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行く先を照らす力は誰かの力になり得ると力をつけてきた人の変わらぬ思い

五輪の金メダルを2つ手にしなければならなかった理由、血の滲むような努力で辿り着き存在感を知らしめなければならなかった理由、全ては伝え続けるために、語るために、力が必要だったから。その延長線上に自分のスケートを磨き続けること、単独アイスショーを作り上げること、世界的ブランドのGUCCIに名を連ねることがあるのだ。
羽生結弦という名前を生かし続けること、存在感を増し続けることはそれが利他の人羽生結弦の力となるからだ。
羽生は自らを媒体だと言う。媒体とは発する側と受け取る側の間を繋ぐものだ。つまり自分を道具として使ってくれということだ。

羽生結弦が石川県輪島を訪れたとローカルニュースが伝えた。newseveryのスペシャルメッセンジャーとしての訪問だと言う。番組の意向と羽生の思いが合致したのではないだろうか。今回行くべき場所はそこしかないと。

『羽生結弦 伝えたい思い』がスタートしたのは2023年が明けた頃だ。
「僕だから言えること、僕にしか言えないことがきっとあると思う」とコメントしている。
昨年12月半ばの放送では、あの3:11以来、あってはならないけれど、でもどこかでいつか起こってしまう有事に立ち向かうために、日々厳しい訓練を重ね続けている方たちを取材して伝えた。その方たちの存在、一縷の希望がそこにはあるのだから、信じて生きることを決して諦めないで欲しいとテレビ画面を通して言った。
そしてこの時はまだ誰も思いもしてなかったのだ。またあの破壊的な大きな揺れがそこまで迫ってきていることを。

さっきまでの普通の営みが寸断されてしまうこと、そうやって地震は起きたと羽生は宮城県を会場とする震災メモリアル的なアイスショーnotte steIlataで言った。
だから分かっている。分かっているのに起こるまで他人事であり、時が経てば風化してしまうのも人の世の常なのだ。
だからこそ風化させまいと、常に寄り添って生きてきた羽生だからこそ聞けること、伝えられること、語れることがあるのだと、彼は自分の持つ力をそこに注ぐ。

俺の話を聞け。
俺の後ろに映るものを見ろ。
謙虚で優しい羽生はこんな強い言葉を使わないけれど、何時の競技会だったか、自分の演技前のリンクサイドのざわつきに対してトリプルアクセルをバーンと降りた。一瞬にして会場の視線を向けさせた羽生の強さが、求心力が時には必要なのだ。

能登の被災地の1つの地、羽生が訪ねた輪島の現在がファンのTLを通して一瞬にして列島を駆け巡った。ひいては世界中に分布するファンを通して、羽生の思いが語り継がれるのだ。
時には悲劇を起こす波のようではあるが、大きなうねりとなって、忘れてないよって思いが被災地へ届く。忘れてはいけないと外へと向かう。いつだって地震の脅威にさらされている列島日本に生きる人々の宿命と使命だ。羽生の存在はずっとそれを忘れさせない。

年明けを振り返って見れば、1.17以来の揺れの怖さを感じた日だ。テレビでは燃える輪島の朝市辺りを映していた。家の窓から見える高速道路に救助支援隊の車両の赤色灯が連なり、鳴り響くサイレンを聞きながら、無事でいてと祈った。
不謹慎だけれど暗闇の中それはきれいなラインとなって流れて行った。3.11のあの日も同じ景色を見ていた。それは途切れることない長い長い車両の列だった。その車両の先頭まで辿って行けばその場所の近くには16歳の羽生がいたのだ。

三月の敦賀までの北陸新幹線の開通で、北陸の観光客の戻りは早かったかもしれない。でもその賑わいは遠巻きで、あんなに旅した北陸へ金沢までも行けてはいない。和倉も和島もその先も観光として訪ねることができるのはいつだろう。自分の記憶に残るホテルも観光施設もまだ動かない。未だ見つからず身内の元へ帰っていらっしゃらない方もいると前日のニュースで見ていた。新たな朝市の場所を造る再生を請け負う人たちのドキュメントも見たばかりだ。その場所に羽生が行った。

羽生の来訪にキャーキャーなる生徒の皆の声が聞こえてきそうだ。一緒に写ったその人は中学生に混じる高校生のお兄さんのようだ。羽生が根っこに持つ泥臭い努力の人だと感じ取ってくれただろうか。持参した2個の金メダルと共に彼らの記憶に刻まれて、あの時羽生結弦に出会ったという自慢話思い出話にしてくれるだろうか。幸せな未来がありますように。未来への希望が力となりますように。羽生の訪問がそのきっかけの1つになると信じている。

地域の壁無くnewseveryの全編をぜひ全国放送で見られることを期待したい。ファン層を通り越して日本中に思いが伝わって欲しいと願う。



(ひとり言)
自分だけの日記でもよかった。自分が勝手に羽生結弦の思いを創っているからだ。100パーセント嘘でもないし本当でもない。
ファンの1人が熱くほざいておるなと緩く読み流してくださればありがたいです。敬称略はいつものごとくご容赦願います。


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