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大阪北部の地震は被害が比較的軽いと見られているところが非常に厄介で危険~大阪北部地震のこと 2~

昨日に続いて地震の話です。
まずは当時の手記から。

●2018年7月1日 メモ
今回の大阪北部地震は被害が比較的軽いと見られているところが非常に厄介で危険だと思います。

思わぬところに問題が隠れていたり、あとから被害が拡がったりしている。
今回の地震は、建築的被害などが比較的軽微だと思われている節がありますが、
人の疲弊もモノの損害も隠れていて見えにくく、
それだけにかえって厄介で危険ではないかと感じています。

昨日の高槻市役所での住宅相談会では7組、お話を伺い、その場でお答えしましたが、
ちゃんと気付くべきところに自分が気付き、それをわかりやすくお伝えできたのか、
ずっと頭の中をめぐっている状態。

住まい手が心配なさっている損傷個所がそのまま建築的な問題になっているケースもありましたが、
その点はさほど大きな問題ではなく、実はまったく別の点が問題だと思えるケースもありました。
見えるところだけではなく、見えないところや周辺にも注意が必要です。
たとえば、構造躯体は隠れて見えない場合がありますし、建物周辺の造成や地盤の状況なども重要です。
また、極端な破損部位があれば、なんらかの原因があると思われます。

部分的な損傷の補修だけで済ませるのか、その取合い部分も合わせて補修するのか、
さらに建築全体のバランス(特に構造)を見て補修を検討するのか、
そこからさらに将来的な耐震性能向上まで踏み込んで検討するのか、
ケースごとに実情に合わせて、みなさんも選択されていると思います。
後者にいくほど私たち建築士参画の必要性が高まると思われますが、
実際にはなかなか建築士を交えて検討することにはならない気がします。

構造的には問題ないと思われるお宅に飛び込みで営業して、
「この家はもう潰れる。危険だから、すぐに建て替えましょう」
というようなことを言った施工業者がいるようです。
(相談者の方から聞きました)
ご注意ください。

みなさん、わりと写真(プリントもしくは端末画像)を持参くださっていました。
願わくば、建物全体の様子がわかるものがあると助かります。
もちろん部分も大事ですが、全体の状況が重要です。

●そして、現在(2024年6月20日)
その後のことと現在について少し述べます。

その後、建築士会への要請に応じる形で枚方市での罹災証明2次調査に参加。
以前から、罹災証明と応急危険度判定の現地調査をもう少し合理化できないかと考えていました。
被害を受けた方が何度も役所で手続きしたり、家の調査を受けたりするのはご負担が大きいし、
何より、生活再建が少しでもはやくできるほうがよいと思ったからです。
実際に両方を経験してみてわかったのは、それぞれが別の目的を持っており、
さらに判定方法、内容もまったく異なることから、双方の合理化はなかなか難しいということです。

大阪府南部の岸和田や泉佐野などへ行くと、やはり屋根にシートがかかっているケースが目立ちました。
現地の方々と話しているとどうやら南の方は地震よりも台風の被害が大きいらしいとわかりました。
府北部でも地震で破損した建物に台風の被害が重なり、損傷を拡げていました。
大阪府や近隣府県へ行くと、その後何年も屋根や壁にシートがかけられた建物を目にすることが多かった。

被害を受けた住宅について、施工業者をご紹介したケースもありました。
いざ補修が必要になっても誰に頼めばよいかわからないというお声はよく聞きます。
こちらもできる限り信頼できる業者をご紹介するわけですが、大規模災害時は業者も手一杯。
それでも引き受けてくれたのは助かりました。

そんな状況下、半壊した住宅の補修と耐震補強のお手伝いをさせていただきました。
壊れた箇所の修理だけではなく、この際、耐震補強もしておきたいという家の方のご希望でした。
半壊の認定がおりた家にお住いのまま補修するので急を要し、知り合いの工務店が優先的に駆け付けてくれました。
しかし、屋根屋さんが忙し過ぎてつかまらない。これは当時、あちこちで課題になっていました。
それもあって多くの家々の屋根のシートがなかなか消えない。
家の補修と補強は年内にできましたが、屋根瓦の葺き替えは翌年の夏のことでした。

昨日の投稿冒頭の写真はこのお宅のものです。
同じご苦労をなさっている方々も多いため、家の方のご賛同もいただいて、
この記事を書く際にあえてこの写真を使わせていただいています。
通常、私たちは被災した地域の被災状況を示す写真は投稿しません。
役所や報道機関が公開するもので十分です。

一部損壊が多かったこの地震ですが、当時、公的な支援が手薄で殆どないに等しかった。
しかし、一部損壊であっても家の方々は相当ご苦労なさるわけで、それが見過ごされて、
個人負担にのみ任されていた状況はかなり厳しいものがあったと思います。
冒頭やタイトルに述べていることにつながります。
お住まいの方や所有なさる方がご高齢であったり、経済的に厳しい状況であったりした場合、
家は破損したまま直せずにいるということも少なくはありません。
活動の中で知り合った新聞記者とも情報や意見を交換をしてみたり、
生活再建の難しい方々への支援をなさっている法曹界のみなさんの会合に参加してみたりもしました。
そこで知り合った法律家の方から、被害を受けた住宅について対処法の相談があったりもしましたが、
やはりこれはいつでもどこでも起り得ることと思いました。

*【今後のご参考までに】
 屋根瓦が壊れているけど補修まで月日がかかるという場合、
 ブルーシートだと何度もかけ直さねばなりません。
 もしかすると、屋根用の防水(ルーフィング)シートを使うほうがよいかもしれません。
 このシート自体に粘着性があり、既存の屋根の上から張り付けることができます。
 本来、屋根防水のためのシートです。
 昨今の住宅では瓦やガルバリウム鋼板などの屋根仕上材の下に、
 実はこういったシートが張ってあり、実質的な防水の役目を果たしています。
 通常、このシート自体は何年も持ちます。
 知り合いの工務店があるお宅の応急処置にこれを使っていて参考になりました。
 ただし、既存の瓦それ自体に文化財的意味がある(瓦師の銘があるとかの)場合など、
 シートが密着すれば再利用できなくなりますので、ご注意ください。

それから何年か経って、大阪府内の屋根のブルーシート、それ自体はかなり減っています。
しかし、なくなったわけではありません。まだ残っています。
さらにはすでにシートもなく、破損した屋根や壁がむき出しのままという建物も決して少なくはありません。
先に述べた年齢のことや経済的なこと、さらに相続のタイミングなども絡んでくるかもしれません。
そしてほぼ空家の状態になるか、完全に空き家になるか。
そういう可能性も低くはない。
6年経って、ほぼ忘れられたような地震ですが、実はまだ終わっていない。
関西にいるとよく聞きますが、兵庫のあの大地震のあとの問題でさえ、終わってはいないし、
むしろ年月の経過に伴って、新たな課題も生じているはずです。
ましてや6年です。たとえ一部損壊が多かったにせよ、問題がないはずがないのです。
(しかし報道は少ない)

今さらペンをとった(キーをたたいた)所以です。

こういった災害は終わりがなく、その後の対応も続きます。
そして、昨日も書きましたが、また次が来る。
自分たちにできることをこつこつとやっていくしかない。
どうかみんなが無事であることを願いつつ、ここで一度ペンを置きます。

続けての長文、お読みいただきありがとうございました。
言葉足らずや誤認もあるかもしれませんが、お許しください。

それでは、また

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