次女の妊娠中の話　3

続きです。

　産休に入ってからはやることもそんなになかったので、長女との時間をなるべく作ったりしていた。…していたが、なんせ腹がデカくて重い。長女の時はお腹が膨らみきる前に出産したので、妊娠末期のお腹の重さを、私はこの時文字通り身を以て初めて知った。妊婦さんが『足の爪が切れない』『臍から下（つまり陰部）が見えない』が良くわかった。本当に見えない。動きにくいし、お腹の重さのせいなのかかったるさが凄かった。気持ち悪いとかはあまりなかったと思うが、とにかく『早く産みたい…』というその場を楽になりたい気持ちでいっぱいだった。

　当時はコロナ禍でないので、入院自体はさっさと出来た。また、家族同伴で部屋まで一緒に来られた。入院は、手術前日でもあるため、各職種からの説明が多い。病棟看護師・薬剤師・クラーク・手術室看護師・担当医師・担当麻酔科医。この、最後に来た担当麻酔科医と、またややっこしい話をすることになった。

　前回の手術は、準緊急で、入院時からアレルギーについて不確定なことが多かった私は、さっさと全麻になった。

　この不確定なアレルギーとは、麻酔薬についてだ。皆さんの中にもいませんかね？歯医者の麻酔で具合悪くなった人。はい、私もです。抜歯とか、その一歩手前くらいの治療する時に大体の歯科医は局所麻酔を打つが、それがもう本当に駄目で、適量が私に合わず、酷い二日酔いみたいになるのだ。頭グラングラン起きたら吐き気。それを正直に言ったところ、前回は、調べる時間もないし〜と全麻になった。結論、めっちゃ楽だった。いちにのさんしで眠ったし、目が覚めたら終わってた。痛みと咳き込みも予想の範囲内自制内だった。だから私は全麻で良かったのだ。良かったのに。

　それを今回の妊娠中の外来で言ったら、まぁ揉めた。

　まず皮膚科外来に行って調べろと言われ、皮膚科に言ったら泊りがけでやりますと言われ、いやいや、お断りです。嫌です。なんで？となった。アナフィラキシーの予防の為、一晩泊まると言われ、産科でそんな話聞いてないし、と思いっきり拒否した。これが一揉め。この時は妊娠中で心が尖りやすく、一晩泊まるほど麻酔薬チェックするのに胎児になんかあったらどうすんだ！という気持ちだけで皮膚科のそれを思いっきり蹴った。

　で、入院当日。麻酔科医の話で腰麻と聞いて嫌だとはっきり言った。前回までの経緯を話して全麻が良いとも言った。そんなつもりじゃなく来ていた麻酔科医は大いに困惑した。そりゃそうだ。かなりの押し問答の末、でもうちの病院は帝王切開は腰麻なんです、持ち帰ってみますけど…と困り顔で帰っていった。我ながら面倒な患者だね。

　でも今は患者だから言う。うちの病院は〜とか知らないよ。私の手術なんだから、私の意向を無下にしないで。と。

　手術当日朝、昨日来た麻酔科医が来て、申し訳無さそうに朝のカンファで話したけど、やっぱり腰麻でやらせてください、お願いします。と言ってきた。まぁそうなるよね。これが二揉め目。

　手術は一番目だったが、初めての腰麻に嫌な予感しかない。

　と思っていたら、案の定だった。

　まず痛い。前にも書いたけど、痛みに弱い私は針を体に刺されているのがもう辛い。腰麻は、患者が卵みたいに丸まった姿勢で行うのだが、その体勢もお腹が大きいから辛い。

　しかしおかしいな、今まで帝王切開も何件も立ち会ったことあったのに、誰も痛いなんて言ってなかったぞ？？とも思ったが、まぁ自分としては痛い。早く終わってほしいのになかなか終わらないし。

　痛い痛いと騒いで泣いて、間に、だから全麻が良いって言ったのにと恨み言も言った。

　この時、優しくしてくれたのはオペ室看護師さんだった。手を握って優しい声をたくさんかけてくれた。まぁこんな患者いないよなぁ。オペ室で疾患が原因じゃないことで痛いって騒ぐ患者。一生感謝してるし、幸せを願ってます。あの時のオペ室看護師さん。メガネしてなかったから顔は覚えてないけど。

　腰麻は更に、私の普段から低い血圧を下げて嘔気まで連れてきた。多分顔が真っ青だし、ベッドサイドモニターに出た血圧50/台は忘れないぞ。ほら見たことか！と言わんばかりに気持ち悪いと騒ぐ私。

　麻酔科医は、失敗した面倒くせえと思ったろう。というか思ってて欲しかった。これを教訓に、きちんと記録に残して、二度と私に腰麻なんかすんなよ！と騒ぎながら思ってた。

　まぁ結果として長男の時も腰麻で、次女の時にも負けないくらい泣いて騒ぎましたが。

　大騒ぎした腰麻の後は、あっさりしていて、次女はするっと産まれた。だが、初めて聞いた筈の産声に感動もクソもなかった。だって血圧下がって気持ち悪いし、意識朦朧としてたし。

　更にドラマでよく見る『看護師か助産師が産まれたての赤ちゃんをお母さんに見せてお母さん号泣』みたいな奴もなかった。顔を見せられて一番最初に思ったのは、『この子、誰にも似てない！』だった。

　出産したので、今日はこの辺で〜。

　写真はトリックアートでの長女と次女です。二人して裸婦の絵を『お尻だ！』と言ってました。こどもの感想らしくて可愛い。