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全商簿記2級 第96回解説
こんにちは!
フリーランスの簿記講師、おしばです。
2023年1月実施の「第95回」から出題内容が変更された全商簿記2級。
今回は、新試験2回目となる「第96回」のポイント解説をします!
問題の解説動画を、毎週月曜日18時にUP予定です^^
解く順番と時間配分
試験問題を解くときは、
・自分が手を動かしやすい順番
・配点が大きい順番
で解いていくのがベストです。
この解きやすさと配点を考慮して、私個人的におすすめの順番は…
問題1(12点)→6(12点)→5(24点)→4(24点)→3(8点)→2(20点)
※カッコ内は目安配点になります。
問題1を解いたあと、問題6からさかのぼって解くという順番です。
仕訳はウォーミングアップにちょうどいいので、まず最初に1と6を解きます。そして、仕訳の定番問題の決算問題5と記帳問題4を解き、ここまでで1時間以内に70点近くを目指します。
(電卓に自信がある人は1→6のあと、伝票問題3に移ってもいいと思いますが、配点があまり大きくないので後回しがベターかと思います。
残りの30分を使って、小問題で構成されている3と2で追加点を狙い、合格点を確実に狙うという作戦がおすすめです。
問題1:仕訳3題
a.有価証券の購入
・附随費用を含めて処理する
動画解説➡ https://youtu.be/d5CaDEROP7c
b.固定資産の売却
・日商簿記2級の定番問題
・間接法で記帳=減価償却時に「備品減価償却累計額」勘定を使って処理している
・商品代金以外で約束手形を受け取った=営業外受取手形
c.現金過不足の処理(内容が判明した)
・現金過不足を借方に計上している=現金を減少させている
(借方)現金過不足 13,000 (貸方)現金 13,000
➡帳簿残高よりも実際有高の方が少なかったということ
・内容が判明したら現金過不足勘定の残高を消す
=借方残高を消すために、貸方に仕訳する
・不一致額13,000円のうち12,000円しか原因が分からなかった
残りの1,000円は理由が分からないけど損している=雑損
問題2(1):勘定記入
日商簿記3級の第2問レベルの問題です。
勘定記入の基本的な解き方は、問題に提示されている情報を参考にしながら時系列に仕訳を書き出し、各勘定口座に記入するという方法です。
■今回与えられた勘定口座
・未収利息(資産)
・受取利息(収益)
■勘定記入ルーティン(本問題の会計期間は1/1~12/31)
~手順1~
B/S*科目(資産・負債・純資産)の、前期繰越額をチェック
*B/S…貸借対照表
今回の問題では「未収利息」がB/S科目に該当します。
未収利息のT勘定の中に「1/1 前期繰越額 12,800円」と記載されていますが、未収利息の借方残高に12,800円が残った状態で前期から当期に繰り越されてきたという意味です。
この前期繰越額から、前期の決算において
(借方)未収利息 12,800 (貸方)受取利息 12,800
という利息の未収分に関する振替仕訳を行っていたことが推測できます。
また、問題文に「4月末と10月末それぞれに、経過した6ヶ月分の利息を受け取っている」という旨の記載があります。
つまり、決算日直前の利払日(10/31)までは受け取り済みだが、利払日の翌日11/1~決算日12/31の2ヶ月分が未収であるということです。
2ヶ月分で12,800円なので、1ヶ月分の利息は6,400円であると分かります。
~手順2~
期中の取引を仕訳し、各勘定口座に転記する
■1/1:再振替仕訳
期首に、前期の決算で行った振替仕訳を元に戻す処理をします。
(借方)受取利息 12,800 (貸方)未収利息 12,800
➡未収利息のT勘定の貸方に、「1/1」「12,800」、相手勘定には「受取利息」と転記します。よって、①の答えは受取利息だと分かります。
■4/30:利息の受取日
経過した6ヶ月=11/1~4/30分の利息を「現金」で受け取っていると問題文に記載がありますので、利息を現金で受け取った処理をします。
(借方)現金 38,400 (貸方)受取利息 38,400
★手順1で1ヶ月分の利息が6,400円だと分かりましたので@6,400円×6ヵ月=38,400円
➡受取利息のT勘定の貸方に、「4/30」「38,400」、相手勘定には「現金」と転記します。
■10/31:利息の受取日
経過した6ヶ月=5/1~10/31分の利息を現金で受け取っていると問題文に記載がありますので、利息を現金で受け取った処理をします。
(借方)現金 38,400 (貸方)受取利息 38,400
★手順1で1ヶ月分の利息が6,400円だと分かりましたので@6,400円×6ヵ月=38,400円
➡受取利息のT勘定の貸方に、「10/31」「38,400」、相手勘定には「現金」と転記します。
■12/31:決算整理(未収利息の計上)
前期同様に、決算日直前の利払日(10/31)までは受け取り済みだが、利払日の翌日11/1~決算日12/31の2ヶ月分が未収であるため計上します。
(借方)未収利息 12,800 (貸方)受取利息 12,800
➡未収利息のT勘定の借方に、「12/31」「12,800」、相手勘定には「受取利息」と転記します。
➡受取利息のT勘定の貸方に、「12/31」「12,800」、相手勘定には「未収利息」と転記します。
~手順3~
P/L*科目(収益・費用)の残高を損益勘定に振り替えて、残高ゼロにする
*P/L…損益計算書
P/L科目の残高が、それぞれのT勘定に書かれたままだと利益計算をしにくいですよね。
そこで、「損益」勘定にすべてのP/L科目残高を集めて、利益計算をしやすくします。
今回の問題では「受取利息」がP/L科目に該当しますので、残高をすべて損益勘定に振り替えます。
(借方)受取利息 76,800 (貸方)損益 76,800
★受取利息のT勘定の残高は、
貸方の合計38,400円+38,400円+12,800円=89,600円から借方の12,800円を差し引くと、貸方に残高76,800円があることが分かります。
➡受取利息のT勘定の借方に、「12/31」「76,800」、相手勘定には「損益」と転記します。よって、②の答えは76,800だと分かります。
ここまでで解答はすべて埋められたので終了しますが、勘定記入の手順には続きがあります。
手順4.損益勘定の残高を繰越利益剰余金勘定に振り替えて、残高ゼロにする
手順5.B/S科目(資産・負債・純資産)に、次期繰越額があれば記入する
このような流れを経て完結します。
問題2(2):用語
前回の95回では日商簿記3級でよく問われる「決算関連資料」の名称問題が出題されました。(P/L 損益計算書・精算表)
今回は「商品有高帳」に関する問題でしたが、aに関しては「first=先」さえ分かれば確実に正答できるはずです。
bは少し難しいかもしれませんね。
単価が上がっている中で"移動平均法"を採用した場合、
先に仕入れた安い仕入価格+後に仕入れた高い仕入価格の平均値が次の月に繰り越されます。
それに対して"先入先出法"の場合、
先に仕入れた安い仕入価格から先に販売するため、後に仕入れた高い仕入価格が月末に残ってしまいます。
よって、物価が高騰する中で先入先出法を採用している場合、移動平均法を採用しているときと比べて次月繰越額が「大きく」なる、が正しい答えになります。
問題2(3):本支店
本店集中計算制度を採用している場合の、aとbの仕訳を解答する問題です。
コツとしては、本支店会計であることは気にせずに、与えられた立場の仕訳を普通に書き起こしてから正しい解答に書き換える、という方法で練習することです(私は高校生の時にこのやり方でマスターしました)。
a.北上支店の仕訳
本支店会計を無視した北上支店の仕訳
(借方)買掛金 682,000 (貸方)現金 682,000
↓
本店集中計算制度に書き換え
北上支店以外の科目を「本店」に書き換えます
(借方)買掛金 682,000 (貸方)現金 本店 682,000
よって、答えは
(借方)買掛金 682,000 (貸方)本店 682,000
となります。
b.花巻支店の仕訳
本支店会計を無視した花巻支店の仕訳
(借方)損益 473,000 (貸方)繰越利益剰余金 473,000
↓
本店集中計算制度に書き換え
花巻支店以外の科目を「本店」に書き換えます
(借方)損益 473,000 (貸方)繰越利益剰余金 本店 473,000
よって、答えは
(借方)損益 473,000 (貸方)本店 473,000
となります。
問題3:伝票
入金伝票(現金が増加した取引)の左側に「現金」を書き込む
出金伝票(現金が減少した取引)の右側に「現金」を書き込む
のように、ひと工夫するだけで間違いなく正答できます!
言葉で説明するのが難しいので、動画でぜひご確認くださいっっ
問題4:元帳、補助簿への記帳
正直一番だるいですよね…笑
一番嫌いだった問題です笑
(1)の総勘定元帳への記入は、可能であれば仕訳をメモせずに直接記入して時短を図りたいです。
(2)はできる限り何度も問題の資料を読み返さないようにするため
当座預金出納帳…(1)で記入した当座預金勘定を参考に
買掛金元帳…(1)で記入した買掛金勘定を参考に
商品有高帳…(1)で記入した仕入勘定と売上勘定を参考に
記入するとスムーズです。
面倒くさがり屋の自分のやり方を動画で説明したいと思いますっっ
問題5:決算
一番練習の成果が出やすいのが決算問題です!
どんな解答形式であっても、決算でやることは同じなので動画を参考にしながら早く、正確に解く練習をしておきたいところです。
問題6:株式会社
a.剰余金の処分・配当
・日商簿記3級と2級の間レベルの問題
・問題文に記載されている繰越利益剰余金の金額にだまされないように…
b.法人税等の計上(確定申告)
・日商簿記3級の第3問では定番問題
・確定した税額から中間納付額を差し引いた金額を未払法人税等として負債計上する
c.株式の発行(会社設立)
・日商簿記2級レベルの問題
・会社設立のために要した諸費用は「創立費」で処理
・前回の第95回のように、会社設立後に増資を行った際にかかった株式発行費用は「株式交付費」で処理しますので、間違えないように要注意
ポイント解説は以上です!
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公益財団法人 全国商業高等学校協会
令和5年6月25日 第96回 簿記実務検定試験
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