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不釣り合いにも程がある!を受け入れた普通の民が至福を味わえたこと

引っ越し以来のクレーン車

 3月の土曜日の昼下がり、小雪舞う中、クレーン車が我が家に横付けされた。早くもご近所の視線が気になる。ベランダから2階のリビングに運び込まれたそれは、遠目でも確認できる大きさで REGZA とパッケージに印刷されている。
 こんな寒い日に立ち見見物はあるはずもないけれど、カーテンの隙間からの視線を感じる自意識過剰な私んちの家族だった。それだけ場違いなモノが運び込まれたということだ。
 配送業者とセッティング業者は別だったため、そのパッケージは3時間リビングと食卓を遮断した。別ドアからの出入りでかろうじてコミュニケーションを繋ぐ、隔てている巨大なダンボールの壁に溜息しながら、早く来てくれー業者さん、と叫びたい。
 かくして2階リビング北の壁面を占領して鎮座した85VテレビREGZAだった。

さんまさん家は77V

 経緯を辿ると100VのREGZAがやってくる可能性もあった。しかし親族をたらい回しされたこの話は拒否されて終わった。
 取付下見に来た業者さん談として、2、3年前に一度だけ100Vを納入したと、それも企業社屋設置であったと聞いてまた溜息が出た。電気屋の店舗展示にしたって、あのヨドバシカメラでさえ実物は無かった。85Vに紙を足して100Vのイメージを伝えていたぐらいだ。ちなみにさんまさんのお家のテレビでも77Vだそうだ。大丈夫か!我が家。
 なぜこのテレビが今ここにあるのかというと、長男が当てたからだ。今まで高額商品が当たる人がほんとうにいるのか信じないできた。お年玉年賀はがきでさえ、切手シートが当たれば良い方だし、宝くじは3000円が最高だし。ただこの長男はたまにほどほどの何かを当ててきた。同居じゃない現在はその当選率を知らないけれど。
 彼が手にした賞品はレグザの100Vだったが、収まるリビングが無いことを理由に、違う場所でのたらい回し、提供企業内どうする案件を経て85Vで話がついた。
 体調すぐれない日には大画面に酔いそうだと私が最後まで辞退を表明していたが、電話の向こうで彼の娘、すなわち孫が「大っきいテレビー、見るぅー!」と泣き脅している。「わかったよ、遊びに来た時見れるから」と私。
 かくして大画面テレビがやってくることになった。今まであった50V REGZAは他の部屋へ追いやられた。追いやられた部屋にいた43Vテレビはリサイクル店に引き取られた。それでも二人暮らしの家にまだ4台あるテレビたち。その理由を語るとまた長いけれど。

デカいよ

テレビボード問題

 さあどうしよう。まず現テレビボードでは乗らない。180センチが必要だ。情報収集にあたったが、結構なお値段がする。それでも必要ならば買わねばなるまい。だが、ここで当選を引き当てた本人が、もらったものに余分な出費をしたくないと言う。コイツケチだなと思いつつ、分からないでもない。そしてこの金銭感覚に育てたのはこの私だ。
 そこで私のとった行動は、180センチの化粧板と滑り止めをホームセンターで購入し、現テレビボードと合体させてなんとかテレビボードもどきを作った。けどしなった。テレビの重量は予想以上だった。そこで応急処置的にサイドテーブルをかましたらピッタリサイズに収まった。
 ただ上のテレビと下のテレビボードもどきとの格差を感じずにはいられない。上流階級にはなれない現実に笑えた。まっ、いいか。

至福と老後

 大量に録りためた推し人のBDがこの大画面で見られるのか。

美しい

 これは思い描いていなかった至福だ。見たいから買うじゃないので、渋々了解でやってきた85Vだったので。受け入れたら景色が変わることってある。ちょっとしたディレイビューイングじゃないか。フォローしていただいているお仲間を我が家の大画面へご招待したいとマジで思う。
 私の慣れはわりと早かった。何をしていても視界に入ってくる画像に、老境を深めて理解度が遅くなっても、アシスト機能抜群だなと思う。開発者はそんな意図ないよな。画面と設置空間の比率というものがあるだろう。その比率からちょっとずれているだけだ。
 その副反応が顕著な行動をする家人がいる。今日も定位置で見続けてしばらくすると少しでも遠い場所を求め、狭いリビングを放浪する主が少し鬱陶しい。
 いつか羽生結弦のスケートを見るために現地に出向くことが叶わなくなったとき、この85Vは健在だろうか。窓からの風景を鏡のように映している電源オフの大画面を眺めながら、皆ステイヘルシーでと願った。



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