アイタイ

逢えなくても逢えなくても
あなたのことを想ってる

雨がふたりを隔てても
想いは確かにカササギより
あなたへ向かって羽ばたくわ

ああ口ずさむには足りなくて
零れ落ちずにいられない

喉の奥 吐息に迷う
想いの丈が溶けきれない

やっとやっとやっと言えたの
あなたをあなたに

アイタイ、と。

逢えないのに逢えないのに
あなたのことを想ってる

煙く揺らぐ天幕は雨
硝子の窓を濡らしてくのは
雨か涙かわからないわ

言葉にしたって何になろう
あなたの影ももういないのに

身の裡籠る想い燻らせ
染みつきすぎて薫るわが身よ

どうかどうかどうか届いて
あなたにあなたに

アイタイ、と。

5月の風なら運ぶ薫りも
かなしく断つのね 天の川さえ

雁の声音はもう辿らない
天の川を昇ってゆけば
あなたにあなたに

キット逢エル、と



©2015  緋月 燈

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