アニメ「小市民シリーズ」が面白い
2024年夏アニメで、何ら予備知識もなく漠然と視聴し始めた「小市民シリーズ」に、自分でも驚きを隠せない程、夢中になっています。
なぜか気になった「小市民シリーズ」
わたしは、子どもの頃にこそテレビにかじりついて、好きなアニメを毎週のように観ていましたが、大人になってからは、テレビアニメそのものから離れていた期間が結構長く(ディズニー映画などは観ていました)、21世紀に作られたアニメを観るようになったのも、ここ数年の話です。
そんなわけで、現在進行形で放送中のアニメを、ほぼリアルタイムに近い状態で観ることも少なかったのですが、Netflixで紹介されていた新作アニメ一覧の中で、ふと「小市民」という文字が目に止まりました。
作品の概要を見ると、「氷菓」と同じ米澤穂信先生が原作だとあります。実は「けいおん!」を知ったのとほぼ同時期に、ドラクエ10のフレンドに勧められて観た作品が「氷菓」で、これもかなり好きでした。
同じ作者の作品なら面白いのかもしれないという、非常に安直な考えから、第1話を観てみたのです。
「よくわからない」から「夢中」へ
第1話初見の感想としては、ちょうどコロナに感染してしまって自宅療養中だったため、やや注意力散漫気味にぼんやり観ていたこともあり、正直よくわかりませんでした。ストーリーの意味がわからないのではなく、面白いのかどうかがわからなかったのです。
だけどこの作品、なぜだか妙に気になりました。まさに千反田さんです。「わたし気になります!」と、心に引っかかりを覚えました。
その日は一旦視聴を止めたのですが、数日後、熱が下がった時点で第3話まで配信されていたので、とりあえず第2話を観てみようと思いました。主人公の友人が「おいしいココア」の作り方を熱く語り、その彼のお姉さんが気付いた、日常のちょっとした「謎」を解く話です。
第2話を観ていると、淡々と続く会話劇なのに、どこか引き込まれていく自分に気が付きました。あれ?これもしかしてかなり面白いのでは?と思い、第3話まで観てから、改めて第1話から続けて再視聴しました。初見で見逃していた部分の再発見など、この時点でかなりハマっていました。
第4話が待ち遠しかったのですが、7月28日は放送自体がなかったようで、第4話の配信は8月9日まで待つことになりました。その間に最初の3話を、かれこれ4~5回は見返したでしょうか。
「春期限定いちごタルト事件」の物語は第4話で一区切りとなるのですが、第5話を早く観たかったので、8月11日にはABEMAの先行配信で観ました。それまでの話と異なり、新聞部を舞台に展開される1話完結型のストーリー。新聞部の面々はなんだかギスギスしているのですが、ああなるほど!というオチがかなり好きで、この回も繰り返し観ることになります。
こうして、気付いたときにはアニメ「小市民シリーズ」に、夢中になってしまっていたのでした。
ふたりの「互恵関係」
主人公は高校に進学したばかりの小鳩常悟朗くん。中学で知り合い、恋愛関係でも依存関係でもなく互恵関係を築き合う小佐内ゆきさんと、ふたりの会話がストーリーの軸となっていきます。
小鳩くんは、謎を解きたがってしまう性格。中学時代は積極的に謎解きを買って出ていたようですが、それが原因で反感を買うことも多かったようで、「もう知恵働きはやめた」と「小市民」を志すようになります。ところが、なぜか身近な謎に出会ってしまうことが多く、解きたがりな性格が顔を出して、結局推理してしまうこともしばしば。
自分から推理したいわけではないのに、謎が目の前にあらわれ、結局推理してしまうあたりは「氷菓」で、省エネを志向していながらも、鮮やかに謎解きをしてしまう折木奉太郎くんと似ているかもしれません。
小佐内さんは、甘いものが大好きな女の子。小鳩くんとともに「小市民」を志しているのですが、その小柄で、小鳩くんの友人・堂島健吾くんいわく「引っ込み思案が人の形をとったような」雰囲気からは想像もつかないような本性を秘めています。その片鱗が見えるのが第3話、はっきりするのが第4話なので、ぜひご自身の目でご覧ください。
わたしがこの作品に惹かれた理由は、恋人同士ではない「互恵」という、ふたりの関係性にあります。決して恋愛ものが嫌いなわけではありませんが、若いふたりがあっさりくっついてしまうより、ともに「小市民を目指す」と互恵関係を築く点が面白く感じました。現実にそんな高校生はきっといませんが、良いんです、フィクションなので。
一緒に夏祭りに行ったり、家族不在の小佐内さんの家に小鳩くんが遊びに行ったりしますが、付き合っているわけではないのです。決して。
雰囲気のある演出が好き
この作品は会話劇が面白いのですが、現実に今いる場所から想像上の場所へ、パッパッと場面転換しながら物語が進みます。その雰囲気とBGMがとても心地よく、思わず何度も観てしまう原因にもなっています。
監督は神戸守さん。アニメ業界に入って最初の仕事が「風の谷のナウシカ」の制作進行という、非常に長いキャリアの方ですが、この方の演出が「神戸スタイル」と呼ばれて脚光を浴びたのは、21世紀に入ってからのようです。前述したように、わたしは21世紀のテレビアニメをあまり観ていなかったものですから、不勉強にも全く存じ上げませんでした。
本編は12:5のアスペクト比(シネスコサイズ)で作られているので、上下に黒い帯が入りますが、映画のような雰囲気がいい味を出しています。テレビアニメでは珍しく、プレスコに近い形の録音方法をとっているそうで、演技の方に作画を合わせているのだそうです。
最初はネックスピーカーで観ていたので、ちょっとセリフを聞き取れない部分もあったのですが、イヤホンで聞くと、この作品に合った自然な演技がしっかりと伝わってきます。
OP/EDの魅力
OPは透明感があふれる素晴らしい画面構成です。ここに出てくる「狼」と「狐」は、最初に観たときは全く意味がわかりませんでしたが、数話観ていくと、その意図がはっきりとわかります。
そしてEDは実写映像と組み合わせた独特なものとなっています。こちらも何度となく眺めてしまう素敵な仕上がりです。
OP主題歌はEveさんの「スイートメモリー」、ED主題歌はammoさんの「意解けない」が使われています。どちらも男性ボーカルですが、作品にぴったりと合った楽曲で、とても気に入っています。
スイーツがおいしそう
作中、小佐内さんが幾度となくスイーツを食べています。これがとてもおいしそうに描かれているので、放送時刻(土曜深夜25:30)を考えると、なかなかの飯テロにもなっています。
あまりにもたくさん食べるので、そんなに食べてだいじょうぶなの?と心配になるほどですが、小佐内さんは小柄でやせ型です。
作風は地味、だけど面白い
このアニメは、異世界に行くわけでも、転生するわけでもありません。アクションもバトルもありません。ひたすら続く会話劇、そして謎解きで構成されています。派手さのあるアニメを求める人からすれば、たまらなく地味なので、そこは好みの分かれるところでしょう。
だけど、わたしのツボには見事なほどに突き刺さりました。数年前から、幼い頃の趣味が蘇ったかのように、ある程度のアニメを観るようになりましたが、大半の作品は1話あたり基本的に1回しか観ていません。初回視聴直後に、1話あたり5回も6回も観てしまう作品は、少なくとも大人になってから出会ったものとしては「小市民シリーズ」しかありません。
この記事を書いた時点で、第6話まで観ています。ストーリーは「夏期限定トロピカルパフェ事件」に入り、第6話はその序章のような内容でしたが、ふだん甘いものはそんなに…と言っている小鳩くんが、とてもおいしそうにシャルロットを食べるシーンが最高でした。
この後の展開も目が離せません。生きる楽しみがひとつ増えたような気持ちで、今後も視聴していきたいと思っています。
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