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令和の歳時記 キクザキイチゲ

キクザキイチゲはとても気まぐれな花だと聞いていた。何でも太陽が出ない曇りの日には花を開かないし、雨が降ろうものならすぐさま花を閉じてしまうらしい。

私はあえて曇った寒い日を選んで森へ行ってみた。案の定、花は咲いていなかった。

うなだれるように閉じた花も良いがやっぱり開いた花の方が絵になるから今度は良く晴れた日に再び森を訪れてみた。

陽光降り注ぐ雑木林の中でキクザキイチゲは地上一面に見事に咲いていた。真上から眺めていると久しぶりにお花の銀河に囲まれているような気分になり心は高鳴った。

この花は近畿以北から北海道の低山から深山に広く分布するアネモネの仲間である。特に標高の高い涼しいところや雪の多い地方に多く自生している。

開花の大きさは20~30ミリで背丈は20センチくらいである。色は白から薄い紫がある。

一見、花びらに見えるが実は萼片である。触った感触はシルクの生地のようにツルツルして気持ちよい。

香りは心なしかキクの花に近いような気がする。花自体がキクの花に似ているのでキク科の植物だと思われがちだが、実はキンポウゲ科に属する。

この花を漢字で書くと菊咲一華となる。

実際は花ではない萼片の開き方がキクの花の咲く様子に似ていることと、一本の茎から一つの花を咲かせる“イチゲ”からこの名前がついたと云われている。お花見の季節が到来している。

桜以外でも森にはキクザキイチゲのような美しい花がどんどん咲き乱れる。是非そちらの方も堪能してもらいたい。


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