こう。」と言った。

いや、初っ端から「本当にやりたいことなら、私もリモートで働けるし付いていくのもやぶさかじゃない」と言っていたので、別に改めて言う必要もなかったのだが、今ここに記載した気持ちをすべて伝えた上で、改めて、言ったのだ。

夫からは色々とソリューションというか、どちらかというと、「実際に行ったらそこまで問題にならない事だと思うよ」的なことを言ってもらった。

あと、前々から「次こそペット可物件に引っ越して猫を飼おう」と主張していたので、「これを機に猫を飼おう」というサジェスチョンや、「登山に行けるよ」という私が考えついてなかったメリットをプレゼンされたのにもほだされた。

不安は無いとは言えない。あと結構いま住んでいる町に愛着を持ち始めていたのでそれも残念だ。でも、本当に決めた。

ただ「転勤妻」のレッテルは貼られたままだろう。もう夫の転勤というのは隠して、アフターコロナとかニューノーマルとか言って逃げてしまおうか。

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