Nextグリーズマンに推したいエンゾ・ル・フェ ”ロリアンで活躍する小さな戦士”
今季のロリアンは前半戦の活躍はリーグを盛り上げてくれました。今年からBチームを率いていたル・ブリ監督が指揮を執り、低いブロックからのカウンターサッカーが浸透していました。
そのカウンターサッカーで光り輝いていたモフィとウアッタラが冬の移籍市場でクラブを去ってからは結果としても不安定になっていますが、前半戦の貯金もあって現在は中位に落ち着いています。
さて、このロリアンというクラブはリーグアンではおなじみの西達彦アナウンサーがYouTubeにて取り上げてくれましたが、そのロリアンの核であり、チームを牽引しているのがエンゾ・ル・フェです。
テーマになぜNextグリーズマンとつけたのか、彼がどういった生い立ちをしてきたのか、プレースタイルはどうなのかなどということを綴りたいと思います。
ロリアンを愛し愛される男
エンゾ・ル・フェは2000年2月3日にフランス北西部の小さな港町ロリアンで生まれました。VFLクリアドという地元クラブのユースを経て、8歳の時にロリアンのアカデミーに入団しました。
2019年5月10日のリーグドゥのFCソショー戦にてトップチームデビューを飾り、その年の11月にプロ契約を勝ち取りました。翌シーズンから現在はオセールを率いているクリストフ・ペリシエ監督のもとでプレーメーカーの位置に配置され、ロリアンの1部昇格と残留に貢献しました。
フランスU20代表にも選出され、2019年9月6日のクロアチアとの親善試合でデビューを飾りました。また、2021年には東京オリンピックのフランスU23代表にも選出され、日本戦を含むグループステージ全試合に出場しました。現在も順調にフランスのアンダー世代の代表に選出されています。
亡き父に捧ぐフットボーラーの勇姿
*(これはあまり良い話題ではないため、読むことはお勧めしませんが、彼の逸話に興味がある方に向けて綴らせていただきます。)
ル・フェの父親はジェレミー・ランプリエールという人物で2021年4月8日にロリアンで死亡していることが確認されました。検察庁の調べによると、死因は自殺と見られています。
ランプリエールはナイトクラブや妻への暴行で十数件の有罪判決を受けていました。ル・フェがロリアンのアカデミーにいる頃のほとんどを父親は刑務所で過ごしていましたが、ル・フェはその父親との関係を絶とうとすることはありませんでした。
ときに練習も欠席して父親のもとへ会いに行くほどであったそうです。ル・フェは父親についてあまり語ってきませんでしたが、父親の死後に「父は私を通して自分の夢を生きたかった」と述べました。
また、親権は母親が持つことになった影響もありますが、彼の本当の名前は「エンゾ・ル・フェ・ランプリエール」です。父の姓を名乗ることは面会中に父親からお願いされていたことのようで、ル・フェもその名を継いでいく決心を明らかにしています。
ル・フェは当初10番を背負っていましたが、リーグアンの背番号規定が改定されたことを受け、2023年から背番号を10から80に変更しています。エースナンバーから変更した理由として、ランプリエールの生まれた年(1980年)をなぞらえて父親への敬意を示しました。
亡き父のためにも地元クラブで成長し続けるル・フェの勇姿は父親の誇りと夢であり、今後もその勇姿と気持ちは空の上にも届くでしょう。
モデルはイニエスタ プレースタイルはヴェラッティ
さて、気になるル・フェのプレースタイルですが、ロリアンというクラブの戦い方が低いブロックからのスピーディーなカウンターなので、守備時4-4-2のダブルボランチの一角を担うル・フェのプレー開始位置は低いところからスタートします。
しかし、このヒートマップを見ていただくと分かるように、攻撃時には果敢にボールを運んで前線の選手と絡み、フィニッシュワークに参加します。デビュー当時課題だった運動量は90分維持され、上下動や加速・減速をうまくコントロールしています。
また、彼が過小評価されている点の1つとして、リーグトップクラスのタックル回数とデュエル勝率を誇っていたことです。現在は負傷離脱中で他の選手が数字を伸ばしていますが、一時期は守備面でも良いスタッツを残しました。
肝心の攻撃面ですが、2023/04/23時点で28試合4G5Aとしっかり数字を残しているようにフィニッシャーとパサーとしての能力も高いです。現時点でリーグアンのチャンスメイク数では7番目の59という記録(90分あたり1.9)で、これはPSGのネイマールやスタッド・ランスの伊東純也の数字をわずかに上回っています。
個人的な彼の魅力の一番は大柄な相手に寄せられてもうまく身体をコントロールしていなすドリブルにあると感じます。彼は相手のトランジション時に圧をかけられやすい位置にいますが、うまく剥がして前進する能力に長けています。ちなみに彼自身の憧れの選手はアンドレス・イニエスタであると公言していますが、リーグアンを見ている者からすれば、その姿はヴェラッティそのもの。
低いブロックでハードワークを惜しまず、中盤をコントロールしながらビルドアップに貢献し、攻撃にクオリティをもたらすヴェラッティのプレースタイルは有名で、ル・フェはヴェラッティの姿に重ね合わせると想像しやすいかもしれません。
よりわかりやすいように映像を貼っておきます。ぜひご覧ください。
彼が今後代表で重宝される理由について
タイトルにNextグリーズマンとしてル・フェを取り上げた理由として、現在のグリーズマンが代表で担っている役割が彼に適していると感じたからです。
現在のレ・ブルーはエムバペに仕事をしてもらうために周囲がハードワークをするという戦い方。エムバペの背後をカバーするテオやラビオ、フリーランでスペースを作るジルーやコロ・ミュアニの動きはもちろんですが、一番欠かせないのは守→攻の切り替えにおいて前線への高水準の供給を行うグリーズマンの働きです。
アトレティコでの役割は様々ですが、代表においては固定の役割。ワールドカップでも披露したように、彼の出来が全てを左右します。
このグリーズマンの役割を今後期待できる人材として個人的にル・フェを推したいと思います。低いブロックでハードワークができ、なおかつドリブルの推進力や大柄な相手に負けない体幹、さらに前線とフィニッシュワークに絡めるという点において彼の強みが代表の戦い方においても発揮されるのでは無いかと感じます。
エムバペがキャプテンに就任し、おそらく彼がいる間もしくは少なくともデシャンが率いてる間は戦い方が変わらないことが予想されるため、若返りを期待しての彼の代表入りは待ち遠しい話題です。
先月から大腿部を痛めていたため最近はあまり試合に出場できていませんが、4月下旬復帰予定ということで今後の復帰と最低でもチームとして中位に落ち着くべく彼の活躍に目が離せません。
今冬の移籍でチームを支えたウアッタラやモフィが移籍したように当然彼も移籍市場で注目されている人物の1人です。最近ではマンチェスターユナイテッドの噂も出ていました。冬からオーナーも変わったことで、より高給が望めるクラブへの移籍は免れることができないかもしれませんが、地元ロリアンで戦う戦士として今後もクラブの歴史に名を残す選手となってほしいと思います。
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