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朝倉市議の率直さ

コラム『あまのじゃく』1963/9/17 発行
文化新聞  No. 4569


推薦市長にも”直球質問”

    主幹 吉 田 金 八

 13日から飯能市議会の定例会、一般質問にて朝倉市議が色々な質問を行っているが、その態度論旨はとても素直で好感が持てる。
 朝倉市議はは萩野議長につながる増島現市長派とみられているが、過去の市議会の発言態度から押して、是々非々、筋を通す点、誠に好感の持てる市議である。
 今度同市議が取り上げた諸問題は、市政の目下の焦点で、市民はその成り行きを懸念し、市長の手で解決を望んでいる問題のみだが、その一つである私有地管理の問題は仲々もっての難問題で、前者は代々の市長から引き継いでのことがことでもあり、特に個人の利害が深く絡んでいるだけに、執行者としては頬かむりで通りたいところである。
 一中付近の私有地の管理をもっと厳格にして、占有者にお貸し下され的になっては困るとの声があっても、 いずれも顔なじみの住人同士のこととて、自分に一銭の得にもならないことで、借地人から借地人から恨まれても始まらないとばかり遠回しに市の理者の尻を叩く者はあっても、朝倉市議の如く堂々とこの問題をついた者はおそらく初めてであろう。
 またし尿処理場にしてからが同様以上に難問題で、しかも当面の責任者が自分が推した増島市長とあっては、それが盛んに苦しんでいる最中を知っていれば情においてその進行をせつく事はなかなか出来難いところである。
 しかし、物事は暖かく労わるばかりが親切ではない場合がある。
 このし尿処理場の時間的経過から見て、もう何とか目鼻がつかなければならない。当事者双方も、また観望する市民を含めて、まさに鉄は熱せられた時機に来ていると言うべきであり、『鉄は熱いうち打て』の格言通りにこの機になるかならぬかのケジメめをつけるべきではないか。出来ないものなら諦める。できる他の地に目標を変える。恐らく朝倉市議にもそうした観点からの執行者の追求であったものと思う。
 朝倉市議が増島市長推挙のメンバーの一人であっただけに、誠に言いにくいことを言ったの感が深い。
 元来市議会の発言は、当面の相手の市の執行部に対する効果よりも大向う、つまり、市民への反響を意識しての大衆受け専門に流れることが多い。
 朝倉市議の質問演説の中にも、これを文句の表面をなでれば、そんな気配も感じられなくはないが、しかし、同市議の性格を知っている者ものから見れば、そんな舞台効果抜きの直言であると思う。
 誠に正直である。言い難きを素直に述べたと感じられる。老獪な市議さんの多い中に誠に気持ちの良い存在であろう。 


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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