*風の色・#シロクマ文芸部
風の色々な事情を踏まえて、何なのよ!もぉーってイライラしながら、私はいつも風を許してしまう。
奈緒ちゃん、明日ドライブに行かない?どうせヒマしてるんでしょ?お昼過ぎに迎えに行くね!
こちらの事情も知ったこっちゃない、風のLINEは気まぐれで応募した懸賞が当選しましたよっていうお知らせとよく似ている。
ドライブか。。。楽しそうにハンドルを握る風の横顔は私だけが知っている、何でもないところでつまづいて恥ずかしそうに笑うあの頃のままだ。ずっと変わらない。
お昼ごはんおごってくれるならいいよ〜運転も風がしてね。30分後にOKの返信をしていた。
秋の空は汚れなんて、報われない事なんてないってくらいにいつもより高く蒼く感じる。
今日の風はワックスで髪をフワっとさせて
ダボっとした白いTシャツにダボっとしたジーンズで、助手席に乗った私に甘く、低いトーンで
「ねぇ、奈緒ちゃん、元カノがね『ヨリを戻そう』って言ってきたんだ。『やっぱり風君のことか忘れられない』って言うんだよ〜 ねぇ奈緒ちゃんどうしたらいいと思う」
風はいつだってこうだ。私をヒマ人扱いして
まぁ、ヒマ人なんだけど。唐突に呼び出して、唐突に話しはじめる。
どうしたらいいと思うって言われても、私には知ったこっちゃない。仮に私が「ヨリを戻さないほうがいいよ」って言ったらヨリを戻さないんだろうか?考えるのもバカバカしくなって
「どっちでもいいんじゃない。一番大事なのは風の気持ちなんだし、ヨリ戻したければ戻せばいいし、やっぱムリ〜って思ったら断ればいいだけのことだし」
風は安心したように、覗き込むようなトーンで
「奈緒ちゃん、元カノとヨリ戻してもこうしてフラっと誘ったら今日みたいに、こんなテンションでドライブしてくれる?」
そもそも、私たちって一体?何?
親友?腐れ縁?友達以上恋人未満?どれもこれも当てはまらない。私たちを表す言葉は見当たらない。はっきり言って私は風の彼女に興味がない。彼女がいたって、結婚したってそんなの関係なしに、こんなふうにフラっと当たり前にドライブしていたい。
はじまりがあれば必ず終わりがある。形あるものには名前がつく。だから私と風の間には何にもなくていい。
私はただこうして風の一番近くで、横顔を見ていたいんだ。ただそれだけ。
今だけじゃイヤだ。ずっとがいい。
「そうだね〜、私に彼氏ができたら知らないけど、ヒマしてたらドライブしてあげてもいいよ〜」
「えー、奈緒ちゃんに彼氏ができてもドライブしてよ!」
あー、そうだ私たち今だけじゃなくて、ずっと、ずっとを願ってる。
チラッと盗み見した横顔は、誰かを傷つけてしまうかもしれない、ひんしゅくをかうかもしれない。ずっとが叶うこれからを望んでるようにみえた。
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