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ヒマラヤ上場ー目論見書から中国音声の最大手を解剖する

どうもZ Venture Capitalの李路成(@lucheng_li)です。年始から音声領域大注目していました。ゴールデンウィーク中、中国音声アプリNo.1のヒマラヤが上場申請を出したため、上場目論見書からヒマラヤの成長軌跡を詳しく見ていきたいと考えています。

まず、おさらいです。ヒマラヤは中国語で「喜马拉雅」と書き、文字通り世界最高峰と同じ名であり、高く聳える山でも登り詰める思いが込まれているようです。余談ですが、創業チームは非常にSEOを気にして、ヒマラヤって単語は山でしかないので競合はあまり入ってこずと見立てて、ヒマラヤにしたという説もあります。

ヒマラヤは2012年設立され、2021年1QではMAU2.5億人、モバイルアプリユーザー日平均使用時間141分、アクティブコンテンツクリエーター(配信者)が520万人います。

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ヒマラヤではこんな内容を聞けます。

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PGCコンテンツ:聞く小説、お笑い、歴史著書など

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PUGC&UGCコンテンツ:ポピュラーサイエンス、恋愛、自己啓発、ビジネスなど

主要な機能として音声コンテンツ視聴、音声ライブ視聴、音声配信、音声ルーム(一緒に聞く)、音声吹き替え(有名コンテンツに自分の音声を被せて配信)、ソーシャルタイムライン(他の人の投稿が見える)、ショートビデオ視聴など。

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音声を「一緒に聞く」機能は別記事で詳細を書いていたので併せてご覧ください。

ヒマラヤは2012年に設立され、累計150Mドルを調達しました。投資家にKleinerPerkins,Xiaomiなどのメンバーがいます。

目論見書ではようやく音声プラットホームの稼ぐ力を明らかになりました。

全体的なPLとしてはまだ赤字が続いているのですが、2021年の3ヶ月間の伸びが顕著です。

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売上も昨年度165%伸びているのですが、販管費も157%増加しました。

ユーザー数は特に2020年1月ー3月のクォーターでは昨年度対比で183%成長を遂げていて、コロナの影響は明らかなものです。

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その中、有料会員数と課金率も改善されています。ただ、セールスマーケティング費用も追加投資され、去年の1.93倍になっているので、持続可能な成長なのかどうかはこれから答えが上がると考えています。

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また、まだ赤字のままでこれから音声のマネタイズはまだ不安要素残っているように見えます。一体どのように売上が構成されているかというと、20211Qではサブスク(会員)44.6%、広告23%、ライブ配信16.4%、教育サービス13%、その他3%のようになっています。20204Qだとサブスクが56.3%、教育は3.6%、教育カテゴリーの伸びは非常に興味深かく思います。

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競合のライチ社も決算公示されていて、2020年4Qの伸びは過去から見ても記録的な成長であったようです。

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さらにライブ配信でお金を回収すること自体は徐々に中国のインターネット業界で共通認識になり、SNS&コミュニティ絡みのアプリはほとんどライブ機能を実装していて、ヒマラマもライブ配信を通じて2018年から20%前後の売り上げを創出していました。

今後のユーザー成長に音声のコンテンツやクリエーターは必要不可欠です。データでみると、UGCコンテンツクリエーターは圧倒的に多く、510万人に及んでいます。純粋なPGCプラットホームでもない一方、UGCでもありません。

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ヒマラヤのグロース戦略はざっくりまとめると三つのステージを経過したと考えます。

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ヒマラヤは2014年当初はラジオをコンセプトにしてサービスを提供していました。PGCプラットホームを目指しながら、UGCコンテンツ(個人の配信者)を取り入れてユーザー層&コンテンツの基盤を拡大してきました。Wechatログイン、リスニングリストのシェアなどリファラルハックをも同時に進行していました。

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2015年から有名トークショー「好好说话」とタッグして、ビデオを音声化して再リリース、結果大ヒットしていました。

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2016年は中国の「知识付费」(知識となるコンテンツに課金しよう、というブーム)と言われ、テキストの内容であれ、音声の内容であれ、価値のある知識であればクリエーターに還元しましょう、と世の中の動きが出ていました。そのブームに乗って、ヒマラヤはライブ配信機能、UGCクリエーターの収益化還元アップなどを行い、配信者層が厚くなりました。

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その後、123カーニバル、6.6会員の日、423本を聞くの日などセールスイベントを作り、ユーザーにお試しできるタッチポイントを作り、ユーザー数がさらに増えました。

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今後のマネタイズ戦略に関して、ざっくり計算してみると課金ユーザー1390万人が平均毎月345円ほど支払いをしています(広告収入を除く)。黒字に転換するまでまだ一工夫が必要に見えます。

ヒマラヤはこれからは有料会員、ライブ配信で収益基盤を固めながら広告商品、教育コンテンツを拡充し、IoTの設備などで音声のマネタイズ能力をアップグレードしていくだそうです。

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最後にまとめです。中国No.1の音声プラットホームの上場は「音声のアプリでもしっかり収益化できる」ことの信頼材料をもらいました。まだ赤字ではありますが、ユーザーの成長、コンテンツクリエーターの増加、売上の伸び、は音声の未来の青写真を見せてくれました。

これからヒマラヤの未来も、日本の今後の音声市場に大いに期待です。

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ちなみにヒマラヤ日本もありますー

私も毎日Stand.fmで音声を配信しておりますので、よければ是非聴いてみてくださいー @ロゼの中国ニュースレター


参考文献

1,Fー1資料https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001847738/000119312521143867/d118108df1.htm#rom118108_3

2、ライチの20204Q決算資料

https://ir.lizhi.fm/static-files/e2617804-5485-4faa-adac-0b1f4fca97c2

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