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*レモンから・#シロクマ文芸部

 レモンから愛を込めて♡

 部室のドアの前に、こんなメッセージとセブンのレジ袋に入った差し入れが置いてあった。

「明日から、サッカー部の合宿なんだ。学校の寮で2泊3日…地獄だ。女子サッカー部も合宿みたいだから、うるさいしうぜーよ」
 レモンに聞こえるように、わざと大きな声で話した。

 僕は聞こえないフリをして、わからないフリをして、気づかないフリをしてずっとここまでやり過ごしてきた。これが僕の生きるすべなんだと、どこかで信じて。
 なぜだろうな⁈ たぶん…レモンのことがタイプなんだろうな。説明できないけれど、気になってしょうがない。
 明日から夏休み。空は突き抜けるほど青く、遠くまで広がってる。僕はぼんやり気がついてしまった気持ちを隠しとおせるんだろうか。

 レモンの差し入れは「何⁈何⁈差し入れって」部員みんなにはやしたてられて、部員みんなで勝手にレモンの差し入れ確認してる。
 いきなり、何も言わずに、唐突に何でこんなことしたんだろう??普通は「明日からの合宿、差し入れしようと思うけど」とか僕に一言あってもいいはずだ。頭の中だけグルグルしてる。

「マジかよー! ミルクティー差し入れってうけるー!」
「普通はサッカー部への差し入れってポカリじゃね! ミルクティーは一番いらねー笑」
 みんな僕への差し入れって事すっかり忘れてるな。

 そうだ!レモンは感情で生きている生命体なんだ。損得とかはどうでもよくて、相手の気持ちより自分がどうしたいかを優先してる。周りを巻き込んで、最後は頼りなく、すがるように
ニコって笑うんだ。「しょうがないなー」って思わせるには充分すぎるタイミングで。

 何も言わずに、差し入れを部室の前に置いたのも、気まぐれかもしれない。2Lのミルクティーを選んだのは、たぶんレモンが好きな飲み物だからだと思う。
そんな全部はレモンにとったら、普通のことで
次会ったら「ちゃんと愛、受け取ってくれたー? お礼に何かおごってよー」なんて、特別じゃない、普通の日常に溶け込んでニコって笑うんだ。

 さて、2Lのミルクティーどうしようか?夏の暑さに甘ったるさがしみこんで、忘れられない味になるかもしれない。とりあえずマネージャーに頼んで、冷蔵庫で冷やしておいてもらおう。

〜甘ったるいは、恋がはじまった味だな〜

🩵◡̈︎*♚︎‧*˚✩︎‧₊˚

シロクマ文芸部参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。

🩵◡̈︎*♚︎‧*˚✩︎‧₊˚


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