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【ゼロからわかる中国ビジネス③】ーメディアエコシステム

ゼロからわかる中国ビジネス、第三回です。今回は中国のインターネットメディアのエコシステムについてお話しします。

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中国のSNSメディア形成の歴史

2008からインターネットメディアサービスの歴史を簡単にまとめました。

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ご覧の通り、大きく3つのフェーズがあると考えています。

 フェーズ1PC時代--ブログの一方通行


インターネットバブルの余韻が中国に舞い込み、2005年に中国政府が「インターネット情報サービス管理規定>を出し、オンライン情報サービスが出やすいに状況に整いました。そこで2008年に、カイシンネット(开心网)、校内ネット(校内网)といったサービスが爆発的に普及し、それぞれサラリーマンや学生の中に人気を博していました。

人気だった理由も極めて簡単です。パソコンを持っていたら何をするのですか?その年代の答えは、ゲームをするか、他の人と連絡と取り合うかどちからです。当時のフィーチャーフォンのメッセージ機能よりリッチな情報を見れて、一緒にちょっとしたゲームしたりして、ネットのユーザーにとってかなり革新的な取組だったのです。

ウェブを中心にサービスを展開し、自分の写真をアップしたり、ブログを書いたりすることが一番使われる機能です。mixiをイメージしていただけると分かりやすいと思います

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特に新浪ブログ(新浪博客)と言うサービスはネットでブログをシェアし合うサービスですが、時々大胆な発言をする人気な作家韓寒さんがそこに1億人の訪問者数(2007年)を持ち、新作が出されるたびに世間が騒ぐまででした。誰しもそのときにインターネットが持つ力に魂が奪われます。

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 フェーズ2スマホ時代、個が力を持つ時代に

次第にスマホのシフトが行われました。

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*艾媒数据 『中国スマホの普及率の推移と予測2015-2023』

2010年以降に計り知れない中国のスマホベースのサービスがたくさん出てきました。代表格を持っているのは「微博」(ウェーボ)、「微信」(ウェーシン)、「知乎」(チーフー)この3つのサービスです。

  「微博」(以下ウェーボ)

ウェーボといえば、中国のTwitterのようなものです。

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2009年新浪ブログ(以下新浪)がベータ版をリリースして、2010年までは7500万人の登録ユーザーを獲得できました。背景にブログが長い文章を書かなければならないという制限に対して簡単に自分の考えを発信したいニーズが根強く存在しているからです。

基本的な機能として@、ダイレクトメッセージ、コメント、リツイートをツイッターのように提供をしていました。

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最初は有名タレントを招待し、すぐにも注目を集めました。有名人をフォローして、友達のように有名人の投稿コメントしたり、シェアしたり、ユーザーにとってなかなか新鮮な体験でした。しかもフォロワーが一定数付いてれば公式認証してあげるという機能は自己顕示欲を満たす秀逸な手段として一般人を魅了しています。

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しかし、その後騰訊(テンセント)も網易(ネットイース)もチャレンジャーとして参上し、似て非なるサービスを提供していました。網易は2010年サービスリリースして2012年2.6億人のユーザーを達しました。しかしながら、ウェーボの新規登録ユーザー数に負け続き、キャッチな新しい機能開発も失敗し、結局2014年にはサービスの規模を縮小し、最終的に閉じていく一途でした。テンセントも社内事業戦略上、本気でウェーボの対抗商品を出そうと思っていないなど総合的な理由なため、うまく行きませんでした。

2013年ウェーボはアリババと戦略的協力関係を提携し、アカウント連携、データ交換、ペイメント様々な面において利害一致しました。順風満帆にユーザー規模や売上を伸ばして2014年にウェーボが上場しました。

ウェーボの一番なインパクトは、インフルエンサーのアーリーアダプターを創造したことです。 誰でも数千万のフォロワーを作れるみたいなドリーミーなストーリーが広がり、次第に人々が「個人でもメディアになれる、発信力がある」と思うようになりました。特にエンタメ系クリエーターがウェーボを活用する傾向があります。

  「微信」(以下ウェーシン)

ウェーシンといえば、中国のLINEのようなものです。

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QQというPCベースのダイレクトメッセージングサービスから、スマホ時代にウェーシンを生み出した親は存在しています。その人は「張小龍」といって、中国本土に名だたるプロダクトマネージャー&プロデューサーです。

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この人はアメリカのKikというアプリを見て、「スマホで人とやりとりできるサービスは人が欲しいじゃないか、そして機能が超シンプル感じで」と判断し、QQのスマホ版より100倍簡素化したものを作り上げました。ただ最初は知り合い間のサービスでしたが、「漂流瓶」、「近くにいる人」、というマーケ施策を考案し、案外ヒットしました。

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メッセージングだけではアクティブ度が足りないので、タイムラインを追加したらどうだ、ユーザーがテキスト写真以外にビデオを共有できるようにしたらどうだと機能追加し、やがて國民級なサービスになりました。

一番個人的に注目する、そして忘れられがちな機能がありまして、それは公式アカウントというものです。

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分かりやすく言えば、ブログがウェーシンの中に読めて、簡単にフォローできて、シェアできるというイメージです。それに会社であろうと、個人であろうとアカウント作れて、自分のタイムラインにすぐシェアできるので、ある程度のインプレションは確保できています。

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ですから、周りの誰かが自分でメディアを作り始めたみたいなことは2013年ごろよく耳にしました。

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ウェーシンの一番なインパクトは、ウェーシン内に独自なコンテンツ流通システムを作り上げて、ウェーボで写真映え、短いテキストの情報発信に満足していない、本気で社会的なトピックにオピニオンを言いたいクリエーターをたくさん引き寄せたことです。ですから、良質なコンテンツは百度(バイデゥ、中国の検索エンジン)になく、ウェーシンにあるんです、と徐々に人々のマインドセットを変え、中国のメディア構造が欧米と違う生態系に発展し始めました。


  「知乎」(以下チーフー)

ウェーシンといえば、中国のQUORAのようなものです。

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チーフーは初期にかなり青臭いプロダクトでした。ファンダー周源は人の知恵、ナレッジのシェアを最大限に尊重すべきと考え、2010年創業してから2年間はユーザーがインバイトされてなければ、サービス利用できないシステムでした。そこで、信頼関係を持っている人だけが使う環境なので、中にあるQ&Aもかなりハイクォーリティでした。

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初期に培っていたコンテンツの質と良好な議論の雰囲気は評価され、知識人、学生間でバイラルに普及しました。もともと人の検索に答えを出すとミッションを抱える百度は競合プロダクトを出すのも然るべきでした。もちろん参入遅れ、パワーを持つユーザーのケア不足など様々な理由で、百度はシェアを取れませんでした。

チーフーの一番なインパクトは、アカデミックチックな交流プラットホームを提供した上で、知識発信に興味ある人が相対的に注目されやすいメディアを作れました。こうやって「高教育水準層」(特に大学生)が特に愛用するプラットホームになり、ウェーボやウェーシンが取れないポジションをしっかり確保できました。

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上記の3つのサービスは共に2010年前後リリースされ、3年ほど経てから急速に成長ブレーキをかけたのです。
共通点としては、誰もが自分自身を発信できるプラットホームを作り、ユーザーのタレントを最大限にしてプラットホーム価値を転化したところです。「個の情報発信」は間違いなくキーワードになります。

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 フェーズ3AI、個性化時代、あなたがあなたが好きな内容を決まる

やがて2015年ごろ、パーソナライズが叫ばれるようになり、バイトダンスという会社はずば抜ける存在となりました。

  今日頭条(ジンリートゥティァオ、以下JRTT)

JRTTといえば、中国のスマートニュースのようなものです。TikTokよりだいぶ知名度低いですが、ニュースアプリ(メディア)としてマーケットの破壊者のような存在です。

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創業者張一鳴が謙遜であり、狂人であり様々な顔を持つ人です。JRTTを作る前の武勇伝をさておき、2012年に彼はJRTTのプロダクトをリリースしました。ニュースをスクレイピングして読者の興味関心や行動に合わせて緻密なアルゴイズムを組み、ユーザーが離れないような仕組みを作りました。案の定、公開して90日のタイミングですでに1000万のユーザーがいて、DAU(毎日アクティブなユーザー)が100万人を突破しました。

2015年までは様々な試行錯誤を行いまして、ショートビデオ機能(Tiktokの由来はこれと関係深い)、Q&A機能等を追加しました。ユーザーのインタラクティブなコミュニケーションをテーマにした開発は2.2億人のユーザー規模を創りました。

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JRTTの課題はいかに良質なコンテンツを獲得して、賢くユーザーにディストリビューションすることです。課題の前半は彼らウェーシンと似たような解決策を取りました。というのは、「頭条号」というたくさんの個人のニュースクリエーターをアカウント登録してもらって、閲覧者が増えればインセンティブをさらに増やすということです。こうやって30万超のクリエーターを獲得し、スクレイピングと自プラットホームオリジナル両輪でコンテンツをジェネレイトしました。

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JRTTのインパクトはアルゴイズムがしっかりユーザーのユーザーのスマホ使用習慣を変えられるということを証明したことです。個人のクリエーターでもアルゴイズムによってユーザーのトップページに勧められ、突然に跳ね上がるような注目を集めることも少なからずあります。

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 まとめ

まとめると、ポイントは三つです
・中国のメディアシステムの形成に大きく三つのステージがあって、長文ブログをPCに書く時代から、徐々にスマホ中心にエンタメ系、経済社会、知識共有とそれぞれ大きなメディアプラットホームが形成していき、それから、ユーザーが受動的に情報を手に入れるパイプラインもできるようになったという流れです。
・メディアのプラットホームの巨大化により、検索エンジンのパワーが相対的に落ちていき、欲しい内容は検索エンジンになくて、メディアのアプリにあることは多々あります。
・個人がメディアになる可能性も大きいし、なっている模範例が多いので、いわゆるKOL(Key Opinion Leader)に対してとても寛容な環境だと言われています。そうやって、市場に大きなKOL供給ができて、MCN(Multi-Channel Network)の芽生えは静かにできつつありました。

このメディアエコシステムはどれほど重要性を持っているのだろうか。
もちろん上記の4メディア以外もたくさんサービスがあります。しかし、この四つはどれも億単位のユーザーを抱えて、平均毎日数十分の利用時間を占めているサービスです。言い換えると、国民の日常生活はすでにこのサービスたちと密接な関係性になり、ほとんどの意見形成、世論拡大はこの4つのプラットホームです。
さらに、プラットホームそれぞれの代表的なインフルエンサーは違う雰囲気を持っています。例えばチーフーであればちょっと学術的な人が支持されますし、ウェーシンであれば少し馴れ馴れしい文章を書けるクリエーターは愛されます。

MCNだの、ライブコマースだの、中国のECだの、そういうのを理解するためにエコシステム全体像を理解するはとても大事です。日本のデジタルマーケをやるに、SEOと有料広告の理解が必須みたいに、中国のデジタルマーケティングには各プラットホームの立ち位置と、その中の発信者の役割を理解しなければいけないです。

図の通りに、日本がそれぞれ、CM,SEO,SNS,有料広告のところに、人を中心としたメディアは中国では流行するモデルになっていると考えます。

広告主も中国のビジネスを研究する方も、メディア価値を十分理解した上で、どの媒体をアクセスすべきかは戦略的に考えなければいけないことになっています。

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以上は今回のお話でした。拙い文を最後まで読んでいただきありがとうございます。ご指摘などございましたらぜひお願いいたします。

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