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同調率99%の少女1~13

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那珂が主人公のオリジナル小説。 鎮守府Aの物語 1~13巻分まで
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2015年8月の記事一覧

同調率99%の少女(3) : 幕間:深夜の少女たち

--- 9 幕間:深夜の少女たち 鎮守府Aに向けての報告メールは、最初は五月雨が意気込んで作成していたが、そのうち船を漕ぎだしたので、隣にいた那珂は肩を叩いて彼女を現実に戻す。 「五月雨ちゃん、続きはあたしが作っておくからさ、あなたはもう寝ていいよ。」 「ふぇ……?あ、すみません……眠いではす……」 「ホラホラ。眠さが文章に出てるよ。あばばばっっっっhghghghとか素敵な文章が混じってるし~」  五月雨がコックリコックリして適当に打ってしまった文章にクスリと笑いつつ

同調率99%の少女(3) : 勝利の帰還

--- 8 勝利の帰還 探照灯の光が海上に落ちてきた。那珂は双頭の重巡級だった破片の上に一旦着地し、その後よろけるように着水した。敵の撃破をわかっていたので、次に那珂が発した一言は、五十鈴が聞き覚えのある一言だった。 「いえ~い!那珂ちゃ~んスマイルぅー!」  那珂はその場でくるりと回転してポーズを取った。夜間で誰からも見えてないそのポージングに対して、五十鈴が大声でツッコミを入れた。 「探照灯で自分を照らしなさいな!それじゃあせっかくの決めポーズも誰も見えないわよ!」

同調率99%の少女(3) : 激戦

--- 7 激戦 鳴き声が聞こえた瞬間、6人は立ち止まる。 「これ……なに?なんの音?ていうか声?」  五十鈴が真っ先に疑問を口にした。  先頭に立っている那珂が探照灯を角度を広めて当たりを照らす。那珂には聞き覚えがあった。 「みんな、陣形展開して警戒して!」  那珂が真面目に全員に指示を与える。  輪形陣になって周囲に気を張りながら進む6人。那珂は進む方向に探照灯を当てている。  GPSで日中に確認したポイントまで辿り着いた。キュイーという鳴き声は、存在するで

同調率99%の少女(3) : 反攻

--- 6 反攻 夕方頃、会議室には艦隊メンバーの6人が集まっていた。 「気象庁の発表によるとこのへんの雨はもうすぐ止むそうだ。雨がやんだら、即出撃するべきだとあたしは思うんだが、あんたらはどうよ?」  天龍は那珂たちに提案した。 「もうすぐ夜ですよ。となると夜戦になってしまいます。」  まだ夜間の戦闘を経験したことがない村雨が不安げに言う。同じく夜戦の経験がない五月雨も頷いた。 「いいじゃねーか夜戦。この中で夜戦を経験したことがあるのは?」  そう天龍が尋ねる。

同調率99%の少女(3) : 仲直り

--- 5 仲直り 護衛艦に戻った全員は被害状況を確認した。  隣の鎮守府の艦隊は次の通り。  旗艦天龍(小破)、龍田、吹雪(小破間近)、深雪(小破)、白雪(中破)、羽黒(大破)  鎮守府Aの艦隊は次の通り。  旗艦五月雨、五十鈴、時雨(中破~大破)、夕立(小破)、村雨、那珂  護衛艦の臨時の会議室には天龍、龍田、五月雨、那珂、五十鈴が集まった。全員あらゆる艤装のパーツは帰還後のメンテのため外して身軽になっている。隣の鎮守府側としては短髪の少女がいる。角のような艤装

同調率99%の少女(3) : 撤退戦

--- 4 撤退戦 那珂は五十鈴、五月雨、村雨とともに重巡級の注意をひきつけ、夕立と時雨を逃がすことに成功した。というよりも、重巡級の深海凄艦は時雨たちに興味を示さず、悠然と那珂たちの周囲を回るだけ。あれ以来攻撃を仕掛けてこない。これを好機に那珂たちは攻撃を仕掛けたかったが、装甲と思われる鱗や甲羅のようなものが硬すぎて単装砲・連装砲では歯が立たないのだ。無駄弾を撃つのはやめている。 「あんなアホみたいにでかい生き物がこっちに何も仕掛けてこずに周りをうろちょろするだけなんて、

同調率99%の少女(3) :  弱まる艦娘たち

--- 3 弱まる艦娘たち 戦場の並びとしてはこうなっていた。(深海凄艦=敵) 前方:  敵重巡級x1  天龍(小破)、吹雪、深雪(小破)、  白雪(中破)、龍田  敵軽巡級x2 後方:  那珂、時雨、夕立  敵重巡級x1、敵軽巡級x1  五十鈴、五月雨、村雨 「あ、雨だ……」と五月雨。 「ちょっとまずいわね。」と五十鈴も何かが気になった様子。  一方の那珂たちも。 「雨かぁ。このまま長引くとまずいかもね。」と那珂。 「なんで?」  とよくわかっ

同調率99%の少女(3) :  作戦開始

--- 2 作戦開始 偵察機を飛ばして周辺の様子を確認しようと、那珂は開始直前の最終打ち合わせで提案した。しかし隣艦隊の天龍と龍田は持ってきていないし、そんなもの必要ないという。万が一の備蓄として東京都職員が持ってきていたので、那珂はそれを使わせてもらうことにした。  艦娘が使用する艦載機の元になったドローンは、出始めた50~60年前には巨大なものであり、玩具だった。世界中の企業により改良が進み、軍事、政治運用が世界中で定着していった。そして20xx年では超小型の装置になっ

同調率99%の少女(3) : 出港

--- 1 出港  護衛艦の中では基本的にはそれぞれの鎮守府のメンバーで固まって過ごす。合同の任務のため作戦会議がある際は鎮守府Aからは旗艦五月雨と那珂が、相手からは旗艦天龍と龍田がその場に集まった。  今回の任務はあくまで隣の鎮守府が主体なので、相手の天龍から作戦の説明があり、たまに補足として東京都の職員が口をはさむ程度であった。なお相手の龍田はまったく口を開かない。  事前に東京都の調査により、深海凄艦が集結しているとされるポイントは大体絞りこまれていた。そのため単

同調率99%の少女(3) : 初の合同の出撃任務

=== 3 鎮守府の日々2 === --- 0 初の合同の出撃任務 那珂にとって最初の出撃任務からしばらく経った後、鎮守府Aにとって初めて他の鎮守府との合同出撃が発生した。といっても対等な参加ではなく、あくまでその鎮守府の艦隊の支援という立ち位置だ。隣の担当海域の鎮守府との合同で、日本本土から少し離れた、どこの鎮守府の担当でもない海域に集結しているとされる深海凄艦の集団の撃破だ。この任務は西脇提督が隣の鎮守府に掛けあって実現した。  艦娘の出撃任務の別のパターンは、大本営