映画「パラサイト」レビューについて

アジアの母国語で作成した映画でオスカーを獲ったことで世界中に驚きと感動をもたらした映画「パラサイト」。

このことで、松本人志さんが「ワイドナショー」にておっしゃってたことが、そこまでおかしくないんじゃないか?と思ったのでその理由を話します(批判ではなくて、ここはこうなんじゃないか?と言う意見です)

松本人志さんは「映画パラサイト」を観た感想として"前半は良かったけど、元家政婦が出てきたあたりからガラッと物語が変わった。元家政婦が訪ねてきても普通玄関を開けるか"と言うことをしきりに不思議がっていました。

加えて"クビにしたダスキンのおばちゃんを部屋にあげるか"と言っていました。つい笑ってしまう例えです。

(ここからはネタバレを含みますので、観ていない方はご注意ください)

大まかなストーリーは、みんな仕事をなくし進学も就職もままならない貧乏家族4人は、細々と内職でつなぎながら半地下に暮らしていた。そんなある日、息子が友人から頼まれて裕福な家庭の一人娘の家庭教師になった。身分を偽り一家の内情にうまく入り込んだ息子は、次々と我が家族を金持ち一家に引き入れる。

息子は自分の家族だと言わないまま、長男の美術家庭教師として妹を、現役運転手をクビにするよう仕向けて父親を、最後には古参の家政婦をも追い出して母親を引き込む。
息子は巧みな話術で次々と計画をものにし、何と無職一家は全て身入りのいい仕事を獲得した。
夢のような生活だ、と留守を預かった家政婦の母親のもとに集結し、豪邸で勝手に祝杯を上げる貧乏一家(この方がどうなんだ、と個人的に思う)。

そこへ、やってくるのだ。元家政婦が。

インターホンに映った姿に驚愕する一家。外は嵐、モニターの元家政婦は全身びっしょりで「入れてくれ」と懇願してくる。
もともと考えることが苦手な父親は狼狽え、息子にどうするかとすがるが「これは計画にはないことだ」と誰も妙案が浮かばない。

元家政婦が嵐にもかかわらず必死の形相で中に入ろうとした理由は1つ。

「金持ち一家も存在を知らない、秘密の地下に自分の旦那を匿ったままだから」

突然の解雇だったため、様子を見ることも、連れ出すこともままならなかった元家政婦は心配で心配で、主の留守をようやく訪れたチャンスと勇んでやって来たのだ。

元家政婦は実は金持ち一家が引っ越す前からその家に仕えていて、唯一秘密の地下の存在を知る人間だった。そこへ借金苦の旦那を取り立てから守るためにやむなく引き入れていたのだ。

旦那の安否を確認したい一心で必死に「忘れ物をした」と嵐の中懇願する元家政婦に、断る理由も思い浮かばず玄関を開けてしまう現家政婦の母親。

すべてが計画外の出来事ゆえ、一家は対応する術を持っていなかった。そして何より危機に応対する能力も頭もなかったのだ。

忘れ物を探すと嘘をついて上がり込む様子を陰で伺っていた貧乏一家は、今度は逆に自分たちが脅される運命に陥ってしまう。

ここから物語は大きく展開します。

自分たちよりも前に、半地下どころか秘密の地下に巣食っていた奴がいた。
存在を消され、元家政婦である妻の施しだけを頼りに息を潜め、金持ちの主を敬いながら些末な日々に命を繋いでいた男。

貧乏一家よりもさらに切実とした存在に愕然とし、混乱した挙句に思いも寄らない行動に出てしまう貧乏一家。
そこへ、金持ち一家が予定を繰り上げて突然帰ってくると告げる。

この混乱から一気にクライマックスまで。
奪うもの、奪われるもののコントラストが色濃く出てくるのです。

差別という誰の心にでも覚えがあるような、ほんの些細なことを「匂い」という非常に私的で感覚的な表現で、ポン・ジュノ監督は描いているのです。
その「匂い」が引き金となり、最後の悲劇が起こる。


もしクビにした家政婦が訪ねて来たら訝って警戒するだろうけれど、この家政婦を家に入れたのは主ではなく現家政婦で、しかも留守中に自分が勝手に家族を引き入れて好き放題している最中。
息子の立てた計画に乗っかっただけで仕事を得られたと単純に喜ぶ両親は、イレギュラーにはとことん弱く、息子自身もたまたまうまくいった計画が身の程知らずだったと後悔するほどにこれまで不運な人生を送っていた。
そこにこの貧乏一家の悲しい綻びが凝縮されている。

そう思うと、単純には「クビにしたダスキンのおばちゃんを忘れ物があるからって家に入れないだろう」とは言えないのかなと個人的には思うのです。映画はこのおかしな行動の理由を説明していますので、ストーリーが破綻しているとは言えないと思います。

解説の有村昆さんが、これまでのアカデミー賞を選出する会員はアメリカの白人を贔屓しているなどと揶揄されて来たことを背景に、数年前から会員に幅広い価値観を持つ人種や性別の登用を積極的に行い、それが今回の受賞にもつながったのではと解説していました。
これまでハリウッド映画で評価の高かったのは、比較的結末の予想できる物語(史実、アメコミなど)だったけれど、オリジナル脚本という点でも観客を魅了した要因があったのではと評価していました。

昨年パルムドールに輝いた是枝監督の「万引き家族」も、貧困をテーマにしたオリジナル作品でしたし、今後こう言った邦画が生まれて、世界へ発信されることを期待したいです! 

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