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読書感想文「デイ・オブ・ザ・ロブスター」を読んで


冬休みなので、冬休みらしく、読書感想文を書きました。下書きなしで書いたら原稿用紙10枚になっていた。
(下のほうにテキストもあります)

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(テキスト版)
「デイ・オブ・ザ・ロブスター」を読んで
トラ猫

「ロブスターはやばい。」そう聞いていた。
タイムラインに流れてきたロブスターのウキヨエは、エビに人間の首から下が生えたようなかっこうをしていて、「これは、かっこいい!」とニューロンに火花が走った。読む前から、ロブスターにはどちらかといえば良い印象を持っていたといえる。

最初に読んだのは1である。当時ロブスター・トリロジーはブルーレイか何かの特典で、ニュービーが触れるのは難しかったのだ。1はだれでも無料で読めた。そして、「ああ、たしかにこれはスカムだな。」と納得した。全体的に雑なのだ。
たとえば、スリケンを受けたロブスターの悲鳴が「アイエエエ!」となっているところ。いつもの忍殺なら、ニンジャがニンジャの攻撃を受けた場合「グワーッ!」あるいは「アバーッ!」と叫ぶはずだ。断末魔にしても「グワーッ……サヨナラ!」と、いやにあっさりしている。ここは「アバーッ!アババババーッ!……サヨナラ!」ぐらい苦しみもがくシーンではないか。
さらに、文章がどことなく中だるみしている。冗長なのだ。「爆発四散を遂げた!」は「爆発四散!」か「爆発四散を遂げた。」のほうがより自然に思える。スピード感を重点するべきシーンで余韻を残すときの文を使っていたり、その逆であったりする。
文体のほかにも雑な部分はあるが、これは与太話でよくやるように、意図的にアラを出しているのかもしれない。

しかしながら、ゴーストライターにしては「出来がいい」のだ。冒頭の情景描写は、たしかに忍殺のエッセンスを押さえているし、BGMのクオリティが妙に高い。5ドルで書いたものではないように思える。
これは根拠のない推測だが、熱心な重篤ヘッズまたは、ビールで手がふるえていた原作者がこれを書いたのではないだろうか。前者であれば「では、その重篤ヘッズは誰か?」という謎が残るが、作品を『ニンジャスレイヤー』の公式コンテンツで発表できるほど原作者に近しく、加えてほんやくチームと連絡がとれる人物であることは想像できる。その条件にあてはまる、最も可能性の高いヘッズ。
それは……ほんやくチームその人たちである。
ロブスターの「原作者」だからこそ、彼らは事あるごとにロブスターを重点してくるのかもしれない。そして、ボンド&モーゼズも、この愛すべきエビをけっこう気に入っているのだろう。


長くなったので2の感想に移る。
こちらは1を元にして徹底的にスカムを突きつめた怪作だ。「読むクソ映画」としてのクオリティが異常に高い。文章だけで「ああ、予算が足りなかったんだな。」と思わせるテクニックがニューロンをさいなみ、ペンは剣よりも強しというコトワザを心で理解できる。今作はまさに、読む交通事故といえる。
私はニンジャスレイヤープラスで読んだので、他の被害ヘッズと傷を舐め合うことができたが、特典で読んでしまった方々の自我は大丈夫なのだろうか?そもそも大丈夫でない人が好んで購入するものだから今更かもしれない。

内容は、ストーリーとしては1と同じく単純明快で、ロブスターの生みの親であるナカタ研究員が復讐のためにロブスターと化してニンジャスレイヤーに挑むというものである。いかにもB級ホラーの題材だが、これを見事に文章で再現している。
安っぽいセット、雑な進行、続編があるかもしれないと思わせるラスト、そして読後の「私はなぜこんなことに時間を使ってしまったのだろう……。」という徒労感、これらの再現度が異様に高い。
ロブスター2の真の恐ろしさが発揮されたのは、ツイッター実況である。なにしろどんなにつまらなくても早送りできないのだ。無料コンテンツであるにも関わらず、読んだ後で「金かえせ」と叫んでしまった。
こんなことを言っているが、私はロブスター2が好きだ。皆そうなのではないだろうか?

細部を見ていこう。
まずは導入部、明らかに1よりもひどい。見たままを描写しているだけで文学性が全くないのだ。これでは小説ではなく職場の日誌である。意図して重要なエッセンスを抜いてあるのだろう。これがもしゴーストライターの作であったなら、逆に過剰なまでの「忍殺らしい」描写が入るだろうから、今作は間違いなく原作者の手によるものであるとわかる。
文体は低品質なのに、込められた狂気は通常運転、いや、さらにパワーアップしているのがなおひどい。ただのスカム文ではなく「おまえらのニューロンを焼いてやるぞ。」という熱意が感じられる。

ナカタ研究員、壊れる前から壊れているのではないだろうか?ロブスターなんか作るやつは頭がおかしいに決まっている。狂気が科学を進歩させ明日もヨロシサンということか。まあ、そういうカイシャなんである。
そんな発狂マニアックでもナンシーさんの豊満は魅力的に感じるらしい。ロブスターもそう思っていたようだが、バイオニンジャにも性欲はあるのだろうか?サヴァイヴァー・ドージョーのニンジャ達はとくに豊満に興味を示していなかったが個体差だろうか?この問題については別の機会にあらためて考えたい。

今作はスカム映画のアトモスフィアがていねいにちりばめられている。
熱湯プールのドライアイス煙幕めいた湯気は間違いなくドライアイスそのものだろうし、ロブスターのハサミばかり映っているのはハサミ以外の部分を作り込む予算がなかったのであろう。
よく読むと熱湯プールに落ちた気の毒なスクワッターが白骨死体と化している。本来、お湯は摂氏100℃以上にならないはずだが、これもたぶん茹で上がった状態の特殊メイクをする予算がなくて適当なガイコツの模型を持ってきたのだろう。
クローンヤクザの人数がやけに少なかったり、ニンジャスレイヤーがカラテでなくスリケンをメインに戦っているのも、そういった演出に凝る余裕がないからだ。むしろ、たったこれだけの予算でよくここまで工夫したものだ。
そうほめたくなってくるが、これは映画ではなく小説だ。後の原作者インタビューでは、執筆の際に予算感を意識していると答えていて、それが読者に伝わっているワザマエに脱帽した。

とくに好きなシーンは、ロブスターのハサミが茹で上がり、バイオ筋線維が白くジューシーに変性していくところだ。何度読んでも心がうきうきする。私はエビが大好きなのだ。サワタリやサブジュゲイターのバイオ筋肉も白くジューシーに変性するのだと思うとすごくワクワクしてくる。味はどうなのだろう?


さあ、いよいよトリロジー最終作の3に入ろう。私が最も好きな作品である。
今作はこれまでと違ってスカムではなく、正真正銘ホンモノとだれが見てもわかる内容だ。前半のテンドンにはニューロンを削られるが、そこでくじけずに読み進めてほしい。なんだか、『ドグラ・マグラ』のような薦め方になったが、内容もおそらく同じくらい狂っている。

感想は、サブジュゲイターがこれを見たら泣いちゃうんじゃないか、そんな未来だった。
放送当時はまだ「エグゼクティブ・スプレンダー」が公開される前で、彼の動向がよくわかっていなかったので、脳ミソだけがロブスター次元のプールに浮かんでいるんじゃないか、いやロブスターにとり込まれてヨロシ・ジツを使えるロブジュゲイターが誕生してしまうのではないか、などと心配になった。実際はこちらが引くほど元気そうでなによりだ。
あの手のヨロシトンチキ情報がとにかく好きなので嬉しいが、これを先に読んでネヴァーダイズを見てしまった人はニューロンが壊死したに違いない。ナムアミダブツ……と思っていたらヨロシティでばっちり丸焦げになった。サトル、おまえがロブスターだったのか……。ヨロシDNAに刻まれた本能なのか?
でもヨロシサンのCEOがサブちゃんでよかった。だって、ロブスターがパリのカフェにいたら市民が皆おかしくなってしまうだろうし、ロブスターvsカラテクマなんてヘッズが全員おかしくなって「アイエエエ!」「エビナンデ!」しか言えなくなるだろう。液体から誇らしげに身をもたげるシーンなんか、どう見ても水揚げだ。あれがヘリコプターから落ちてくる、なんという悪夢!重箱の中身は新鮮な海の幸がぎっしりだ。これはこれで見てみたいが、放送するには危険が高すぎる。

こうして振り返ってみると、最もロブスターっぽいのは2だったと感じる。
人工的に作られたスカムは天然のスカムをも超える。これこそ、バイオニンジャがオーガニックニンジャを超越する可能性を示唆しているのではないだろうか。
そう、海老の可能性である。
ロブスターはすでにヘッズの脳を研修している。それを知ってか知らずか、原作者やほんやくチームは時折ロブスター要素を投げつけてくる。カラテサソリが元はロブスターだったかもしれないなどと言い出してニューロンをいためつける。そして焼かれる側もそれを楽しんでいる。
みんなハッピーだ。それでいいじゃないか。

最後に、ロブスターはトンチキでありながら、読むほどに新たな世界が見えてくるコンテンツである。この機会に再読してみてはいかがだろうか。サトルがエビに見えてくるかもしれないが、それもまた楽しかろう。
未読の方はラッキーだ。なぜなら、ロブスターをまっさらな気持ちで楽しめるのだから。ぜひとも感想をツイッターなどに流してこの愛すべき海老のミームを広げていってほしい。

おわり

2020年1月6日


フルツとか医学書とか買います