LUMIXが「色推しカメラ」になるまでの3つのやらかしと3つの理由
こんにちは。
PanasonicでLUMIXのマーケティングを担当している塩見です。
いきなり中の人が出てきて驚かれたかもしれません。
本日よりnoteで公開する「LUMIX magazine」では、以下のようなコンテンツを発信していきます。
今回は「LUMIX is」第一弾として私から、弊社が現在展開しているLUMIXシリーズの「絵作り思想」をベースとしたマーケティングと、そこに至るまでの「やらかし」についてお話します。
ずばりLUMIX、モノは良いのに全然流行っていません。
LUMIXが歩んできた軌跡
本題に入る前にLUMIXについて軽くご紹介させていただきます。
LUMIXを簡単に説明すると「世界で初めて誕生したミラーレス一眼カメラであり、世界中のプロフォトグラファー達が愛してやまない名門ライカ社の認証を得たレンズを製造、搭載できるカメラ」です。
大きな個性を持つカメラですが、現在は後発のミラーレス一眼カメラにシェアを抜かれています。
世界的に高水準と認められた技術力を持ちながら、どうしてシェアが獲得できていないのか。それは、カメラの魅力をお伝えしていく私たちマーケティングの「中の人」がある「やらかし」をしてしまっていたからなんです・・・。
中の人の3つの「やらかし」
具体的に私たちは何を「やらかし」てしまっていたのでしょう。なかなか表では話しにくいこともありますが、今回は包み隠さずお話しさせていただきます。
過去の成功体験に縛られ、マーケティングを変えられなかった
マーケッターがいきなり何言ってんだって話ですが・・・(苦笑)
目まぐるしく変化するカメラ市場に対して、しばらくの間、私たちは迅速かつ柔軟にマーケティングを適応することができていませんでした。その理由に、私たちPanasonicが大きくは家電メーカーであることが挙げられます。
機種毎に訴求最大化に向けたコンセプトを決め、テレビCMを流し、WEBページを作って、お客様に店頭に来ていただき、カタログや店頭に掲示する作例をご覧いただいて、店頭販売員が接客する。
そういった「家電的な売り方」を慣習としており、さらに当時はその手法でもある程度の販売規模とシェアを獲得していたことから、売り方に疑問を持っていませんでした。
お客様のニーズとカメラのスペックが合致し、ある程度の値ごろ感があればお買い求めいただけるだろう、と思っていたんです。
結果、機種毎にターゲットやコンセプトが分かれてしまい、いつの間にかLUMIXブランドは「誰向けのモノか、よくわからないカメラ」になってしまいました。
お客様の声を理解できていなかった
正直に申し上げます。
これまでにもたくさんのお客様が「LUMIXは色が良いですね!」と声をかけてくださっていました。
が、この言葉の真意を理解して、訴求に活かすことができていませんでした・・・。
もちろん、良い色を表現するカメラを設計、開発しているという自負はありました。しかし、そもそも色はメーカーそれぞれの個性であり、お客様の好みでもあると考えていたため、お客様からのお褒めの言葉をLUMIXの強みとして自覚して、訴求に活かすことが長らくできていませんでした・・・いやぁこれは本当にやらかしました・・・。
お客様自体への理解が不足していた
現在はデジタル一眼カメラによる映像制作ニーズが高まっているものの、それまでのカメラは「写真ユーザー」、特に「家族の記録を残すようなエントリー層」から「個人で創作活動を楽しむ趣味層」までがメインターゲットとなる商品でした。
そのため、マーケティングにおいてもターゲットの層を幅広く捉え、より多くの方に刺さるよう取り組んでいました。
しかしスマホの台頭により、スマホでの写真撮影で十分な方々はカメラをお買い求めにならず、カメラの需要自体が縮小していったのです。
一方で、それでもカメラを買い続ける方々は、SNSなどの伸長により、作品を比較的簡単に発表する場や、スキルをシェアする場が急速に増えてきたこともあって、よりクリエイティブ(=創造性に富む)になっていきました。
その変化に、私たちは気づくことができていなかったのです。従来通り、カメラを求めるお客様を「エントリー層」や「カメラ趣味層」と言った枠で認識してしまい、そのインサイトを捉えきれず、ターゲティングやアプローチが不十分だったと感じています。
このように、今でも思い出しては苦い気持ちになるような失敗を経験してきたわけですが、これらの「やらかし」を経て私たちはLUMIXの存在価値について改めて向き合い、LUMIXというカメラが持つ強み、そして可能性に気づくことができたのです。
LUMIXが色推しになった3つの「理由」
他社のカメラが人気を集める中、それでもLUMIXを使い続けて、愛してくれているファンがいる。魅力が十分に世に浸透していないなら、私たちの考え方や届け方を見直そう。
そう考えた末にLUMIXが色推しになった大きな理由には、以下の取り組みや新たな視点がありました。
プロダクトデザイナー起点のリブランディング
「LUMIXは誰に向けたカメラなのか」。
そう初めに考えたのは、実はプロダクトデザインのメンバーなんです。
先ほども述べたように、過去の慣習に囚われてお客様を正しくターゲティングできなくなっていたことに加えて、カメラ需要の縮小と共に大規模な広告展開も減ったことから、LUMIXはいつの間にか「知る人ぞ知るブランド」になっていました。
「LUMIXって、どういうブランドなんだろう。」
ある種の閉塞感が漂う中で、まず危機感を持って動き出したのがプロダクトデザインのチームでした。デザイナー自らが自分たちの強みを突き詰め、お客様からのご意見を収集した結果、ある一つの方向性を見出します。
その方向性を足掛かりに、社内でブランドを再定義するチームが立ち上がりました。先述のデザイナーをはじめ、ブランド推進担当はもちろん、日本国内だけでなくグローバルのマーケティンメンバーが集まり、日夜議論を繰り返して「クリエイターに寄り添うブランド」の中身を明確にしていきました。
カメラは飽くまでも「表現をするための道具」です。
加えて、お客様はプロかアマチュアか、撮影ジャンルが写真か映像かを問わず、クリエイティブに進化していました。
そこで私たちも「エントリー層」や「趣味層」などと捉えていたお客様を「クリエイター(=表現者)」と捉え直し、クリエイターに寄り添ったこれ以上にない道具として、その創造性に貢献することをLUMIXの価値とするリブランディングを開始しました。
併せて、私たちマーケッターもLUMIXの訴求コンセプトの整理と検討を進める中、ここでようやく点と点が繋がりました。
同時に私たちは、「LUMIXだけが持つ強み、クリエイターに提供できる価値とは何か」という問いに直面することになります。
ただ、その問いを掘り下げていくうちにわかってきたことは、意外にも私たちにとって「当たり前と捉えていたこと」でした。
シリーズの壁を越えて統一された絵作り
私たちが抱くフィロソフィー(哲学)の一つに「生命力・生命美」と言う絵作り思想があります。
LUMIX G9 PROから本思想に基づきカメラを開発してまいりましたが、その結果、多くのクリエイターから「忠実な色を写す」「雑味がないクリアな発色」と評価をいただきました。
実はLUMIXは、機種が変わっても、センサーサイズが変わったとしても、同じ傾向の描写を実現する特徴を持ちます。つまり、マイクロフォーサーズのGシリーズと、フルサイズのSシリーズ。モノによっては価格に倍以上の差がある2つのシリーズですが、色の描写に差はありません。
ただこれは、私たちにとっては当たり前のことだったんです。当たり前すぎて気づいていませんでしたが、クリエイターの皆様から「様々な機材を使い分ける現場で、同じ色表現をしてくれるLUMIXはとても使いやすい」とお褒めの言葉をいただき、その重要性に気づくことができました。
クライアントワークの現場で求められるスピード感、創造性を発揮するための色表現、その双方においてLUMIXが選ばれる理由が明確になった瞬間でした。
▼絵作り思想についてはこちらもご覧ください!
色表現に貢献することで「縁の下の力持ち」になりたい
ようやくLUMIXの新たなマーケティング戦略の解像度が上がりつつある中、その想いが結実したのがCP+2021です。
コロナ禍により、突如オンライン開催となったCP+2021。タッチアンドトライ中心のリアル開催から、クリエイターによるセミナーが中心となるオンライン配信に切り替えた私たちは「視聴者はメーカーの声より、クリエイターの生の声が聞きたいんじゃないか」と言う発想から、番組のコンセプトを「Creators with LUMIX」としました。
今思えば、ここで私たちの主語が「LUMIX」から「クリエイター」に変わったように思います。
その構成はある意味で挑戦でした。
カメラメーカーのライブ配信にも関わらず、各セッションはクリエイターの作品が前面に出ており、クリエイターそれぞれの思想や制作の考え方、Tips紹介などが中心で、LUMIXのカメラ・レンズの話は半分も出てこない。
ある種、従来のセミナーとは真逆を行く内容でしたが、私たちの想定をはるかに超えるお客様にご覧いただけました。
さらに、チャットコメント上で視聴者様同士で盛り上がるなど、番組として非常に楽しんでいただける配信にできたと自負しております。弊社への温かいコメントも数多く頂戴し、私たちLUMIXチームの大きな励みとなりました。
そしてこの挑戦から私たち自身も、「プロ・アマを問わず、自分の世界観や創造性を積極的に発信しているクリエイターがたくさんいる」ことに気づかされたんです。
クリエイターにとって、その世界観を表現する上で、あるいは、クライアントワークを仕上げる上でも、作品の「色」は「クリエイターの創造性そのものだ」という確信が得られました。
だから、クリエイターの色表現を支えて「創作活動に欠かせない存在」になりたい。
CP+2021で掲げた「Creators with LUMIX」というテーマは、一年後、CP+2022においてクリエイターに何で貢献するのか、という目的の解像度を上げた「COLORS OF LUMIX」というコンセプトに昇華され、現在の私たちのマーケティング方針の根幹になりました。
こうした新たな気づき、視点を得ることで私たちはLUMIXが持つ強みを再認識し「LUMIXは色推しのカメラである」と定義することができました。
クリエイターと共に歩んでいく
私たちは様々な気づきを経て、改めてLUMIXを皆様のお手元にお届けしていきます。
新たな取り組みはまだ始まったばかりで、成果が数字として表れるのは少し先の話になるでしょう。
しかし既に、ありがたいことに目に見える変化として「お客様との距離」がかなり縮まったように感じています。
例えば、LUMIXを愛してくれるファンたちが集うコミュニティ「LUMIX友の会」や、LUMIXを活用するYouTubeクリエイターを紹介する企画「だから、LUMIX。」は、仲間となってくれたファンクリエイターが自発的に企画、運営してくださっているものです。
また、クリエイターと共に創り上げる活動拠点として21年5月末にオープンした「LUMIX BASE TOKYO」では、毎月開催するワークショップは毎回満員御礼を頂戴しております。
22年3月に開催した「GH6生誕祭」には30名近いLUMIXファンに集まっていただき、最近では会員数も1,000名を突破しました。さらに、22年度は会員の皆様に「LUMIXユーザーで良かった!」と思っていただけるような「LUMIX Color Lab」などの企画を多数展開してまいりますので、ぜひご期待ください。
一年半前から運用を開始しましたSNS(Instagram/Twitter)を通しても、ファンの皆様から日々熱いリアクションを頂戴しております。
特にGH6発表時に盛り上がった自然発生的な「キャッチコピー大喜利大会(#GH6勝手にキャッチコピー大会)」からは、ファンの皆様が熱い思いを持って「LUMIX」を楽しんでいただいていることがハッキリと分かり、我々も皆様の想いにしっかりと応えていきたいと背筋が伸びた、印象的な出来事として記憶しています。
加えて、私たちマーケティングの「中の人」も、出し惜しみせず、YouTubeやInstagramでのライブ配信を通じて、ユーザーの皆様と直接コミュニケーションが取れる場を積極的に設けたりと、皆様と共に楽しみ、歩んでいく機会を増やしてまいります。
時代はプロ・アマを問わず、クリエイティブな制作をする時代です。
そして色はクリエイターの創造性そのものであり、その色表現を支えるカメラは、あらゆる分野において活躍するクリエイターにとって扱いやすい存在であるべきでしょう。
LUMIXは、クリエイターの「創造性」に貢献するカメラとして、これからも進化を遂げていきます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。これから更新されていく「中の人」の記事やクリエイターの記事にも、是非ご注目ください。
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