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ダレス訪日と国民生活

コラム『あまのじゃく』1951/1/21 発行 
文化新聞  No. 80


「先読みの大切さ」を国民も!

        主幹 吉 田 金 八

 訪日ダレス特使を迎える政府は安全保障に関してはことさらこちらから提言をしないとある。被占領国としては当然な態度である。
 再軍備に関する政府の方針は、一部の連合国から求められても出来る限りこれを回避するという方針も、吉田内閣としては上出来である。
 世論調査と称する衆愚に引きずられて、もしくは軍閥の復活を夢見る一部の策謀の尻馬に乗って、日本民族の将来を誤るようなことのないよう、大切な瀬戸際だけにしっかりやってもらいたいものである。講和内閣として吉田内閣は最良のものではないと思うが、現在の国民の政治意識の段階では、幾度総選挙を繰り返しても、大体現在の政界分野は大きな変化は見られないのではあるまいか。
 そうして見れば、いたずらに金をかけ、暇をつぶして国会解散だの総選挙だのと騒ぎまわる必要は無い。
 社会党、民主党はことによると小さい期待をかけるかもしれないが、まだまだそんな時期に至っていない。
 社会党も当分政権をお預けにして、頭そのものがもっとすっきりしない限り政権担当者となる事は危険である。
 もっと勉強したり物欲しげな連中をふるい落として、ぼたもちの落ちるのをゆっくりかまえて待たなければいけない。
    〇
 日本は発送電小坂総裁の36億の含み資産言明は大きな波紋を広げている。
 これと関連して配電会社にも50億以上の闇利益があるのではないかと日発側から放送されている。
 独占事業の勝手我がままは本誌の持論として攻撃し続けてきた点であり、特に石炭がないからとか、水力が少ないからとか昨年中まで需要家に使用制限や停電を強いた配電会社の態度に対して、文化新聞は電力は不足していないことを強調して、しつこい位に攻撃非難の矢を放って来続けたが、小坂声明で昨年度は異常放水でほとんど水力で賄われ、石炭は割り当てが使いきれぬことが暴露された。
 文化新聞の先見の明や誇るべきではあるまいか。
    〇
 政治でも経済でも見通しということはぜひ必要である。
わたくしは戦争中から現在になっても、日本の米の絶対量は不足していないことを主張していた。もちろんこれは数字とは関係なしの感から来た予想だが、これがだんだん当たってくるからごらんなさい。筆者は農業会や農林省の統計は絶対に信頼しない。
 友人の米屋が米の自由登録で気を病んでいるから「米屋なんか本当の自由販売になるか戦争中のような統制強化になるかの二択だから、何も三日天下の下の政府の米屋になることことにそんなに心配する必要ない」と苦言を呈してやったが、先の見えぬものはかわいそうである。
 これから世の中は相当の波乱必至、国民も大きな見通しに立ってまごつかぬ様にしたい。 


コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。



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