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分割された風景

写真家「ソール・ライター」の過去作で有名なのは、雪景色の中の赤い傘だったり、または何本もの直線で分割されたスナップだったりします。

ソール・ライターが広く知られるようになって、私も彼の作品を目にしました。
そしてその作品に、私は強い「シンパシー」を感じました。
所謂「視点」というものに、共通性を感じたからです。

2006年頃の写真です。
この頃から、画面を直線で横切るという方法を使い始めました。

写真の入門書を見ると「画面を直線で切ってはいけない」というような事が書かれています。
そういう意味では、この写真は落第です。

私はこの時、こう考えました。
「所謂黄金分割の位置に直線を置けば目立つだろう…だが、僅かに外れた位置に置けば、視線を占有させないで済むかも知れない」

背景の男性にまずは目が行きました。
だから男性は目立ちやすい位置に入れたい。
しかし同時にこの風景そのものも目立たせてあげたい。
三台のバイク、春の桜、後ろの大きなビルまでも。

そこで考えたのが「視点を誘導しながら見せよう」という試みでした。
手前から奥に。
最終的には男性の姿に固定されるように。

見える風景の中の「何か」を追うのじゃなく、その風景全体を凝縮して伝えたい。
…欲張りなのでしょうか?。
私はただ、目の前にある風景を見ていて、どこか「気持ちよかった」のです。
だからこそ、伝えたかった。

…何を撮りたかったか分かりますか?。
実は壁の影になった部分に「鳥」が一羽いるのです。

この時は望遠レンズを持参していなかった。
しかしどうにかこの鳥を写したかった。
そこで考えたのが「目立つ直線上の側に鳥を置いて撮る」という方法でした。

こうすると「異物感」が演出出来ます。
なんだこれは?ゴミか?という感じで。
凝視させることで、拡大と似た効果が期待出来ます。

今は亡き某先生が写っておりますが…私は自民党のシンパではございません(汗)。
人間の「顔」というのは、風景の中では非常に目をひく存在になります。
それが二つ並んでおりますので、特にメッセージとして強いですね。

この写真は、分割効果を狙っているわけではなく、積木のような方形を組み合わせて構図を作ろうと考えました。
日本の木造家屋は、基本直線で構成されています。
これで構図を作っても良いのですが、メッセージ性には欠けます。
なのでポスター…それも人の顔が堂々と載っているものと言えば政治家絡みが多いので、それを掲示している家を探して撮影しました。
この手法は分割とは方法は逆になりますが、効果としては良く似たところがあります。

これは「写りこみ」を意識して撮影したものです。
向かいのお店のシャッターが写りこんでいます。
中心近くに上下を貫く支柱が走っています。

この場合、ウインドウの写りこみが無いと支柱が目立ちすぎてしまって、画面が左右に分割されます。
割合を不均等にする事と、やや黄金分割線から外すことで回避はしていますが、足りません。
なので、横に帯状に写りこむシャッター等を入れることで、視線の集中を和らげています。
また、写りこみは前後への奥行きを意識させるので、平板になりがちな構図に立体感を加味できる期待があります。

この写真の主体は置物のタヌキで、楽しげな風景を写そうと工夫をしてみました。
元はカラーですが、少しとっちらかり過ぎの印象だったので、敢えてモノクロ加工しています。

構図を強く意識しての写真は、ある意味平板に感じられる事が多く、その部分をもって嫌われることも良くあることです。
その事には特に不満もありません。

ただひとつだけ言いたいのは
「何かを共有する」ために凝らす工夫が、私の場合は非常に内証的であり、それゆえに綺麗な写真とは縁遠いということです。
万人が評価してくれる写真ではなくて、個人的な感動と感傷について写したい。
それが私流の、スナップの「流儀」なのです。



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