即戦力が身につく 肝胆膵の画像診断(MEDSi社)レビュー

こんにちは、るな@画像診断医です。
今回、2023年春発売の新書

「即戦力が身につく肝胆膵の画像診断(MEDSi社)」

についてご献本いただきましたので、僭越ながら一放射線科医として感想を述べさせていただきたいと思います。ご献本ありがとうございます。今後も献本いただいた本はなるべくnoteにてレビューさせていただきたいと思います。実は、この本は献本前に購入しており拝読しておりましたので早速レビューを書かせていただきました。

まず、このシリーズは先に発売となっている「即戦力が身につく脳の画像診断(MEDSi社)」「即戦力が身につく頭頸部の画像診断(MEDSi社)」に続く第3弾の兄弟本でございます。

私は兼ねてから、知識の定着にはInputだけではなく、Outputが重要である、と述べており、著書の「放射線科研修読本(MEDSi社)」においても、
教科書や学会におけるInputだけではなく、読影や発表によるOutputが大切であると述べてきました(便乗して自書の宣伝します)。

しかし、日常診療や発表会は機会や症例に限りがあります。それらを補完しうるものが、「即戦力が身につくシリーズ」などに代表される演習型の教科書です。最近、私が専攻医の頃に比べると格段にこのような演習型の教科書が増えており、世間でニーズがあると推測されます。他にも、木口貴雄先生・井上明星先生・黒川遼先生著の「Genral Radiology画像診断演習」なども今春発売されています(便乗して推しの宣伝します)。

今回はまず、「即戦力シリーズが身につくシリーズ」の魅力について、解説していただき、加えて今回「肝胆膵」シリーズを読んで新たにきがついた点について、特に専攻医の方は注目の情報を書かせていただきます。


「即戦力シリーズが身につくシリーズ」の魅力について


まずは毎回ながら、執筆陣の豪華さに驚かされます。また、幅広い年代や大学の先生がご執筆されており、内容に偏りがないようにも留意されていると感じます。各疾患において多数論文を書かれいている著明な先生が執筆しており、その内容はとても深いです。

本書の構成は

①症例画像提示
②症例画像所見の解説
③症例の最終診断
④症例の疾患についてのQ&A(問題)
⑤症例の疾患の画像診断のポイント
⑥症例の疾患の基礎知識
⑦症例の疾患の鑑別診断
⑧問題(④)の解答

からなっており、脳・頭頚部・肝胆膵いずれも共通しています。通常の演習型と即戦力シリーズが決定的に異なるのは④の疾患のQ&Aがあること、⑦の症例の疾患の鑑別診断が詳細に書かれていることです。

まずは④については、一見ただの問題に見えるのですが、放射線科診断専門医を取得してn年の私にも”耳が痛い”質問を投げかけられることに気づかされます。これは、ただの問題ではなく、各疾患のエキスパートが”この疾患についてはこれが肝だぞ”と読者へ問いかけるメッセージのように感じるのです。この本の楽しみ方として、まず④問題と⑧問題の解答だけをメッセージ集として読むという楽しみ方があると思います。これを読むだけで、各疾患のエキスパート達が、どこに疾患の肝があるのかというメッセージを読み取ることができます。

また、この本は⑦の症例の鑑別診断が非常に充実しており、たとえば「画像所見はAをまず鑑別にあげるけど、他に鑑別すべき疾患はないだろうか・・」というときに辞書代わりに使用することも可能です。各書500ページ超のボリュームがあり、ほぼ全ての疾患を網羅しているため、このような使い方も十分に考えられます。これは本書の帯に「読影力+”鑑別診断”のセンスをみがく!」と記載されていることからも、この本が鑑別診断の列挙に力を入れていることがよくわかります。

よって私としては「即戦力が身につくシリーズ」の使い方については以下の3つを提案したいです。

  1. 症例問題集としての従来の使い方

  2. 問題からエキスパート達のメッセージを紐解くメッセージ集としての使い方

  3. 鑑別疾患を調べるための辞書としての使い方

そして4つめは…次項に

肝胆膵シリーズを読んで気が付いた点について

今回、肝胆膵シリーズの執筆者を見て、思い出したことがありました。
執筆者の一人の先生(A先生とします)が、去年のある教育講演で「前回の診断専門医試験の口頭諮問では〇〇を答えられなかった先生が多かった。次回以降もここは聞いていきたい」とおっしゃっていたことです。

私はかねてからこの本の使い方として”診断専門医試験の口頭諮問の練習”としての使い方があるのではないか、と考えてきました。しかし、それはあくまで症例についての知識がQAで聞かれているという形式のみの話であり、それは試験に直結するものでは必ずしもないと。

ただ、今回もし、A先生のご発言内容が、本書の問題にて問われているのであれば・・・それは、診断専門医試験の予想問題集となりうるだろう、と考えたのです。

ビンゴ。

予想は的中しました。

A先生のメッセージは問題の中にあったのです。

これ以上多くは語るまい。診断専門医試験の受験者の先生にとって、本書の問題を読むだけでアドバンテージとなるのは間違いがないでしょう。

じらした4つめの使い方は

4.診断専門医試験の口頭諮問の予想問題集

としての使い方です。

一人四役をこなす、本シリーズ。
こんなマルチプレーヤーを手元に置かない手はないでしょう。

続編シリーズを正座して待ちます。

読んでいただき、ありがとうございました。

追伸
タイトルは違いますが、同じMEDSi社から「症例から学ぶ泌尿器科疾患の画像診断」と「症例から学ぶ泌尿器科疾患の画像診断」についても概ね同様の形式であり、姉妹本といえると思います。

るな。



画像診断を中心とした医学系の記事を投稿したいと思っています。よろしくお願いします