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レビュー 22/23 リーグアン 第10節 リール×RCランス

こんにちは。今回は10月10日に行われた、22/23 リーグアン 第10節 リール×RCランス の試合のレビューをやっていきます。



フランス随一の盛り上がりを見せる[Derby du Nord]

第10節までにニース×マルセイユの「南仏ダービー」、ニース×モナコの「コートダジュール・ダービー」が繰り広げられてきましたが、今節では3つのダービーが開催されました。

今節ではブレスト×ロリアン、レンヌ×ナントの「ブルターニュダービー」がフランス西部のブルターニュ地方で開催されましたが、北フランスでは[Derby du Nord(日本語だとドゥルビィ・ドゥ・ノールといった発音)]が開催されました。

「ル・クラスィク」や「ショック・ドゥ・オランピック」にも負けないほどの情熱的なダービー、[Derby du Nord]を今回はレビューの前に簡単に紹介していきます。



実は違う地方のダービー

「ダービー」と聞くと、同じ地方のクラブ同士の対決を想像されるかと思いますが、実はリールとランスは地方が異なります。

2016年に地域圏が22から13へと再編され、ランスは「シャンパーニュ・アルデンヌ地方(Champagne-Ardenne)」から「グラン・テスト地方(Grand Est)」へ、リールは「ノール・パ・ドゥ・カレー地方(Nord-Pas-de-Calais)」から「オー・ドゥ・フランス地方(Hauts-de-France)」へと変わりました。

つまり、フランス北部にある有名な2クラブによるダービーであることをまず理解していただけたらと思います。



北フランスのダービーのこれまで

では地方が異なるクラブ同士にどのようにライバル意識が芽生えたのでしょうか。

ランスは今でこそシャンパンも盛えていますが、古くから民衆的な街で、労働者階級が多く、工業が盛んな街です。一方、フランス第4の都市と言われるリールは中流階級が多く、現代的かつ国際志向です。

こういったわずか40kmしか離れていない都市間で思想の異なりなどから徐々にライバル意識が芽生えていったというように考察されています。

初対戦は1937年に始まり、対戦成績はカップ戦や2部時代も含めて116試合中、リール45勝、RCランス37勝、34の引き分けといったほぼ互角の成績を残しています。

直近のシーズンはリールが力をつけて、直近9試合でリール5勝、RCランス2勝、2つの引き分けといった具合でしたが、昨シーズンはカップ戦含めRCランスの3戦3勝といった成績になりました。

フランス北部の覇権を争ううえで両者共に熱のこもった戦いを見せるからこそ、かなりの盛り上がりを見せるこのダービー。

今回DAZNで配信されたのをきっかけに、[Derby du Nord]を堪能すると共に、フランスのダービー事情を少し調べてみると楽しいかもしれません。



この試合の両チームのスタメン

赤:リール 灰:RCランス

「コートダジュールダービー」同様、前置きが長くなってしまいましたが、ここから普段通りレビューをやっていきたいと思います。



序盤から荒れ模様のダービー 冷静さを取り戻したのは

前節は数的有利になりながらも劇的なゴールでロリアンに敗れたリール。しかしながら、チームの状態は間違いなく最高に近い状態のまま良い方向へと向かっているように感じます。

一方、アウェーに乗り込んだRCランスはここまでリーグ戦無敗。前節のリヨン戦は少し難しい試合となりましたが、ソトカのPKによる1点を守り切ってほぼベストコンディションのまま試合に臨むことができました。

試合は4分にカボがイエローカードをもらったところから始まり、一気に荒れ模様を漂わせる空気感がスタジアムを包みました。

RCランスは守備はSBにWBが睨みつける形で、相手の中盤にはほぼノープレッシャー。フォファナとサメドは低い位置から攻撃を組み立て、前線ではオペンダがお決まりの相手とのラインの駆け引きで活性化。

そんな中でわずか10分台の時点で試合が動き始めました。ミドルサードでボールを奪ったところから、フォファナは素早く左サイドに展開。相手の中盤のプレッシャーが緩かったところで、ダヴィド・コスタは簡単に前を向くことができ、それを斜めの追い越しの動きを見せたマチャドがエリア内で倒されてPKを獲得しました。

リールは相手の3バックにウィングとデイビッドの3人でそのまま当たるという守備で望みましたが、流れとしては乗り切れないままに、PKを献上してしまいました。

このPKが序盤ながら試合を大きく動かす出来事になるであろうと個人的に予測していましたが、ソトカのPKはシュヴァリエが止めました。

このPKストップから徐々に流れが舞い戻ってきたリールは攻撃面で良さが現れてきました。エンジェルはフリーマンとして動き、ウナスは中央寄りのポジションをとって背後のデイビッドを意識しながら攻撃を組み立てました。

一番の狙いとしては相手のMFとCBのギャップをうまくつければというところでしたが、うまくいかない時こそトランジションのところで試合を有利に進めました。

キックミスにより先制点とはいかなかったRCランス。しかしながら、このことをきっかかけに盛り上がるリールに対してRCランスは守備意識の高さをチーム全体で表現しました。

しかしながら、相手に何度かギャップをつかれると少し対応が後手に回ってしまい、苦しい時間が続きました。攻撃は主に左サイドで攻撃を仕掛けるものの、いつものような躍動ぶりは見られませんでした。

リールがホームの声援のもと圧を強める中で、42分。リールのCKの時にアンドレがアイダラに倒されてPKを獲得。アイダラとしては少し勿体無いプレーでしたが、やってしまったことは仕方なし。

今度はリールに訪れたPKのチャンスを絶対的なエースのデイビッドが冷静に決めて先手を取ることに成功。長めに設定されたアディショナルタイムでは、RCランスは再び気合を入れ直し、リールは相手をうまくいなすような姿勢がそれぞれ見られました。



多くの出来事があった前半を終えて、交代策含めてよりアグレッシブに振る舞うことができたのは

シュヴァリエがPKを止めてくれたことで命拾いし、前半終了間際に先制したリール。後半はショートカウンターが目立つようになりました。落ち着いて時間を上手に進めていく展開も予想されましたが、今季のリールはファンをガッカリさせるような選択は取りませんでした。

逆にアグレッシブに振る舞ったことで相手にプレッシャーを与え、落ち着きを与えませんでした。デイビッドは言うまでもないですが、ウナスはドリブルで再三攻撃を彩り、バンバは背後のイスマイリーの絶対的なサポートの元でかなりイキイキとした様子を見せてくれました。

そのリールの勢いに完全に呑まれてしまったRCランス。相手のビルドアップの早い段階で奪いにいこうという姿勢はあるものの、相手にいなされて速攻を受けるといった場面を多く見受けられました。

ソトカが中央でボールを受け中盤を助けるように変えてからは落ち着けるようになったかと思われましたが、それも長い時間持続することはありませんでした。

60分台から交代選手が続々と出てくるようになり、追いかけるRCランスはサイードとフランコフスキ、クロード・モリースなどを投入。リードしている状況ながら、リールのフォンセカ監督はバレバやティモシー・ウェアなどの攻撃的な選手を投入してさらに圧力をかけます。

その交代策含めてポジティブな要素が働いたのはホームチームの方でした。選手を変えながらも、前で固める守備の姿勢は変わらず、決してひかない強い気持ちで戦うことができました。

気落ちさせないためか、ソトカを下げたRCランスは77分からブクサとブラも投入して4−4−2に変更。しかし、守備面で中盤の選手の戻りが甘くなり、2トップは1発を窺う様子でしたがそのために創造性がなくなって完全に相手に呑まれてしまいました。

シュヴァリエの活躍により落ち着きを取り戻したリールは後半はほぼ完璧な内容でRCランスという最大のライバルに今季初黒星をつけるという最高の結果を残しました。昨シーズンはこのライバルに1勝もできなかったため、悔しさをようやく晴らすことができました。

一方で、RCランスの無敗状態はここでストップすることになってしまいました。「たられば」は個人的にあまり好きではないのですが、ソトカの序盤のPKが決まっていればまた内容と結果は変わっていたのではないかと思いました。そこで決めきれずに最終的に相手を上昇気流に乗せたまま自分達は最後まで落ち着きを取り戻せませんでした。

リールは次節下位に苦しむストラスブールと、RCランスはモンペリエと対戦しますが、お互いこの熱戦を終えてまた気持ちを引き締めて次節以降の戦いに備えてほしいと思います。

両チーム通じて8枚のカードが飛び出し、荒れ模様となったダービー。昨シーズンとは異なり、お互いが良い状態で戦うことができたのは何よりです。RCランスが敗れたことでPSGだけが無敗を維持することになりましたが、ここからまた北方の両雄だけでなく多くのクラブがリーグを盛り上げてくれることでしょう。



10月10日 3時45分 22/23 リーグアン 第10節 リール×RCランス

会場: スタッド・ピエール・モーロワ

得点: 44分 デイビッド

ポゼッション率: リール 45%  RCランス 55%

総シュート数(枠内): リール 12本(6本)  RCランス 10本(3本)

パス本数(成功率): リール 366本(81%)  RCランス 432本(84%)


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