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週刊リーグアン#17

今季から毎週水曜or木曜に各週で開催されたリーグアンの試合の中から、基本的には3試合を厳選して振り返り的なものを綴ってきました。

今回は1年の最後と共に前半戦の最後です。これまで17回に及ぶ連載は果たして皆様のお目に叶うクオリティだったか否かは分かりませんが、自分の中で良い経験をすることができたため、今季限り続けたいと思います。

さて、今節からは私のYouTubeの方の相方Saint Cloud(X: @Saint_Cloud2001)が現地🇫🇷から生の情報を届けてくれました! 2試合の振り返り後に彼の観戦記を載せました🤗



①"原則重視"は守備的で退屈?

個人的に注目試合の1つに挙げていたのが「トゥールーズ×モナコ」。

この試合で注目したいのが、トゥールーズの守備です。この試合を迎えるまでに、トゥールーズは15位という、降格争いに巻き込まれている苦しい状況でした。今季からかるレス・マルティネス監督がアシスタントコーチから昇格してチームを牽引していますが、結果からすれば彼には厳しい評価が下されています。

しかし、個人的にはこの監督は好きなタイプです。その理由を紹介したいと思います。

トゥールーズ(紫)の守備

モナコの超攻撃的な3-5-2システムに対し、トゥールーズの4-2-3-1の守備が綺麗にハマった序盤でした。両WGは対面するCBに対し、中切りプレスを仕掛け、その動きに応じて中盤とSBが連動して動く綺麗なゾーンディフェンスです。

一見SB・中盤は外のパスコースを作る相手にそのままついているように見えるため「マンツーマン」のように思えますが、ゾーンディフェンスは「ボール→味方の位置」で守備位置が決まるのが原則としてあります。

こういった守備網の構築における準備はリーグアントップクラスにあるのが今季のトゥールーズです(次点だとウィル・スティル)。いわゆる組織的な守備ですが、こういった連動性は「守備的」と言われがちです。

しかし私からすれば「守は攻なり」と断言します😤 今季のトゥールーズは昨季の主力がごっそり抜け、多国籍軍団になっている現状ですが、そういった時こそ守備の原則を重んじた試合準備・徹底を行うのは納得がいきます。ましてや監督は世界一戦術的な言語表現を豊富に持つスペイン出身。彼のアプローチはやはり「守備的で退屈」と言われがちですが、現状を踏まえれば納得のいくチームマネジメントです。

さて、この守備がまさしく実ったのが先制点の構図。

トゥールーズの先制点の構図

LCBサリスに対して、対面するRWGドゥナムが中切りプレスを仕掛け、サリスは外の逃げ道のヤコブスを選択。しかし、そこで狙っていたのはドゥナムのプレスに反応し、自身の守備範囲がヤコブス近辺を決まっていたマウィサ。ボール奪取から、そのままヤコブスを剥がし、最終的には3人に囲まれながら味方にパス。

サリスとフォファナが空けて薄くなった右サイドに流れたのはダリンガとヘラベルトの前線2枚。相手DFがスライドしてボックス近辺で2対2になった状況で、ヘラベルトは最終的に相手が絞ったことでフリーになったマグリにファーで合わせました。

これこそ「守は攻なり」です! 「攻撃は最大の防御」という言葉がありますが、スポーツにおいては守備は攻撃と体系的に繋がっているというのが自論です。退屈に思われがちな守備も組織的に遂行できれば、相手を苦しませる一種の手段となり、ひいては相互関係も見えてくる可能性があります。実に奥深いですよね🤗


さて、この場面ではモナコの守備を取り上げましょう。「ボール→味方の位置」で守備範囲が決まるトゥールーズのゾーンディフェンスとは異なり、モナコは「ボール→相手の位置」によって守備範囲が決まるマンツーマンディフェンスです。

しかし、マンツーマンディフェンスで誤解してはいけないのは、「人につく責任がありながら、味方のカバーに行けるか」という点です。これを踏まえておかなければ..?

答えは以下の動画にて「マンツーマンディフェンス」の基礎はバスケの方がわかりやすいです


1本目の動画内にある表現からすると、ヒュッター監督の志向するネガトラにおける即興的なマンツーマンディフェンスは「ディナイディフェンス」の概念に近いです。

「味方が抜かれた際のカバーをする」という鉄則を踏まえれば、モナコは全然できていません。むしろ近い人で埋め合わせをするスタンスなので先制点のような構図が起きがちです。保持者に向かった味方の埋め合わせをバックスないし全体でカバーできていないことは、この先制点及び前節のリヨン戦の決勝点でもしっかり結果に表れています。


しかし、結果だけ言及すれば最終的にモナコが逆転勝ちしています。トゥールーズの綺麗なゾーンディフェンスが崩れた要因としては、試合途中からモナコの両WBをかなり高めに配置し、相手SBが前に出れない状況を作ると共に、相手の前線との距離感を長くさせることでワイドの中盤(ゴロヴィン&南野)やバックスに余裕をもたらすという狙いです。

トゥールーズは準備していた守備設定がその変化にうまく対応できず(ヘラベルトはしきりにリスク承知で前から行こうと促していた)、敗れた次第となりました。結果からすれば残念な形ですが、自分からすれば最初の守備設定含めて内容は悪くないのが今季は続いています。

マルティネス監督と同じく、「守備的」と悪評されがちな人物としては以下の2人が挙げられますが、その方法が極端だとしても全体でソリッドな守備網を構築できる監督は個人的に好みです😁

しつこいですが、守備ないしフットボール全体の見る目を変えたい方にはこの本をお勧めします。



②右圧縮vs左圧縮の勝者は

両者が好調を維持しているのを踏まえて、早い段階でディレイを見たのが「ストラスブール×リール」です(まさかDAZNが配信するとは😂)。

まずはこの試合の両チームのスタメンを見ていきましょう。

ストラスブール
リール

ぱっと見4-2-3-1のミラーゲームだ、と思うのは当然でしょう。しかし、この布陣以上に両者の工夫がマッチングしたのがこの試合でした。

上記の図は両者の攻守の構図を表しています。つまり、攻撃時も守備時もこんな感じで推移しました(守備に関しては割愛)。

リールの攻撃はプレス耐性ならリーグアントップの中盤を筆頭に、主に左サイドに人を集め、右はジェグロヴァのアイソレーションという形が鉄板。

まさに先制点の構図がそうで、ジェグロヴァのクロスが相手のオウンゴールに繋がりました。

このゴールで注目したいのは、ジェグロヴァの「緩急」。ジェグロヴァにボールが渡った際に、対面するスナヤが足を滑らせてますが、ジェグロヴァはむしろ起き上がるのを待っています。

相手DFが起き上がり、足を揃えるのを待ってからのクロスですが、多くの方は「その前の段階で勝負できただろ!」と思うかもしれません。しかし、あえてプレースピードを上げずに相手をじっくり見ながら後出しジャンケンをするという動作です(イレギュラーに焦ってしまう可能性があるため)。

その動作の理屈に適っているのがメッシのこの動作です

プレースピードをあえて上げずに相手を見る動作及び心的準備はこの「虚」と同じ理念だと言えます

「後出しジャンケン」についてはこちら


対して、ストラスブールは4-4-2のベーシックなゾーンディフェンスを中心に、攻撃時は右サイドに人を渋滞させる手段を選択していました。つまり、左圧縮を行うリールと右圧縮を行うストラスブールの構図が発生しました(同サイドに人がたくさん😳)。

最終的には1点目は相手のミスから、2点目はアンジェロのスラロームドリブルにアンダーラップで反応したムワンガが決めてストラスブールが勝利しました。

ストラスブールはガメイロ主体の4-2-3-1に変更してから調子が鰻登り。競り合いに強い195cm CFエメガにロングボールを放る戦法でチームが明確な狙いを持ったことで結果がついてきました(この戦法はある意味ヴィエラが葛藤していた甘えでもあり、ここ近年ストラスブールの伝統的な戦術😅)。

試合後にレタン会長がかなりのお怒り表明をしたように、公式戦16試合ぶりの敗北を味わったリール。ウィンターブレーク前に少々トーンダウンするような形で終わってしまいましたが、1月以降はさらなる拍車をかけて戦ってほしいところです。



③Saint Cloud観戦記「PSG×メス」

YouTubeチャンネル「リーグアンLAB」を共に運営している相方Saint Cloudが先週から祖国フランスに渡っています。

今回からは時折その相方が現地観戦した情報を一部このルシアンのnoteで取り上げたいと思います(本人から許可得てます)。

今回彼が観戦したのは「PSG×メス」。文章ではなく、ギャラリー形式で振り返りましょう。

試合前コレオ
試合開始
先制点
コーナーに向かうイガンイン🇰🇷
試合終了

雰囲気としては
ウルトラスが場を盛り上げて雰囲気を作っている。
例えば試合開始前にPSGの代名詞である
TOUS ENSEMBLE ON CHANTERA
を歌ったり
Auteuil Boulogne で応援の呼応をしたり
決められても画面で見ている時よりもガッカリ感はない。
キリアンのゴールは会場のボルテージをあげる。
エタンがボールを持つと拍手や歓声が起きる。
五感で楽しめる試合だった。

Saint Cloud現地レポ

PSGの固有チャント"Tous ensemble on chantra"(皆で共に歌おう)はこちらの動画から
個人的にも好きなチャントの1つです

試合は後半にポジション調整をしたPSGがエンバペのスーパーゴールや、弟エタン(×イーサン)がプロデビューを飾り、公式戦で兄弟初共演を果たしたなど、見所たっぷりの試合となりました(羨ましい)。



今節の結果まとめ

2023/12/21
ブレスト 4-0 ロリアン
クレルモン 1-3 レンヌ
リヨン 1-0 ナント
モンペリエ 1-1 マルセイユ
ニース 2-0 RCランス
PSG 3-1 メス
スタッド・ランス 1-0 ル・アーヴル
ストラスブール 2-1 リール
トゥールーズ 1-2 モナコ


第17節を終えた段階での順位表がこちらです。



次節の注目ゲーム

1月には「PSG×トゥールーズ」の「トロフェ・デ・シャンピオン」や「クープ・ドゥ・フランス」のラウンド64が開幕します。それらをへて、アジアカップとアフリカカップが開幕する週に行われる第18節では「モナコ×スタッド・ランス」に注目度しましょう。

注目試合に挙げたところで、その通り。おそらく日本人3人はいないでしょう😅 並びにアフリカ選手権で離脱する選手を踏まえてこの一戦に参加できない見込みのメンバーを紹介します。

モナコ
DF シンゴ🇨🇮、サリス🇬🇭、C・エンリケ(負傷)、ヤコブス🇸🇳
MF 南野🇯🇵、ディアッタ🇸🇳、カマラ🇲🇱、マタゾ(負傷)、ベン・セギル(負傷)
FW エンボロ(負傷)

攻守の要である南野拓実だけでなく、最終ラインはかなり薄くなります。ましてやWBは本職ヴァンデルソン1枚となっています。

スタッド・ランス
DF アブデルハミド🇲🇦、アグバドゥ🇨🇮、I・ディアキテ🇬🇳、ビュシ(負傷)、エスブランド(負傷)
MF リシャルドソン🇲🇦、ムネツィ(負傷)、エドア(負傷)
FW 伊東🇯🇵、中村🇯🇵、O・ディアキテ🇨🇮、ボージャン🇬🇲

両翼日本人に加えて、一時は引退したモロッコ代表に主将のアブデルハミドが引き抜かれる予定で、センターラインは手薄な状態に。

おそらく両チーム共にユースあたりから何人か引っ張ってきてスタメンorベンチに座らせる光景が見られるかと思われます。1.5軍以下の戦力で両チームがどれだけのパフォーマンスが出来るか、話題性としては乏しくなりますがぜひ注目してみてください



23/24 リーグアン 第18節日程(日本時間)

2024/01/13
 5:00 マルセイユ×ストラスブール

2024/01/14
 1:00 モナコ×スタッド・ランス
 5:00 レンヌ×ニース
21:00 リール×ロリアン
23:00 ブレスト×モンペリエ
23:00 メス×トゥールーズ
23:00 ナント×クレルモン

2024/01/15
 1:05 ル・アーヴル×リヨン
 4:45 RCランス×PSG

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